NASAの火星探査車「Perseverance」が2022年4月2日に撮影したフォボスによる日食(太陽面通過)の様子(動画より)(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS/SSI)

【▲ NASAの火星探査車「Perseverance」が2022年4月2日に撮影したフォボスによる日食(太陽面通過)の様子(動画より)(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS/SSI)】

まずは以下の動画をご覧下さい。これはアメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「Perseverance(パーセベランス、パーシビアランス)」2022年4月2日火星で撮影した「日食」の様子です。

動画を再生すると、太陽の右上からジャガイモのようないびつな形をした黒い影が現れます。この影は2つある火星の衛星のうち大きいほうの「フォボス」(平均直径22km)で、約40秒かけて太陽を横切っていきます。

【▲ NASAの火星探査車「Perseverance」が2022年4月2日に撮影したフォボスによる日食(太陽面通過)の様子】
(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS/SSI)

地球の表面から見た月と太陽は、見かけの直径がほぼ同じです。そのため、地球から月までの距離に応じて太陽の全体が月に隠される皆既日食や、太陽が月からはみ出て見える金環日食が起こります。いっぽう、火星の表面から見たフォボスの見かけの大きさは太陽よりも小さいため、このように衛星が太陽の一部を隠しながら通過する様子(太陽面通過、日面経過)が観測されるのです。

この動画は、Perseveranceのマスト(“頭”とも表現される)に搭載されているズーム対応カメラ「Mastcam-Z」を使って撮影されました。Perseveranceを運用するNASAのジェット推進研究所(JPL)によると、Mastcam-Zにはサングラスのように機能するフィルターが備わっており、動画の撮影にはこのフィルターが使用されています。

火星探査車「キュリオシティ」が2019年3月に撮影したフォボスによる日食のタイムラプス(10倍速)(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

【▲ 火星探査車「キュリオシティ」が2019年3月に撮影したフォボスによる日食のタイムラプス(10倍速)(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

アメリカの火星探査車が火星の日食を撮影したのは今回が初めてではありません。たとえば2019年4月には「キュリオシティ」が撮影したフォボスとダイモスによる日食のタイムラプス動画が公開されています。

しかし、Mastcam-Zを搭載したPerseveranceは、これまでで最もズームインされた、最もフレームレートの高い“火星の日食”の動画を撮影することができたといいます。

Perseveranceに搭載されている「Mastcam-Z」の位置を示した図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

【▲ Perseveranceに搭載されている「Mastcam-Z」の位置を示した図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

米国コロラド州のボルダーにある宇宙科学研究所(Space Science Institute)のMark Lemmonさんは「フォボスの尾根や凹凸のような細部を影の形として見ることができます」「この日食を火星のローバーが見たのと全く同じように見ることができるのは素晴らしいことです」と語っています。Lemmonさんは火星探査車によるフォボスの観測を調整してきた人物です。

なお、NASAのビル・ネルソン長官は2022年3月、火星有人探査について「人類が2040年までに火星を歩けるようにするのが我々の計画だ」と発言しています。あと四半世紀もすれば、人類がフォボスによる日食を火星で目にする日がやってくるかもしれません。

NASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」が撮影した衛星フォボス(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)

【▲ NASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」が撮影した衛星フォボス(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)】

 

関連:火星の衛星フォボスとダイモスは1つの原始月が破壊されてできた?

Source

  • Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS/SSI
  • NASA/JPL - NASA's Perseverance Rover Captures Video of Solar Eclipse on Mars

文/松村武宏