広告
広告

マックス・プランク天文学研究所(MPIA)のMyriam Benisty氏を筆頭とする研究チームは、若い星を取り巻く円盤の中で成長している惑星が、周囲のガスの動きを乱している痕跡を捉えたとする研究成果を発表しました。

研究チームによると、こうした痕跡が直接撮像された太陽系外惑星で確認されたのは今回が初めてだといいます。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されています。

原始惑星系円盤の中を公転する2つの惑星

わし座の方向、約430光年先にある若い星「WISPIT 2」は、ガスと塵(ダスト)でできた原始惑星系円盤に囲まれています。

この円盤の中では、「WISPIT 2b」と「WISPIT 2c」という2つの太陽系外惑星がこれまでに見つかっています。主星であるWISPIT 2からの距離と推定質量は、WISPIT 2bが約57天文単位(※)・木星の約4.9倍、WISPIT 2cが約15天文単位・木星の約8~12倍です。

※…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来。

WISPIT 2bとWISPIT 2cは、どちらもその姿が直接撮像されています。形成途中の惑星(原始惑星)が円盤内で直接撮像され、惑星であることが確認された例は、「PDS 70」に次いでWISPIT 2が2例目となります。

超大型望遠鏡VLTの分光偏光観測装置「SPHERE」で直接観測された太陽系外惑星「WISPIT 2b」と「WISPIT 2c」を示した図(Credit: ESO/C. Lawlor, R. F. van Capelleveen et al.)
【▲ 超大型望遠鏡VLTの分光偏光観測装置「SPHERE」で直接観測された太陽系外惑星「WISPIT 2b」と「WISPIT 2c」を示した図(Credit: ESO/C. Lawlor, R. F. van Capelleveen et al.)】

惑星の位置に現れたガスの乱れ

2つの惑星のうちWISPIT 2bについては、周囲からガスを取り込んで成長している最中であることが先行研究で示されていました。そこで今回、研究チームはチリの電波望遠鏡群「アルマ望遠鏡(ALMA)」で観測を行い、一酸化炭素分子が放つ電波を通じて円盤のガスの分布と動きを調べました。

円盤のガスは主星の周りを規則正しく回転していますが、惑星が存在する場合は重力の影響でガスの動きが局所的に乱れると考えられています。研究チームが観測データを分析したところ、WISPIT 2bが観測されている位置でガスが乱れていることを示す特徴を検出しました。この特徴は、円盤と惑星の相互作用を再現したシミュレーションの予測とも一致するといいます。

さらに、WISPIT 2bの周囲では、一酸化炭素の放つ電波が局所的に強まっている領域も見つかりました。研究チームによると、この強い放射は主に惑星が引き起こす渦巻き状の波によるものとみられており、惑星による局所的な加熱や、惑星を取り巻く小さな円盤(周惑星円盤)も関わっている可能性が高いといいます。

左はアルマ望遠鏡で観測したWISPIT 2の原始惑星系円盤の様子。右はその一部を拡大したもので、青は観測者(地球)に向かって動くガス、赤は観測者から遠ざかるように動くガス、白丸と点線はWISPIT 2bおよびWISPIT 2cの位置と軌道を示している(Credit: M. Benisty, MPIA / ALMA)
【▲ 左はアルマ望遠鏡で観測したWISPIT 2の原始惑星系円盤の様子。右はその一部を拡大したもので、青は観測者(地球)に向かって動くガス、赤は観測者から遠ざかるように動くガス、白丸と点線はWISPIT 2bおよびWISPIT 2cの位置と軌道を示している(Credit: M. Benisty, MPIA / ALMA)】

原始惑星系円盤から惑星の存在を読み解く手がかりに

MPIAによると、惑星が直接観測されていない原始惑星系円盤でもガスの乱れは見つかっていましたが、それが惑星によるものなのか、円盤内の乱流などによるものなのかは意見が分かれています。

今回の研究の共著者であり、ALMAでの観測を提案したミラノ大学のStefano Facchini氏は、「このような観測を通じて、原始惑星の存在を示す円盤の特徴と、そうでない特徴を見分けられるようになってほしいと思います」と述べています。

惑星と円盤のガスの乱れをそろって観測できるWISPIT 2は、原始惑星系円盤の奥で成長しつつある原始惑星を探すための貴重な基準となりそうです。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

関連記事

参考文献・出典