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NASA天文衛星「TESS」が想定外の「重力マイクロレンズ法」で惑星を初発見 約1.4万光年先

ニューメキシコ大学のMallory Harris氏を筆頭とする研究チームは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の系外惑星探査衛星「TESS(テス)」の観測データから、本来TESSでは想定していなかった「重力マイクロレンズ法」を用いて太陽系外惑星の存在を特定したとする研究成果を発表しました。

NASAによると、TESSが別の星を周回する惑星を重力マイクロレンズ法で検出したのは、今回が初のケースです。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されています。

どうしてTESSはこの惑星を検出できたのか?

今回報告された太陽系外惑星「Gaia23bra b」は、木星の約1.6倍の質量を持つ巨大ガス惑星です。木星よりも質量が大きいことから、こうした惑星は「スーパー・ジュピター」と呼ばれることもあります。

太陽系外惑星「Gaia23bra b」のイメージ図(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center)
【▲ 太陽系外惑星「Gaia23bra b」のイメージ図(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center)】

このGaia23bra bは、太陽の約0.8倍の質量を持つ恒星(K型星)の周囲を、太陽から木星までの距離に近い約4.8天文単位離れた軌道で公転しているとみられています。

ここで特筆すべきは、地球からGaia23bra bまでの距離が約1万4000光年もある点です。

TESSは「トランジット法」(※)という観測手法を用いて、地球から比較的近い約150光年以内の範囲にある惑星を中心に探索しています。どうして今回、TESSは本来の探査範囲をはるかに超えた距離にある惑星を検出できたのでしょうか。

※…太陽系外惑星が主星の手前を横切る「トランジット」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、太陽系外惑星を間接的に検出する手法。繰り返し起きるトランジットを観測することで、その周期から惑星の公転周期を割り出したり、トランジット時の主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能。

偶然が重なった「重力マイクロレンズ法」による検出

その鍵となったのが「重力マイクロレンズ」という現象です。これは、地球から見て手前側にある星(レンズ星)が、背景にある遠方側の星(光源星)の前を通過する際、手前側の星の質量がもたらす時空のゆがみによって遠方側の星を発した光の進行方向が曲がり、地球では遠方側の星が一時的に明るく見える現象です。

つまり、重力マイクロレンズ現象を利用すれば、遠方側の星と地球の間を通過した何らかの天体を捉えることができるわけです。電磁波では直接観測できないブラックホールや、誕生した惑星系を離れてさまよう浮遊惑星(自由浮遊惑星)のように自ら明るく輝かない天体であっても、その存在を検出したり、増光の様子をもとに質量を推定したりすることが可能になります。こうした観測手法は「重力マイクロレンズ法」と呼ばれています。

重力マイクロレンズ法の概要図。手前側の天体(中央)が下から上へと移動すると、観測者(左)から見た遠方側の天体(右)は位置がズレて見えるとともに、一時的に明るさが増す。手前側の天体が惑星をともなっていると、惑星による増光も加わることがわかる(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/CI Lab)
【▲ 重力マイクロレンズ法の概要図。手前側の天体(中央)が下から上へと移動すると、観測者(左)から見た遠方側の天体(右)は位置がズレて見えるとともに、一時的に明るさが増す。手前側の天体が惑星をともなっていると、惑星による増光も加わることがわかる(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/CI Lab)】

重力マイクロレンズ法で興味深いのは、通過した星の伴星や惑星が検出されることもある点です。重力マイクロレンズによる増光が起きている遠方側の星の明るさを光度曲線というグラフで表してみると、通過する手前側の星を周回する伴星や惑星もレンズとして働くため、光度曲線には特徴的なスパイク状の変化が現れるのです。

NASAによると、Gaia23bra bとその主星による増光現象そのものは、2023年にESA(ヨーロッパ宇宙機関)が運用していた宇宙望遠鏡「ガイア(Gaia)」によって検出されており、「Gaia23bra」という名前でアラートが発出されていました。ただ、ガイアの観測は時間間隔が広く、まばらにしかデータを取得していなかったため、惑星の存在は確認されていなかったのです。

そこで、研究チームがTESSの観測データを分析したところ、たまたま同じりゅうこつ座の領域を、200秒間隔の高頻度で観測していたことが明らかになりました。ガイアのデータと、微小な光の変化を捉えていたTESSのデータを組み合わせて詳しく分析した結果、研究チームは惑星の存在を確認するに至っています。

「ローマン宇宙望遠鏡」の観測データとの比較にも期待

トランジット法に特化して設計されたTESSにとって、重力マイクロレンズ法による惑星の検出は、もともと期待されていませんでした。論文の共著者であるニューメキシコ大学のDiana Dragomir教授は、「TESSのデータには、これまで探そうとも思わなかった重力マイクロレンズ現象を起こした惑星が、まだ隠されている可能性がある」と指摘しています。

今回の成果は、異なる特性を持つ宇宙望遠鏡の観測データを組み合わせることの強力さを、改めて示しました。さらに、2026年8月末に打ち上げが予定されているNASAの次世代宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン(Nancy Grace Roman)」のミッションにも弾みをつけるものとなります。

ローマン宇宙望遠鏡は、星が密集する天の川銀河の中心部をターゲットに、重力マイクロレンズ法で約1000個もの太陽系外惑星を発見すると見込まれています。一方、TESSは天球の広い範囲を観測の対象としています。今回TESSが発見したような惑星と、今後ローマンが発見する惑星を比較することで、天の川銀河のさまざまな環境下で惑星がどのように形成されるのか、その理解がさらに深まることが期待されます。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典