広告
広告
NASAが「月面基地」計画の最新進捗状況を発表 最初の無人ミッションや有人ローバーの契約が決定

NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年5月26日、持続可能な月面探査を目指す「月面基地(Moon Base)」計画に関して、有人月面探査車(ローバー)や無人月着陸船の新たな契約、および今後のミッションについての最新情報を発表しました。

NASAによると、アメリカが主導する有人月探査計画「Artemis(アルテミス)」で2028年に予定されている有人月面着陸に先立ち、月の南極周辺におけるインフラ構築と探査を目的とした初期ミッションのスケジュールや、参加企業を決定したということです。

NASAの記者会見で会場に設置された月着陸船と月面ローバーの模型。左から:Blue Originの「Blue Moon Mark 1」、Astrolabの「CLV-1」、Lunar Outpostの「Pegasus」、Firefly Aerospaceの「Elytra Dark」(Credit: NASA/Aubrey Gemignani)
【▲ NASAの記者会見で会場に設置された月着陸船と月面ローバーの模型。左から:Blue Originの「Blue Moon Mark 1」、Astrolabの「CLV-1」、Lunar Outpostの「Pegasus」、Firefly Aerospaceの「Elytra Dark」(Credit: NASA/Aubrey Gemignani)】

月面基地構築に向けた初期のミッション「Moon Base I〜III」

NASAは26日に開催された記者会見や同日付のプレスリリースを通じて、月面に持続的な活動の基盤を築くための最初の3つのミッションを発表しました。

一連のミッションは、早ければ2026年秋から年内にかけて順次打ち上げられる予定です。いずれもNASAのCLPS(商業月輸送サービス)を通じて実施され、民間企業の着陸船(ランダー)が活用されます。

Moon Base I

1回目のミッションではBlue Origin(ブルーオリジン)社の着陸船「Blue Moon Mark 1 "Endurance"(ブルームーン・マーク1 “エンデュランス”)」を使用し、月の南極にあるシャクルトン・コネクティング・リッジへNASAのペイロード(観測機器などの搭載物)を輸送します。このミッションでは、将来の有人着陸のリスクを軽減する技術実証が行われます。

Moon Base II

2回目のミッションではAstrobotic(アストロボティック)社の着陸船「Griffin(グリフィン)」を使用し、将来のローバー運用の技術実証を目的としたAstrolab(アストロラボ)社のローバー「FLIP」などを月面へ輸送します。

Moon Base III

3回目のミッションではIntuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)社の着陸船「Nova-C "Trinity"(ノバ-C “トリニティ”)」を使用し、月面の未解明の地形的特徴(Lunar swirls)の調査などを実施します。このミッションにはESA(ヨーロッパ宇宙機関)やKASI(韓国天文研究院)などの国際パートナーも参加します。

宇宙飛行士が乗る探査車「LTV」と月面ドローン「Moonfall」

また、宇宙飛行士が搭乗して月面を移動するためのローバー「LTV(月面地形探査車)」の開発・輸送に関して、Astrolabの「CLV-1」と、Lunar Outpost(ルナ・アウトポスト)社の「Pegasus(ペガサス)」が選定されたことも発表されました。

LTVはアポロ計画で使用された月面車と同様に与圧室を持たないローバーで、宇宙飛行士は宇宙服を着たままで走行します。記者会見に登壇した月面基地プログラムエグゼクティブのCarlos Garcia Guillen氏によると、これらのLTVは宇宙飛行士の操縦だけでなく、地球からの遠隔操作や自律走行も可能であり、これまで月や火星を走行したどの探査車よりも4倍以上長い、約200kmの走行能力を見込んでいるとのことです。

2028年に月面でミッションを行う予定の「Moonfall(ムーンフォール)」のCGイメージ(Credit: NASA)
【▲ 2028年に月面でミッションを行う予定の「Moonfall(ムーンフォール)」のCGイメージ(Credit: NASA)】

さらに、2026年3月に発表されていた「Moonfall(ムーンフォール)」と呼ばれるドローンミッションの詳細も明かされました。JPL(NASAジェット推進研究所)が担当するこのミッションでは、2028年に4機のドローンが月の南極へ送り込まれます。

NASAによると、これらのドローンは月面を跳躍(ホップ)しながら移動し、探査車では地形の都合で到達が困難な場所の高解像度画像を撮影するほか、2週間続く極寒の長い夜を生き延びる技術の実証も行います。なお、ドローンを運ぶ月着陸船を担当する企業として、Firefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)社が選定されています。

将来の火星探査も見据えた段階的なアプローチ

NASAの月面基地計画では、一気に大規模な居住施設を建設するのではなく、段階的なアプローチが採用されています。記者会見でNASAのJared Isaacman長官は、「極限環境である月面で何が機能し、何が機能しないかを学びながら反復的に進めていく」と述べており、インフラ構築の前に多くの着陸実証やデータ収集を重ねる方針を示しました。

NASAによれば、今回発表されたミッションは、将来のアルテミス計画における有人月面活動のリスクを軽減するための重要なステップとなります。月面での持続的な滞在能力やインフラの構築は、科学的な恩恵や新たな宇宙経済の創出をもたらすだけでなく、人類が次に目指す火星探査に向けた不可欠な技術を習得するための、壮大な実験場になることが期待されています。

 

NASAが月の南極付近で建設を構想している月面基地のコンセプト(Credit: NASA)
【▲ NASAが月の南極付近で建設を構想している月面基地のコンセプト(Credit: NASA)】

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

関連記事

参考文献・出典