
アメリカのFirefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)社は2026年7月7日付で、NASA(アメリカ航空宇宙局)のJPL(ジェット推進研究所)から、火星探査ミッション「SkyFall(スカイフォール)」向けに1300万ドル規模の契約を受注したと発表しました。
Fireflyは2028年後半のSkyFall打ち上げに向けて、火星の大気圏突入時に探査機を守るエアロシェルの製造、各種試験、納品までを担うことになります。同社は同じく2028年に月の南極へ4機の小型探査機を送り込むJPLの「MoonFall(ムーンフォール)」ミッションでも、探査機を月まで運ぶ宇宙機を担当する企業に選定されており、月探査と火星探査で相次いで契約を獲得しています。

有人火星探査を見据えた「スカイフォール」ミッション
JPLが主導するSkyFallは、将来の有人火星探査を見据えたミッションです。地球から火星への旅路では、原子力電気推進(NEP)システムを搭載した惑星間宇宙機「Space Reactor-1(SR-1)Freedom」が使用されることでも注目を集めています。
NASAやFireflyによれば、このミッションでは2021年4月に初めて地球以外の天体で動力飛行を行った航空機となった火星ヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ)」で培われた技術を応用した、3機の小型ヘリコプターが活躍する予定です。

空中でヘリを展開する「スカイフォール・マニューバー」
本ミッションの大気圏突入カプセルで最大の特徴と言えるのは、「SkyFall Maneuver(スカイフォール・マニューバ)」と呼ばれる機体放出技術です。この手法では、従来の火星探査のような着陸船は使用せず、カプセルが火星の大気を降下していく最中に、3機のヘリコプターを空中で直接放出します。
火星に運ばれたヘリコプター群は上空から地表の高解像度画像を撮影するだけでなく、レーダーで地下の構造もマッピングします。探査地点の地形がどのようにして形成されたのかという謎に迫りつつ、将来の宇宙飛行士の生命維持や推進剤の原料として欠かせない氷(水の氷)が埋蔵されている場所を探るのが狙いです。


月面着陸での実績を火星探査ミッションに活用
大気圏突入から降下までの過酷な環境下で、3機のヘリコプターや展開システムを熱や衝撃から守るのが、Fireflyが開発するエアロシェル(バックシェルとヒートシールドで構成される外殻構造)です。
Fireflyによると、同社は2025年3月に月面着陸を成功させた自社の月着陸船「Blue Ghost(ブルーゴースト)」などで培われた高度な炭素複合材技術を、エアロシェルの開発・製造で活用します。完成したエアロシェルは試験を経てJPLへと納入され、火星ヘリコプターや展開システムと統合されるということです。
Fireflyの宇宙船部門バイスプレジデントを務めるRay Allensworth氏は、「私たちが月面で取り組んでいるあらゆる活動が、火星探査に直結する技術とノウハウの蓄積に繋がっています」と述べています。Blue Ghostの月面着陸を支えた「低コストかつ迅速な開発」という同社の強みは、火星をはじめとする今後の深宇宙探査でも発揮されていくことになりそうです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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