
こちらは、NASA(アメリカ航空宇宙局)のチャンドラX線宇宙望遠鏡と、地上の望遠鏡(Pan-STARRS)が観測した銀河団「Abell 2029(エイベル2029)」。おとめ座の方向、地球から約10億光年先にあります。

“穏やかな銀河団”が持つ巨大な青い光の渦
オウムガイの殻を思わせる渦巻いた青い輝きは、チャンドラがX線で捉えた数百万度の高温ガスの分布を示しています。その背後や周辺に散らばる白い光の点は、地上の望遠鏡が可視光線で捉えた星や銀河です。
銀河団は、数百から数千もの銀河が重力で互いに結びついた巨大な構造です。銀河と銀河のあいだは空虚な空間ではなく、銀河団ガスと呼ばれる大量の高温ガスで満たされています。
チャンドラを運用するCXC(チャンドラX線センター)によると、Abell 2029はこれまで、内部の高温ガスが乱れのない非常に落ち着いた状態に見えたことから、“宇宙で最も穏やかな銀河団”と呼ばれることもあったといいます。
40億年前の大衝突を物語る「スロッシング」
ところが、その穏やかな外見には波乱に満ちた過去が隠されていたようです。ボストン大学やハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究者からなるチームによると、Abell 2029は現在観測されている状態から約40億年前に別の小さな銀河団と激しい衝突を経験したことがあり、私たちが見ているのはその影響から落ち着きを取り戻しつつある最中の姿だといいます。
貝殻を思わせる渦巻構造は中心から外側へと約200万光年にわたって伸びていますが、これは小さな銀河団が最初に通過した時に、大きな銀河団のガスが横方向へ引っぱられたことで形成されたとみられています。この現象はスロッシングと呼ばれており、グラスに注がれたワインが揺れ動く様子にたとえられています。
詳細な観測で明らかになった構造
また、研究チームによると、X線観測データを詳細に分析した結果、過去の衝突を裏付ける重要な痕跡が他にも見つかりました。
たとえば、青い輝きが画像の左下方向へ飛び散っていくように見える領域は「スプラッシュ(飛沫)」と呼ばれており、小さな銀河団が通過を繰り返した時に引きずられて残されたガスの軌跡を示唆しています。
また、下方向にみられる凹みのような構造は「ベイ(湾)」と呼ばれており、渦巻き構造の外側部分と、小さな銀河団から剥ぎ取られたガスが重なり合ったことで生じた可能性があるということです。

冒頭の画像はCXCから2026年5月12日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- CXC - Galaxy Cluster Relaxed Now, but was Wild in the Past
- Watson et al. - Deep Chandra X-Ray Observations of A2029: The Merger History of a Relaxed, Strong Cool Core Cluster (The Astrophysical Journal)
























