今回のシミュレーションを使った研究で火星の衛星フォボスとダイモスは同じ1つの原始月に他の天体が衝突してつくられた可能性があることが示された(Credit: Grafik: Mark Garlick / markgarlick.com)

【▲ 今回のシミュレーションを使った研究で火星の衛星フォボスとダイモスは同じ1つの原始月に他の天体が衝突してつくられた可能性があることが示された(Credit: Grafik: Mark Garlick / markgarlick.com)】

スイスのチューリッヒ大学は2月22日、ETHチューリッヒ地球物理学研究所のアミロシン・バゲリさん率いる研究チームが、火星の衛星フォボスとダイモスは元々同じ1つの原始月であった可能性があることを突き止めたと発表しました。研究チームでは、フォボスとダイモスは、この原始月に他の天体が衝突し、破壊されてつくられたのではないかと考えています。

火星の衛星フォボスとダイモスはとても小さな天体です。フォボスの大きさは22km、ダイモスにいたっては12kmほどしかありません。

このようなフォボスとダイモスは、これまで、そのいびつな形や化学的な組成から、小惑星が火星の重力によって捕えられたものだと考えられてきました。

しかし、フォボスもダイモスも火星の赤道面上をほぼ真円の軌道を描いて公転しています。もし、フォボスやダイモスが、偶然に、火星の重力に捕えられたのならば、これは不自然です。軌道は楕円になり、赤道面に対する角度もそれぞれランダムになる可能性が高いです。

そこで、研究チームはフォボスとダイモスの起源を探るためにシミュレーションによってフォボスとダイモスの軌道を過去に向かって遡りました。

このとき研究チームが注目したのが潮汐散逸です。

天体と天体は、互いに重力的な影響を及ぼし合い、それぞれ相手を変形させます。これを潮汐といいます。そして、この潮汐によって、それぞれの天体の持つ運動エネルギーが他のエネルギーに変換され、散逸(dissipation)することで、軌道に影響がでます。

どの程度の散逸がおこるかは、天体の大きさ天体の内部の状態天体間の距離などによって決まります。

研究チームは、NASAの火星探査機インサイトや他の火星探査機のデータを使って、火星、フォボス、ダイモスの内部の状態を詳しく調べ、より洗練されたモデルを使って、シミュレーションを繰り返しました。

そして、10~27億年前( between 1 and 2.7 billion years ago)に、フォボスとダイモスの軌道が交差することを突き止めました。つまりこの時点でフォボスとダイモスは同じ1つの原始月だったと考えられます。

研究チームでは、10~27億年前に、火星を回っていたこの原始月に、他の天体が衝突し、破壊されて、フォボスとダイモスがつくられたのではないかと考えています。

現在、JAXAは、火星の衛星からのサンプルリターン計画(2024年に打ち上げ予定)を進めています。研究チームでは、火星の衛星から持ち帰られたサンプルの分析によって、火星の衛星の内部の状態がより詳細にわかれば、より正確な軌道の計算が可能になるのではないかと期待しています。

 

関連:火星の過去と未来の環。衛星は崩壊と再生を繰り返している?

Image Credit: Grafik: Mark Garlick / markgarlick.com
Source:チューリッヒ大学プレスリリース論文
文/飯銅重幸

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