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綿菓子のようにフワフワな巨大惑星を恒星「TOI-791」の周囲で2つ確認 約1100光年先

オックスフォード大学のGeorgina Dransfield氏を筆頭とする研究チームは、とびうお座の方向、地球から約1113光年離れた恒星「TOI-791」を周回する、極端に密度の低い2つの巨大な太陽系外惑星に関する研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文はイギリスの「王立天文学会月報(MNRAS)」に掲載されています。

恒星「TOI-791」を公転する2つの太陽系外惑星「TOI-791 b」と「TOI-791 c」のイメージ図(Credit: NASA / Daniel Rutter)
【▲ 恒星「TOI-791」を公転する2つの太陽系外惑星「TOI-791 b」と「TOI-791 c」のイメージ図(Credit: NASA / Daniel Rutter)】

木星サイズなのに質量は大幅に軽い 謎多き「スーパーパフ」

今回報告されたのは、「TOI-791 b」および「TOI-791 c」と呼ばれる2つの太陽系外惑星です。それぞれのサイズ、質量、密度は以下の通りです。

・TOI-791 b:半径は木星の約0.993倍、質量は木星の約3.0%(地球の約9.5倍)、平均密度は約0.038g/立方cm、公転周期は約139日。

・TOI-791 c:半径は木星の約1.155倍、質量は木星の約5.9%(地球の約18.6倍)、平均密度は約0.047g/立方cm、公転周期は約232日。

NASA(アメリカ航空宇宙局)によれば、2つの惑星は木星と同程度のサイズがあるにもかかわらず、質量は木星の数%しかなく、平均密度が極端に低いという特徴があります。こうした惑星はその低密度ぶりが綿菓子に例えられることから、「スーパーパフ」(Super-puff、極端にフワフワした)とも呼ばれています。

また、公転周期が20日から300日程度の巨大惑星は「ウォームジュピター」とも呼ばれます。

研究チームによると、同じ惑星系で複数の巨大惑星のトランジット(後述)が観測された例はめずらしく、TOI-791が9例目になるということです。

太陽系外惑星「TOI-791 b」と「TOI-791 c」の想像図(上段)と、太陽系の惑星(下段)とサイズを比較した図(Credit: NASA / Daniel Rutter)
【▲ 太陽系外惑星「TOI-791 b」と「TOI-791 c」の想像図(上段)と、太陽系の惑星(下段)とサイズを比較した図(Credit: NASA / Daniel Rutter)】

トランジットのタイミング変化から「フワフワ」な低密度が明らかに

TOI-791 bとTOI-791 cは、どちらもNASAの系外惑星探査衛星「TESS(テス)」によるトランジット法(後述)を用いた観測データから発見されました。TESSは7年間の観測期間のうち、TOI-791 bについては1122日分のデータを収集していました。

また、研究チームは南極のコンコルディア基地にあるASTEP(Antarctic Search for Transiting ExoPlanets)望遠鏡など地上の観測施設を利用して、11時間超にわたるトランジット全体の観測に成功しています。

研究チームによると、TOI-791 bとTOI-791 cは互いの公転周期の比が整数比に近くなる平均運動共鳴の状態にあります(この場合は5:3)。2つの惑星が互いの重力で引き合うことで、トランジットのタイミングが変化し、TOI-791 bで最大約50分、TOI-791 cで35分以上のズレが生じていました。トランジットタイミング変動(TTV)と呼ばれるこの変化を詳細に分析することで、研究チームは惑星のより正確な質量を算出し、その低密度ぶりを明らかにすることができました。

惑星形成の謎を解く鍵となるか

今回報告されたTOI-791 bとTOI-791 cは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)が計画中の「アリエル(Ariel)」宇宙望遠鏡による大気観測の良い対象になると期待されています。

論文の共著者であるNASAエイムズ研究センターのJon Jenkins氏は、「これらの惑星は、木星のような巨大惑星やスーパーパフがどのように形成されるのかについて、私たちが解明すべき難問を提示しています」と述べています。

スーパーパフのように極端に低密度の惑星はどのようにして形成され、現在の軌道へと移動してきたのか。今後のさらなる観測によって、惑星系の形成や進化に関する新たな知見が得られることに期待が寄せられています。

参考:太陽系外惑星の観測方法について

太陽系外惑星の観測では「視線速度法(ドップラーシフト法)」および「トランジット法」という2つの手法が主に用いられています。

「視線速度法」とは、太陽系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きをもとに、惑星を間接的に検出する手法です。

惑星の公転にともなって主星が揺れ動くと、光の色は主星が地球に近付くように動く時は青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽくといったように、ドップラー効果によって周期的に変化します。こうした主星の色の変化は、天体のスペクトル(電磁波の波長ごとの強さの分布)を得る分光観測を行うことで検出されています。

視線速度法の観測データからは、太陽系外惑星の公転周期や最小質量を求めることができます。

【▲ 参考動画:太陽系外惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子(Credit: ESO/L. Calçada)】

もう一つの「トランジット法」とは、太陽系外惑星が主星の手前を横切る「トランジット(transit)」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、太陽系外惑星を間接的に検出する手法です。

繰り返し起きるトランジットを観測することで、その周期から惑星の公転周期を知ることができます。トランジット時の主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能です。

近年では、トランジットの周期に生じるわずかな変動をもとに、重力を介して相互作用する別の惑星を捜索する手法「トランジットタイミング変動法(TTV法)」も用いられるようになっています。

【▲ 参考動画:太陽系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子(Credit: ESO/L. Calçada)】

また、太陽系外惑星がトランジットを起こしている時の主星の光には、惑星の大気(存在する場合)を通過してきた光もわずかに含まれています。

惑星の大気を通過してから届いた主星のスペクトルは「透過スペクトル」と呼ばれていて、惑星の大気に含まれる物質が特定の波長の電磁波を吸収したことで生じる暗い線「吸収線」が現れます。透過スペクトルを通常のスペクトルと比較すればどのような吸収線が現れているのかがわかるので、惑星の大気組成を調べることができます。

参考画像:恒星(左)の光を利用して太陽系外惑星(中央下)の大気組成を調べる手法のイメージ図。太陽系外惑星の大気を構成する物質が一部の波長を吸収するため、大気を通過して地球(右)に届いた主星の光のスペクトル(透過スペクトル)を分析することで、惑星の大気組成を調べることができる。また、大気にヘイズ(もや)がある場合は青い光が散乱して、通過した光は少し赤くなる(Credit: ESO/M. Kornmesser)
【▲ 参考画像:恒星(左)の光を利用して太陽系外惑星(中央下)の大気組成を調べる手法のイメージ図。太陽系外惑星の大気を構成する物質が一部の波長を吸収するため、大気を通過して地球(右)に届いた主星の光のスペクトル(透過スペクトル)を分析することで、惑星の大気組成を調べることができる。また、大気にヘイズ(もや)がある場合は青い光が散乱して、通過した光は少し赤くなる(Credit: ESO/M. Kornmesser)】

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典