
オランダ・ライデン大学のKarin Cescon氏を筆頭とする国際的な研究チームは、ビッグバンから約7億年後の初期宇宙に存在していた銀河「REBELS-25」において、星の材料となる冷たい分子ガスが大量に蓄積されていた様子の直接検出に成功したとする研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は、学術誌「王立天文学会月報(MNRAS)」に掲載されています。
常識をくつがえした131億年前の「回転円盤銀河」
「REBELS-25」は、今から約131億年前(赤方偏移z=7.31)、宇宙の再電離(※)が進行していたとみられる時代に存在した銀河です。
※…ビッグバン直後に電離していた水素やヘリウムの原子核が電子と結合した後、宇宙初期の星から放射された紫外線によって中性水素が再び電離するようになった出来事。ビッグバンの2億~4億年後から10億年後頃までに完了したと考えられている。

2024年10月には、この銀河が現在の天の川銀河のように整った構造を持つ「回転円盤銀河」であることが判明したとする研究成果を、ライデン大学のLucie Rowland氏を筆頭とする研究チームが発表しています。それまで、初期宇宙の若い銀河は衝突や合体を繰り返すことで小さく無秩序な形をしていると考えられていたため、REBELS-25の姿に天文学者は驚かされることになりました。
約138億年という宇宙の歴史において、誕生からわずか7億年程度の短期間で、なぜこれほど巨大で整った銀河に成長できたのか。その急成長の原動力となる星の材料がどうなっていたのかは、大きな謎として残されていたといいます。
背景放射に埋もれた「星の材料」を捉える
銀河が成長するためには、星の材料となる分子ガスが不可欠です。しかし、初期宇宙における分子ガスを直接観測することは、極めて困難でした。
最大の障壁は、宇宙誕生から間もない頃の電磁波であるCMB(宇宙マイクロ波背景放射)です。初期の宇宙では現在よりも温度が高く明るかったため、暗くて冷たい分子ガスの放射が、その背景からくるCMBの明るさに埋もれてしまうのです。
研究チームはこの困難を乗り越えるために、NRAO(アメリカ国立電波天文台)のVLA(Very Large Array=超大型干渉電波望遠鏡群)と、チリのALMA(アルマ望遠鏡)で取得した観測データを組み合わせて分析を行いました。
星の主な材料となるのは水素分子ですが、低温状態では電磁波を放射しないために直接観測が特に難しいことから、天文学では分子ガスの指標として一酸化炭素(CO)分子が放つ電波を観測します。研究チームによれば、VLAを用いたREBELS-25の観測の結果、低温のガスを示す放射(一酸化炭素分子の低エネルギー遷移にともなう放射)を捉えることに成功しました。これは、一酸化炭素分子からのこの種の放射の検出としては、観測史上最も遠い記録となります。
1000億太陽質量のガスが支える活発な星形成
研究チームがCMBの影響を慎重に考慮してモデルを構築し、分析した結果、REBELS-25には質量にして太陽の約1000億倍もの低温の分子ガスが貯蔵されていたことが明らかになりました。
NRAOはこの発見について、REBELS-25のような初期の巨大銀河が、激しい星形成活動を支えるのに十分な量となる星の材料をすでに貯えていたことを、直接的に証明するものだと述べています。

この成果を受けて、研究チームは今後のさらなる探査に期待を寄せています。2024年および今回発表の論文双方で共著者を務めたライデン大学のJacqueline Hodge教授によれば、今回のVLAによる検出は、現在計画が進められている「ngVLA(次世代大型電波干渉計)」で期待される成果を先取りするものだといいます。
今後、ngVLAやジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などによる観測が進むことで、初期宇宙に存在した銀河がどのように星の材料を集め、現在の私たちが知る宇宙の姿へと進化していったのか、その詳細な歴史が明らかになっていくかもしれません。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- NRAO - Cosmic Dawn Fuel Discovery Unlocks Early Galaxy Growth Secrets
- Cescon et al. - Direct detection of cool molecular gas in a star-forming galaxy at z=7.31 (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)






















