
こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した若い星「おうし座FS星(FS Tau)」です。おうし座の方向、地球から約450光年先にあります。

この画像は、ウェッブ宇宙望遠鏡の「NIRCam(近赤外線カメラ)」で取得したデータを使って作成されており、色は観測時に使用されたフィルターに応じて擬似的に着色されています。
漆黒の宇宙空間に、ひときわ明るく輝く星から伸びる鋭い光の筋(※)が目を引きます。その周囲には、赤やオレンジ色で着色されたガスの広がりや、水色の帯のような構造が複雑に入り混じり、背景には色とりどりの無数の銀河が散りばめられています。
※…望遠鏡の構造で光が回折することで生じる「回折スパイク」と呼ばれるもの。ウェッブ宇宙望遠鏡の場合、主鏡を構成する六角形のミラーセグメントと副鏡を支える梁によって、8本の複雑な光の筋が現れる。
誕生からわずか数百万年の赤ちゃん星たち
NASA(アメリカ航空宇宙局)によると、おうし座FS星を構成するのは、誕生からまだ100万~300万年しか経っていない原始星です。太陽の年齢が約46億年ですから、宇宙のスケールではつい最近生まれたばかりの星々と言えます。
画像の中央やや左で最も明るく輝いているのは、原始星のペア「おうし座FS星A(FS Tau A)」です。NASAによると、その質量は太陽の約半分ほどと推定されています。一方、おうし座FS星Aの右やや上に位置するのは、原始星の「おうし座FS星B(FS Tau B)」です。
おうし座FS星Bは現在、周囲のガスや塵(ちり)を自身の重力で引き寄せて成長しています。NASAによれば、星に向かって落下する物質で形成された円盤構造が、星の手前を斜めに横切る暗い帯状のシルエットとして捉えられています。
星の成長の証である巨大なアウトフロー
星が物質を取り込む過程では、一部の物質が両極方向へ激しく噴出するアウトフロー(ガスの流れ)が生じます。画像に見られる赤色やオレンジ色はおうし座FS星Bからアウトフローとして流れ出たとみられるガスで、赤色は水素分子を、オレンジ色はPAH(多環芳香族炭化水素)と呼ばれる煤(すす)のような分子を示しています。
また、水色はこのアウトフローが周囲の物質と衝突して圧縮された領域で、星の光を反射して明るく輝いています。このように、若い星から流れ出たガスが周囲の星間物質と衝突して輝く構造は「ハービッグ・ハロー(Herbig-Haro)天体」と呼ばれており、おうし座FS星Bが作り出したこの複雑な構造も、そのひとつに分類されています。
さらに、ウェッブ宇宙望遠鏡による今回の観測では、放出されたアウトフローの間にある隙間が新たに発見されました。これは、原始星が常に一定のペースで成長しているのではなく、間欠的(断続的)に物質を取り込んでは激しくアウトフローを噴出する期間と、比較的静かな期間を繰り返している証拠だと考えられています。
赤外線で覗き見る塵のベールと背景の銀河
おうし座FS星があるこの領域はハッブル(Hubble)宇宙望遠鏡も観測しましたが、ガスと塵の厚い雲に覆われているため可視光線では内部の様子を詳しく見ることができませんでした。ウェッブ宇宙望遠鏡は塵を見通せる赤外線での観測に特化しており、原始星の活動や周囲の環境を鮮明に捉えることができました。

また、背景にたくさん見えている銀河の色の違いも、手前にある塵の量と関係があります。塵が多い領域の向こう側にある銀河ほど赤く見えていて、塵が少ない領域の向こう側にある銀河は黄色や白っぽく見えています。
低質量の星がどのように成長し、周囲の環境に影響を与えていくのかを知る上で、おうし座FS星は非常に重要な観測対象になっているということです。
冒頭の画像はNASAやESA(ヨーロッパ宇宙機関)のESA/Webbなどから2026年7月2日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- NASA - NASA’s Webb Reveals Stars Sparking to Life in Cosmic Celebration
- ESA/Webb - FS Tau (Webb NIRCam image)

























