
(引用元:NASA)
古代から、金星はその輝きと美しさのために、世界中で愛や美を象徴する女神と結びつけられてきました。たとえば英語名の「Venus(ヴィーナス)」は、ローマ神話の愛と美の女神ヴィーナスに由来するものです。
実は、金星の地形にも多くの女神の名が冠されているのをご存じでしょうか?今回は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が公開している金星の映像をもとに、神話に登場する女神の名前が付けられた地形をいくつかご紹介します。
こちらの動画は、NASAの金星探査機「マゼラン(Magellan)」が1990年から4年間にわたって取得したレーダー観測データをもとに作成されました。金星は厚い大気に覆われているため、可視光では地表を観測しづらいのですが、レーダーを用いることで地形を可視化できます。動画の途中の映像は、地表の標高を色で表しており、赤いほど標高が高く、青いほど低いことを示しています。
ダイアナ谷(Diana Chasma)
最初に登場するのは「ダイアナ谷」です。ダイアナはローマ神話の狩猟と月の女神で、ギリシャ神話のアルテミスと同一視されます。ダイアナ谷は金星の赤道付近に広がる谷で、レーダー画像によって深い谷のようすが詳細に捉えられています。
アフロディーテ大陸(Aphrodite Terra)
続いて登場する「アフロディーテ大陸」は、金星最大の大陸で、その広さはアフリカ大陸に匹敵するともいわれています。名前はギリシャ神話の愛と美の女神アフロディーテにちなんでおり、ローマ神話のヴィーナスと同一視される存在です。この大陸には多数の峡谷や山脈があり、レーダーによって、その地形の複雑さが明らかになりました。
イシュタル大陸(Ishtar Terra)
北方に位置するのが「イシュタル大陸」。これは金星で2番目に大きな大陸で、最高峰である「マクスウェル山(Maxwell Montes)」(※)がそびえ立っています。イシュタルは、古代メソポタミア神話の愛と戦いの女神です。
※マクスウェル山は、電磁気学で有名な物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェル(James Clerk Maxwell)にちなんだ名前で、金星の主要な地名としては珍しく男性名に由来しています。
ベータ地域(Beta Regio)
「ベータ地域」は女神名由来ではありませんが、火山活動によって隆起した特徴的な地形です。「ベータ(β)」という呼び名は、地球からレーダー観測された際の初期の呼称がそのまま使われているといわれています。
マアト山(Maat Mons)
最後に登場する「マアト山」は、金星でもっとも高い火山として知られています。名前の由来は、古代エジプト神話に登場する真理と秩序の女神マアトです。
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編集/sorae編集部