
NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年6月3日付で、次世代の宇宙望遠鏡「Nancy Grace Roman(ナンシー・グレース・ローマン)」の打ち上げをさらに前倒し、アメリカの現地時間2026年8月30日に設定したことを発表しました。

予定を8か月前倒して打ち上げへ
NASAによると、ローマン宇宙望遠鏡は当初2027年5月の打ち上げを目指していましたが、開発が順調に進んだことで打ち上げ予定が約8か月前倒しされ、音響や振動といった打ち上げ前の主要な環境試験も2026年3月までにクリアしています。
2026年4月22日には、ローマン宇宙望遠鏡の打ち上げ時期を同年9月上旬に前倒しすることが発表されていました。今回の発表では、その予定をさらに前倒ししたことが明らかにされています。
発表の時点では、ローマン宇宙望遠鏡をメリーランド州のゴダード宇宙飛行センターからフロリダ州のケネディ宇宙センターへ輸送するための梱包作業が進められています。ケネディ宇宙センター到着後は点検や推進剤の充填などを経て、アメリカ企業SpaceX(スペースX)の「Falcon Heavy(ファルコンヘビー)」ロケットによる打ち上げに向けた最終準備に入る予定です。
ダークエネルギーの解明や標準宇宙モデルの検証に挑む
ローマン宇宙望遠鏡の主な目標は、宇宙の加速膨張の要因とされる「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」や、質量比で通常の物質の5倍以上も存在するのに電磁波では観測できないとされる「ダークマター(暗黒物質)」の解明です。
NASAのシニアプロジェクトサイエンティストであるJulie McEnery氏によると、ローマン宇宙望遠鏡は現在の標準宇宙モデルに見られる矛盾を過去の10倍の精度で調査し、モデルの修正が必要かどうかを検証します。
また、ローマン宇宙望遠鏡は運用開始後、1日あたり約1.4テラバイトの圧縮データを地球へ送信する見込みです。5年間の主要ミッションで生成されるデータは最終的に約20ペタバイトに達するとされ、クラウド上のアーカイブを通じて世界中の研究者が利用できる環境が整えられています。
観測ペースはハッブル宇宙望遠鏡の1000倍

計画段階では「Wide Field Infrared Survey Telescope(広視野赤外線サーベイ望遠鏡)」の頭文字から「WFIRST」と呼ばれていたRoman宇宙望遠鏡の名前は、「ハッブル宇宙望遠鏡の母」と称されるNASAの初代主任天文学者Nancy Grace Roman氏にちなんで名付けられました。
主鏡の直径はハッブル宇宙望遠鏡と同じ2.4mですが、2つ搭載されている観測装置のひとつ「WFI(広視野観測装置)」は、その名の通り広視野を一度に捉えられることを特徴としています。
その広さはハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている「ACS(掃天観測用高性能カメラ)」の約100倍、「WFC3(広視野カメラ3)」の約200倍。観測ペースはハッブル宇宙望遠鏡の約1000倍に達する見込みです。

太陽系外惑星の直接観測にも挑戦
もうひとつの重要な観測装置は「CGI(コロナグラフ)」です。これは、明るい恒星の光を打ち消し、そのすぐ近くを公転する暗い太陽系外惑星を直接撮影するための技術実証として開発されました。単純に恒星を隠すのではなく、レンズやプリズム、鏡面をリアルタイムに変形できるデフォーマブルミラーなどを組み合わせた複雑な装置です。
【▲ ローマン宇宙望遠鏡に搭載されたコロナグラフの動作を解説した動画(英語)(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)】
NASA科学ミッション総局のNicola Fox副局長によれば、この高性能なコロナグラフの宇宙空間での実証は、太陽系外惑星で生命の兆候を探る将来のミッションに向けて計画が進められている大型宇宙望遠鏡「Habitable Worlds Observatory(ハビタブル・ワールド・オブザーバトリー、居住可能惑星観測所)」の実現に向けた、極めて重要なステップとなります。
数十億の銀河や数万の新たな太陽系外惑星を観測し、宇宙の謎へさらに迫ることができると期待されるローマン宇宙望遠鏡。その旅立ちが、いよいよ数か月後に迫っています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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