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【▲ ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3(WFC3)で撮影された白色矮星「LAWD 37」(中央)(Credit: NASA, ESA, P. McGill (Univ. of California, Santa Cruz and University of Cambridge), K. Sahu (STScI), J. Depasquale (STScI))】

ケンブリッジ大学(※)のPeter McGillさんを筆頭とする研究チームは、孤立して存在する単一の白色矮星の質量を直接的に測定することに初めて成功したとする研究成果を発表しました。研究チームによると、測定で得られた質量の値は理論上の予測値と一致しており、白色矮星の進化に関する現在の理論を裏付けると同時に、白色矮星の構造や組成についての理論に知見をもたらす成果だと受け止められています。

※…研究当時、現在はカリフォルニア大学サンタクルーズ校

■ガイア宇宙望遠鏡のデータで予測された重力マイクロレンズ現象をハッブル宇宙望遠鏡で観測

白色矮星は太陽のように比較的軽い恒星(質量は太陽の8倍以下)が赤色巨星の段階を経て進化した天体です。赤色巨星は外層から周囲の宇宙空間にガスを放出し、その後に残ったコア(中心核)が白色矮星になると考えられています。一般的な白色矮星は直径が地球と同じくらいですが、質量は太陽の4分の3程度もあるとされている高密度な天体です。

今回、研究チームが質量を測定したのは「はえ座」の方向にある白色矮星「LAWD 37」(「グリーゼ440」等とも呼ばれる)です。LAWD 37は地球から15光年ほどしか離れていないことから広く研究されていて、約11億5000万年前に寿命を迎えた恒星のコアだったと考えられています。

これまで、白色矮星の質量は別の恒星などと連星を成している場合に測定されてきました。共通の重心を公転する連星の運動を観測すると、連星を成す天体それぞれの質量を求めることができるからです(※連星を成していても互いに遠く離れて公転している場合は質量の測定が難しくなります)。ところが、LAWD 37は伴星を持たない孤立した白色矮星であるため、この方法を利用することができませんでした。

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しかし、2019年にLAWD 37の質量を測定するチャンスが巡ってきました。地球から観測した天体の位置は不変ではなく、年周視差や天体の固有運動によって、ごくわずかながらも常に変化しています。研究チームが欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「ガイア」の観測データをもとに天球におけるLAWD 37の位置の変化を予測したところ、背景に見える星の1つの近くを2019年11月に通過することがわかったのです。そこで、研究チームは「重力マイクロレンズ」を利用してLAWD 37の質量の測定を試みました。

【▲ 白色矮星による重力マイクロレンズ現象の解説図。時空間の歪みによって光の進む向きが曲がるため、実際とは別の位置(点線の先)に星があるように見える(Credit: NASA, ESA, A. Feild)】
【▲ 白色矮星による重力マイクロレンズ現象の解説図。時空間の歪みによって光の進む向きが曲がるため、実際とは別の位置(点線の先)に星があるように見える(Credit: NASA, ESA, A. Feild)】

重力マイクロレンズとは、遠くにある恒星(光源星)と地球の間を別の天体(レンズ天体)が通過する時に、レンズ天体の重力がもたらす時空間の歪みによって光源星を発した光の進む向きが変わることで、光源星の明るさや天球における見かけの位置が時間とともに変化する様子が観測される現象です。この現象を利用した観測手法は「重力マイクロレンズ法」と呼ばれていて、LAWD 37のように孤立して存在する天体や、太陽系外惑星の検出などに利用されています。

研究チームは「ハッブル」宇宙望遠鏡を使用して、2019年5月1日から2020年9月16日にかけての期間中にLAWD 37の観測を9回実施。LAWD 37の重力による背景の星の見かけの位置の変化を分析した結果、LAWD 37の質量は太陽の約0.56倍と算出されました。冒頭でも触れた通り、この値は理論上予測されたLAWD 37の質量の推定値と一致しているといいます。

【▲ 白色矮星(右上→左下へ移動)の重力マイクロレンズ効果によって、背景の星(中央)の見かけの位置が変化する様子を示した動画】
(Credit: NASA & ESA)

ハッブル宇宙望遠鏡や「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、今回の研究に参加したSTScIのKailash Sahuさんは、ウェッブ宇宙望遠鏡を使用して別の白色矮星「LAWD 66」の観測にも取り組んでいます。LAWD 66の観測は2022年に開始されており、重力マイクロレンズの効果は2024年にピークに達すると予測されています。なお、Sahuさんは過去にも重力マイクロレンズを利用して連星を成す白色矮星の質量を測定したことがあり、2017年には白色矮星「スタイン2051 B」の質量が太陽の約0.68倍だとする研究成果を発表しています。

McGillさんは今後も重力マイクロレンズ現象を利用して様々な種類の星の質量を測定したいとコメントしています。

【▲ 天球におけるLAWD 37の見かけの移動経路(右上)と、2019年5月~2020年9月にかけて9回の観測で取得されたLAWD 37の画像を示した図(Credit: NASA, ESA, P. McGill (Univ. of California, Santa Cruz and University of Cambridge), K. Sahu (STScI), J. Depasquale (STScI))】
【▲ 天球におけるLAWD 37の見かけの移動経路(右上)と、2019年5月~2020年9月にかけて9回の観測で取得されたLAWD 37の画像を示した図(Credit: NASA, ESA, P. McGill (Univ. of California, Santa Cruz and University of Cambridge), K. Sahu (STScI), J. Depasquale (STScI))】

 

Source

  • Image Credit: NASA, ESA, P. McGill (Univ. of California, Santa Cruz and University of Cambridge), K. Sahu (STScI), J. Depasquale (STScI), A. Feild
  • STScI – For the First Time Hubble Directly Measures Mass of a Lone White Dwarf
  • NASA – For the First Time Hubble Directly Measures Mass of a Lone White Dwarf
  • ESA/Hubble – For The First Time Hubble Directly Measures The Mass of a Lone White Dwarf
  • University of Cambridge – Astronomers observe light bending around an isolated white dwarf
  • McGill et al. – First semi-empirical test of the white dwarf mass–radius relationship using a single white dwarf via astrometric microlensing (MNRAS)

文/sorae編集部

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