■今日の天体画像:The Dance of Venus and Earth(金星と地球のダンス)
2020年6月4日、金星が太陽の手前側で同じ方向に見える内合を迎えました。この日までの金星は太陽よりも遅く昇る「宵の明星」ですが、この日から外合(※)までは太陽よりも早く昇る「明けの明星」となります。
※…金星が太陽の向こう側で同じ方向に見えるタイミング。次に迎えるのは2021年3月26日
内合のとき、地球からは金星の夜の側だけが見えることになります。そのうえ金星は分厚い雲に覆われているため、地表の様子を直接見ることはできません。ですが、もしも内合のときに金星の地表を直に見ることができたなら、毎回同じ場所だけが見えていることに気がつくはずです。
こちらは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に所属する惑星科学者James O’Donoghue(ジェームズ・オドノヒュー)氏による解説動画。2010年1月から2023年9月までの金星(黄色)と地球(青色)の位置関係が示されています。動画を進めていくと、金星が地球に一番近づくタイミング(内合)を迎えるときに、金星の一部分から伸びた仮想の「腕」が毎回必ず地球の方を向いていることがわかります。
金星の自転周期は地球の約243日に相当しますが、太陽を基準とした金星の「1日」(太陽日)は約116.8日です。地球から見ると金星は約584日ごとに内合を迎えますが、これは太陽を基準とした金星の「5日間」とほぼ同じ期間です。そのため、金星は内合の度にいつも同じ場所を地球に向けることになるわけです。
これは地上の電波望遠鏡による金星表面のレーダー観測が始まったおよそ50年前から知られていますが、はっきりした理由はわかっていないといいます。動画を作成したオドノヒュー氏は、地球の重力によるわずかな影響がもたらした共鳴現象の可能性に言及しています。この動画はNASAとミシガン工科大学によるAstronomy Picture of the Dayでも「The Dance of Venus and Earth」(金星と地球のダンス)として2020年6月3日付でピックアップされています。
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Image Credit: James O'Donoghue (JAXA); Data: NASA, HORIZONS; h/t: Josef Chlachula
Source: APOD
文/松村武宏