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ispace、軟着陸に失敗した月着陸機「レジリエンス」に関する報告会を開催

日本の株式会社ispaceは2025年6月24日、同社の月面探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション2「SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON」について、月着陸機「RESILIENCE(レジリエンス)」の月面着陸が失敗に終わった技術的な要因の分析結果に関する報告会を開催しました。

RESILIENCEによる月の北半球にある「寒さの海(Mare Frigoris)」の中央付近へのソフトランディング(軟着陸)は日本時間2025年6月6日未明に試みられましたが、高度約100kmの月周回軌道を離れて降下に移った後、着陸目前で通信が途絶。ispaceは同日中にミッションの終了を発表しており、RESILIENCEは月面にハードランディング(硬着陸)したとみられています。

2025年6月20日にはNASA=アメリカ航空宇宙局が、月周回衛星「LRO(Lunar Reconnaissance Orbiter、ルナー・リコネサンス・オービター)」に搭載されている光学観測装置「LROC」の狭角カメラを使って観測された画像を公開。RESILIENCEの月面への衝突によって生じたとみられる、幅約16mの地形変化が捉えられていました。

ispaceの月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2の月着陸機「RESILIENCE(レジリエンス)」(Credit: ispace)
【▲ ispaceの月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2の月着陸機「RESILIENCE(レジリエンス)」(Credit: ispace)】
NASAの月周回衛星LROが観測した、ispaceの月着陸機RESILIENCEの衝突地点(矢印)(Credit: NASA/GSFC/Arizona State University)
【▲ NASAの月周回衛星LROが観測した、ispaceの月着陸機RESILIENCEの衝突地点(矢印)(Credit: NASA/GSFC/Arizona State University)】

レーザーレンジファインダーのハードウェア異常が原因か

24日の報告会では、月面までの距離を測定するレーザーレンジファインダー(LRF)による有効な計測値の取得開始が遅れたことが、RESILIENCEの着陸失敗の原因に挙げられました。

LRFによる測距は本来であれば高度3kmに達するまでに開始されるべきだったものの、実際には高度約1kmまで有効な計測が始まらず、結果として降下速度の減速が間に合わなかったということです。

RESILIENCEは高度650mまで降下した日本時間4時15分16秒の時点で急減速を開始したものの、この高度における想定上の垂直方向の速度は毎秒44mであったのに対し、実際には1.5倍の毎秒66m(飛行データから)で機体は降下していました。その10秒後、高度192m・秒速42mの時点でテレメトリ信号が消失しました。

ispaceが配布した資料によれば、高度3km付近から速度の想定値と実際の値の乖離が始まっていることに加えて、高度1500m付近からは高度でも想定値と実際の値が乖離し始めていました。急減速が始まった時点における高度の想定値は1200m付近であり、実際の高度はその半分に近かったことになります。レーザーレンジファインダーの測定値が期待通りに得られなかったことで、急減速を開始した時点では速度と高度の両方が想定値から大きく乖離しており、十分に減速できないまま月面に衝突するに至ったことがわかります。

RESILIENCEの高度(飛行データから)と想定値の推移を示した図。ispaceの配布資料から引用(Credit: ispace)
【▲ RESILIENCEの高度(飛行データから)と想定値の推移を示した図。ispaceの配布資料から引用(Credit: ispace)】
RESILIENCEの高度および速度(飛行データから)と想定値の推移を示した図。ispaceの配布資料から引用(Credit: ispace)
【▲ RESILIENCEの高度および速度(飛行データから)と想定値の推移を示した図。ispaceの配布資料から引用(Credit: ispace)】

測距が予定の高度までに行われなかった要因としては、ソフトウェア上の問題ではなく、ハードウェアの異常だった可能性が挙げられています。レゴリス(月の土壌)の想定外の特性や、レーザーの入射角が浅かったことで月面からの反射が低かった可能性、速度が速すぎて有効な測定ができなかった可能性、宇宙環境による影響が生じた可能性が考えられるといい、今後のミッションに備えた着陸センサー(レーザーレンジファインダーを含む)の検証計画の見直しや選定・運用の見直しなどを行う方針だということです。

また、レーザーレンジファインダーの計測値が使えなかったとしても、想定よりも速く降下していることは予想できたのではないかというメディアの質問に対して、ispaceの日達佳嗣氏は、推定される高度が低い(=実際の高度が想定値よりも高い)場合に備えて、計測ができなかった場合は一定の速度で降下し続ける設計だったと回答しました。

この挙動は、2023年4月に軟着陸に失敗したHAKUTO-Rミッション1の教訓を踏まえています。ミッション1ではソフトウェアの問題により、高度約5kmで機体がホバリング状態を続けてしまい、推進剤が尽きたことで月面に落下・衝突しました。RESILIENCEでは高度3kmまでにレーザーレンジファインダーの計測値が得られることを前提に、秒速50~60mで降下するよう設定されていたといいますが、実際には高度約1kmまで有効な計測が行われず、結果として減速が間に合わず月面に衝突することになりました。

そのうえで日達氏は、レーザーレンジファインダーの測距開始前は慣性計測装置(IMU)による推定値を用いていたものの、累積誤差が拡大していくという特徴があるため、慣性計測装置の値だけを信頼するリスクは避ける設計になっていたとも回答しています。

 

文・編集/sorae編集部

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参考文献・出典