
ニューサウスウェールズ大学(UNSW)のMargo Thorntonさんを筆頭とする研究チームは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の系外惑星探査衛星「TESS」の観測データを利用して、「周連星惑星」の候補を新たに27個発見したとする研究成果を発表しました。
周連星惑星は、連星の周りを公転する太陽系外惑星です。NASAなどの発表では、SF作品『スター・ウォーズ』に登場する、2つの太陽(恒星)の周りを公転する惑星「タトゥイーン」に例えられることがあります。研究チームの成果をまとめた論文は「王立天文学会月報(MNRAS)」に掲載されています。

従来の「トランジット法」が抱える観測の偏り
これまでに見つかった周連星惑星の多くは、「トランジット法」という手法で発見されてきました。トランジット法とは、惑星が恒星の手前を横切る現象「トランジット」が起きた時に生じる、恒星のわずかな減光を捉える観測手法です。
繰り返し起きるトランジットを観測することで、その周期をもとに惑星の公転周期を知ることができますし、トランジットが起きた時の恒星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能です。
【▲ 参考動画:惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子を示した動画(Credit: ESO/L. Calçada)】
一般的に、トランジット法で惑星を発見できるのは、地球から見て惑星の公転軌道が真横を向いている場合に限られます。さらに周連星惑星においては、惑星の公転軌道が連星の軌道とほぼ同じ平面上にあることも重要な条件になります。研究チームによれば、惑星の公転軌道面が連星の軌道面に対してわずか1度でも傾いていると、惑星が恒星の手前を通過するタイミングが合わず、トランジットを繰り返し観測できる確率が劇的に下がってしまうのだといいます。
そのため、大きく傾いた軌道を公転する周連星惑星はトランジットを起こしにくく、これまでの観測データには偏りがある可能性が指摘されていました。Thorntonさんは「連星系における惑星の形成範囲をより深く知るためには、惑星の軌道の向きに依存しない新たな探索手法が必要でした」と述べています。
連星の「近点移動」を利用した新たな検出アプローチ
そこで研究チームは、変光星の一種である「食連星」に注目しました。食連星とは、恒星が互いを隠し合うように公転することで、地球からは周期的に明るさが変化するように見える連星のことです。ある天体が別の天体を隠すことを「食」と呼ぶことから、このような連星は食連星と呼ばれています。
【▲ 参考動画:食連星の明るさが変化する様子を示した動画(Credit: ESO/L. Calçada)】
今回の研究では、食連星における「近点移動」という現象が鍵となりました。近点移動は天体の楕円軌道全体が徐々に回転していく現象のことで、太陽系では水星の公転軌道における近点移動が19世紀から知られています。
研究チームによると、連星の外側に惑星などの未知の天体が存在する場合、その重力的な影響によって連星の近点移動に変化が生じます。その結果として、食が起こるタイミング、すなわち明るさが変化するタイミングに周期的なズレが生じるのです。
研究チームは、TESSが少なくとも2年間にわたって観測した1590個の食連星のデータを分析し、食のタイミングのズレを精密に測定した結果、27個の連星において、惑星サイズの天体が存在する可能性を示すデータが得られました。これらの惑星候補の質量は、最小で地球の約12倍、最大で地球の約3200倍(木星の約10倍)の範囲に及ぶと研究チームは推定しています。
多様な惑星系の解明に向けた今後の展望
今回検出された27個の天体が実際に周連星惑星であると確定させるためには、今後は地上の望遠鏡による「視線速度法」を用いた追加観測が必要です。視線速度法は、太陽系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きをもとに、惑星を間接的に検出する手法です。
惑星の公転にともなって主星が揺れ動くと、光の色は主星が地球に近付くように動く時は青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽくといったように、周期的に変化します。こうした主星の色の変化は、天体のスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)を得る分光観測を行うことで検出することが可能で、そのデータからは惑星の公転周期や最小質量を求めることができます。
【▲ 参考動画:惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子を示した動画(Credit: ESO/L. Calçada)】
今回の研究で特筆すべきは、惑星のトランジットを捉えることを目的としたTESSの観測データを利用して、「地球からはトランジットを観測できない惑星」の候補を多数発見したことです。従来のトランジット法では見逃されてしまうような、多様な軌道を持つ惑星を検出できる可能性を示したという点で、大きな意義があります。研究に参加したUNSWのBenjamin Montet准教授は、「TESSの豊富で長期的な観測データが、このような微小な影響の計算を可能にしました」と述べています。
今後の観測によってこれらの惑星候補の存在が確定すれば、天の川銀河における惑星形成プロセスのより完全な姿を描き出すことに繋がると期待されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- NASA - For NASA’s TESS, Stellar Eclipses Shed Light on Possible New Worlds
- Thornton et al. - Detection of 27 candidate circumbinary planets through apsidal precession of eclipsing binaries observed by TESS (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)























