アメリカの民間宇宙企業SpaceX(スペースX)は2024年11月7日、同社が開発中の新型ロケット「Starship(スターシップ)」による無人での第6回飛行試験を早ければ日本時間2024年11月19日に実施すると発表しました。打ち上げ時間帯は日本時間7時0分~7時30分で、これまで通り発射の30分ほど前からライブ配信も予定されています。
Starshipとは?
Starshipは1段目の大型ロケット「Super Heavy(スーパーヘビー)」と2段目の大型宇宙船「Starship」からなる全長121mの再使用型ロケットで、打ち上げシステムとしてもStarshipの名称で呼ばれています。SpaceXはアメリカ・テキサス州ボカチカの同社施設「Starbase(スターベース)」を拠点にStarshipの開発を進めていて、これまでにSuper Heavyも含めたStarship打ち上げシステムの統合飛行試験(Integrated Flight Test: IFT)を2023年4月から2024年10月にかけて5回実施しています。
SpaceXによれば、両段を再使用する構成では100~150トンのペイロード(搭載物)を打ち上げ可能。2段目のStarship宇宙船は単体でも準軌道飛行(サブオービタル飛行)が可能で、地球上の2地点間を1時間以内に結べるとされています。
また、アメリカ航空宇宙局(NASA)は同局が推進する月探査計画「Artemis(アルテミス)」の月着陸船「HLS(Human Landing System、有人着陸システム)」としてStarshipを採用していて、同計画初の有人月面着陸を行う「Artemis III(アルテミス3)」ミッションで使用される予定です。
- スペースX、新型ロケット「スターシップ」第5回飛行試験実施 スーパーヘビーが初めて発射台に帰還(2024年10月15日)
- スペースX、新型ロケット「スターシップ」第4回飛行試験実施 宇宙船の軟着水に成功(2024年6月7日)
- スペースX、新型ロケット「スターシップ」第3回飛行試験実施 宇宙船は大気圏再突入の段階まで飛行(2024年3月15日)
Starship第6回飛行試験ではココに注目!
発射台へ帰還したSuper Heavyブースターのロボットアームによる空中キャッチと、Starship宇宙船の目標エリアへの軟着水に成功した第5回飛行試験に続く第6回飛行試験では、SpaceXは再使用の実現に向けてさらに前進することを目標に掲げています。
【▲ 動画:第5回飛行試験で発射台に帰還したSuper Heavyブースター(※音量に注意)】
(Credit: SpaceX)
Super Heavyブースターは今回も発射台への帰還を目指します。SpaceXによると、機体は前回のデータをもとにハードウェアが改良されており、推進システムの冗長性追加、重要な部分の構造強度増加、キャッチ成功後の推進剤抜き取り時間短縮が図られています。前回同様、ブーストバック燃焼(Starship宇宙船の分離後に行う飛行経路に対する逆噴射)の完了前にフライトディレクターから手動コマンドが送信されない場合や、機体や発射台のタワーに問題がある場合は、安全確保のためにSuper Heavyブースターは発射台に帰還せずメキシコ湾への軟着水を試みることになります。
Starship宇宙船は今回もインド洋への軟着水を目指しますが、大気圏再突入の前に「Raptor(ラプター)」エンジン1基の宇宙空間での再点火が試みられます。現在のStarshipは地球を完全には周回しない準軌道飛行(サブオービタル飛行)で試験を行っていますが、地球周回軌道から帰還する際には軌道を離脱するためにエンジンの再点火が欠かせません。再点火は2024年3月の第3回飛行試験で試みられる予定でしたが、この時は宇宙空間到達後にStarship宇宙船の姿勢制御が失われたため実施されず、その後の第4回・第5回飛行試験でも行われていませんでした。
また、Starship宇宙船はSuper Heavyブースターと同様に発射台へ帰還させてロボットアームでキャッチすることが今後予定されており、そのために必要なハードウェアが取り付けられる部分を対象に、機体両側の耐熱タイルの一部が取り外されます。この他にも新しい耐熱素材の評価や、フラップ制御の限界を試すために降下の最終段階で意図的に高い迎え角で飛行してデータを収集することなどが予定されているということです。
Source
- SpaceX - Starship's Sixth Flight Test
文・編集/sorae編集部
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