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過去の衝突とブラックホールの影響を物語る銀河「ケンタウルス座A」 ウェッブ宇宙望遠鏡が観測

こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した銀河「ケンタウルス座A」。地球から約1100万光年先にあります。

ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡のMIRI(中間赤外線観測装置)で観測した銀河「ケンタウルス座A」(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI. Image Processing: A. Pagan (STScI), J. Depasquale (STScI), M. Garcia Marin (ESA Office at STScI))
【▲ ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡のMIRI(中間赤外線観測装置)で観測した銀河「ケンタウルス座A」(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI. Image Processing: A. Pagan (STScI), J. Depasquale (STScI), M. Garcia Marin (ESA Office at STScI))】

この画像は、ウェッブ宇宙望遠鏡の科学観測開始から4周年を記念して、NASA(アメリカ航空宇宙局)やESA(ヨーロッパ宇宙機関)から公開されました。ウェッブ宇宙望遠鏡の「MIRI(中間赤外線観測装置)」で取得したデータを使って作成されており、色は観測時に使用されたフィルターに応じて擬似的に着色されています。

幅およそ2万6000光年にわたる画面全体に広がった青白い雲のような構造を背景に、赤や紫で示されたガスや塵(ダスト)が複雑な構造を形作っています。中心には横に長い平行四辺形のような明るい構造や、「S」の字を描くようなピンクの構造が見えています。

塵の奥深くに隠された「銀河の歴史」を透視

NASAによれば、ケンタウルス座Aは宇宙のスケールでは“ご近所”と呼べる距離にありながら、非常に激しい活動を見せている銀河です。

さまざまな銀河の中心には、太陽の数十万倍から数十億倍以上もの質量を持つ超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)が存在すると考えられています。ケンタウルス座Aはこうした巨大なブラックホールと銀河がどのようにしてともに成長・進化していくのかを理解するための実験室として、天文学者から注目されているといいます。

しかし、これまでのハッブル(Hubble)宇宙望遠鏡による可視光線での観測では厚い塵にさえぎられてしまい、ケンタウルス座Aの中心部の様子を詳しく探ることはできませんでした。赤外線であれば塵にさえぎられにくいものの、かつて赤外線観測で活躍したスピッツァー(Spitzer)宇宙望遠鏡の解像度では、ひとつひとつの星を見分けるには至っていませんでした。

今回、高い感度と解像度を有するウェッブ宇宙望遠鏡は、分厚い塵のベールに隠されたケンタウルス座Aの内部を鮮明に捉えることに成功しました。NASAによると、冒頭の画像で見えている赤い点の多くは、塵を豊富に含む星や、新しい星が誕生している星形成領域です。

次に掲載する画像は、MIRIと「NIRCam(近赤外線カメラ)」のデータを使って作成されたバージョンです。全体が少しざらついて見えるのはノイズではなく、個々の星が捉えられているからだといいます。

ウェッブ宇宙望遠鏡を使って個々の星を詳細に観測できるようになったことで、古い星がいつ形成されたのか、銀河どうしの衝突後にどのような星が生まれたのかといった、銀河の進化の歴史をひもとく「銀河考古学」が可能になると期待されています。

ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡のNIRCam(近赤外線カメラ)とMIRI(中間赤外線観測装置)で観測した銀河「ケンタウルス座A」(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI. Image Processing: A. Pagan (STScI), J. Depasquale (STScI), M. Garcia Marin (ESA Office at STScI))
【▲ ジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡のNIRCam(近赤外線カメラ)とMIRI(中間赤外線観測装置)で観測した銀河「ケンタウルス座A」(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI. Image Processing: A. Pagan (STScI), J. Depasquale (STScI), M. Garcia Marin (ESA Office at STScI))】

銀河衝突の傷跡と中心に潜む巨大ブラックホール

私たちが目にしているケンタウルス座Aの複雑で神秘的な姿は、決して穏やかな進化の結果ではありません。

NASAによれば、現在観測されている状態から約20億年前に別の銀河を飲み込んだ際の、言ってみれば“傷跡”のようなものだといいます。この出来事で乱された膨大な量のガスや塵は、ケンタウルス座Aの中心にある超大質量ブラックホールへと猛烈な勢いで流れ込み、活発化させたとみられています。

ブラックホールに引き寄せられた物質はすべてが落下するのではなく、一部は強力なジェット(細く絞られた高速な流れ)として放出されていきます。ジェットはブラックホール周囲のガスを激しく圧縮して激しい星形成活動を促す一方で、ガスを吹き飛ばして星形成をさまたげることもあります。

ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた複雑な塵の帯や活発な星形成活動は、銀河どうしの衝突という出来事と、その影響で活発化したブラックホールの活動が複雑に絡み合うことで生み出されたものなのです。

地上(チリのラ・シヤ天文台、左上)とジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡のNIRCam(近赤外線カメラ、右上)およびMIRI(中間赤外線観測装置、下)で観測した銀河「ケンタウルス座A」(Credit: ESO, NASA, ESA, CSA, STScI, ESO; Image Processing: A. Pagan (STScI))
【▲ 地上(チリのラ・シヤ天文台、左上)とジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡のNIRCam(近赤外線カメラ、右上)およびMIRI(中間赤外線観測装置、下)で観測した銀河「ケンタウルス座A」(Credit: ESO, NASA, ESA, CSA, STScI, ESO; Image Processing: A. Pagan (STScI))】

解明が待たれる新たな謎も

ウェッブ宇宙望遠鏡で取得した観測データの初期段階の分析では、ブラックホールの活動によって外側へ押し出されたとみられる高速で移動する電離ガスや、中心付近のゆがんだ回転円盤にある暖かい分子状水素の存在が確認されています。

一方で、今回の観測データは新たな疑問も投げかけています。冒頭のMIRIの画像で際立って見える「S」字状の構造を生み出したプロセスや、その形成に銀河どうしの衝突とブラックホールの活発化で誘発された星形成がどのように影響しているのかは、まだ完全にはわかっていないといいます。

今後はさらなるデータの分析を通じて、巨大なブラックホールはどのようにして銀河全体の進化に影響を及ぼすのかという謎の解明が進むことに期待が寄せられています。

冒頭の画像はNASAやESA/Webbから2026年7月6日付で公開されています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典