太陽系の8つの惑星が自転する様子をCGで再現した動画を作成したのは、現在JAXA(宇宙航空研究開発機構)に所属する惑星科学者のJames O'Donoghue(ジェームズ・オドノヒュー)氏です。
宇宙に関する写真や動画をNASAが毎日1点ずつ紹介しているウェブサイト「Astronomy Picture of the Day(APOD)」に2019年5月20日付で掲載されたもので、APODおよびオドノヒュー氏のYouTubeチャンネルにて公開されています。
おなじみの太陽系惑星は、上段左から「水星(Mercury)」「金星(Venus)」「地球(Earth)」「火星(Mars)」、下段左から「木星(Jupiter)」「土星(Saturn)」「天王星(Uranus)」「海王星(Neptune)」の順に並んでいます。サイズはすべて同じ大きさになるよう調整されていて、自転の速度は地球の1日が数秒になるところまで加速されています。
動画を見ると、それぞれが個性的な太陽系の惑星は、自転にも特徴を持っていることがわかります。上段に並ぶ岩石が主体の惑星は24時間前後から200日以上と遅い周期で自転していますが、下段に並ぶガスが主体の惑星は10~17時間程度と速い周期で自転しています。一番遅い金星はほとんど止まっているように見えますが、一番速い木星の自転をじっと見ていると目が回りそうです。
また、水星の自転軸(地軸)の傾きは0度なのに、天王星は横倒しの97.8度で自転しています。天王星の公転周期(太陽を1周するのにかかる期間)はおよそ84年なので、天王星の北極と南極では昼と夜がそれぞれ42年間ずつ続くことになります。
火星の直径は地球の半分ほどしかありませんが、自転速度と自転軸の傾きはほとんど変わりません(地球の1日は23時間56分、傾きは23.4度。火星の1日は24時間36分、傾きは25.2度)。火星の昼夜のリズムは地球にかなり近く、自転軸が傾いているので季節も存在しています。
ところが、地球とほとんど同じサイズで双子の惑星と呼ばれたりもする金星は、自転軸が傾いている……というよりも、ひっくり返って177.3度に達しています。そのため、自転の方向も他の惑星たちとは逆向きです。
太陽系の惑星の自転軸は誕生当初から傾いていたのではなく、回転するガスや塵の円盤から誕生して以来、現在までのどこかの時点で何らかの理由によって傾いたと考えられています。そのはっきりとした理由は解明されていませんが、有力な説の一つが惑星サイズの天体どうしの衝突です。バットでボールを打ったとき、中心からずれた場所に当たるとボールが回転するように、巨大な衝突がもたらしたエネルギーによって自転軸が傾いたのではないかというのです。
つまり、自転軸の傾きが大きな6つの太陽系の惑星は、かつて巨大な衝突を経験した可能性があるということ。今後そのような出来事が起こる可能性はほぼありませんが、平穏そうに見える今の惑星の姿には、かつて繰り広げられた荒々しい衝突の物語が秘められているのかもしれません。
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Source
- Image credit: NASA, Animation: James O'Donoghue (JAXA)
- APOD - Planets of the Solar System: Tilts and Spins
文/松村武宏