
こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の「NIRSpec(近赤外線分光器)」で観測した天王星です。
天王星は太陽系の惑星の中でも特異な存在として知られる巨大氷惑星です。自転軸が公転軌道面に対してほぼ横倒し(約98度)になっており、さらに磁場の軸が自転軸から大きく傾いて中心からずれているという、非常に複雑な環境を持っていることがその理由です。

これまで、天王星の分厚い雲の上空にある上層大気において、エネルギーがどのように移動しているのかは謎に包まれていました。
今回、ノーザンブリア大学のPaola Tirantiさんたち研究チームは、2025年1月に実施されたウェッブ宇宙望遠鏡のNIRSpecによる天王星の観測データを用いることで、天王星の上層大気の鉛直構造(高さごとの立体的な構造)を初めてマッピングすることに成功したとする研究成果を発表しました。
観測で明らかになった温度と密度の変化
ウェッブ宇宙望遠鏡による観測は天王星の自転ほぼ1回分にわたって行われ、雲頂から上空5000kmに至る広大な領域の様子が明らかになりました。画像の色は発光の高度の違いを表しており、青色が低い高度、赤色が高い高度を示しています。
【▲ ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の「NIRSpec(近赤外線分光器)」で観測した天王星のタイムラプス(Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, STScI, P. Tiranti, H. Melin, M. Zamani (ESA/Webb))】
研究チームによる詳細な分析の結果、大気分子が電離して磁場と強く相互作用する電離層において、イオンの密度は高度1000km付近で最大になる一方で、温度はそれよりもはるかに上の高度3000km~4000kmの間でピークに達していることが示されました。
また、太陽から平均約19auも離れている極寒の惑星として知られる天王星ですが、その上層大気は非常に高温になる性質があり、1990年代前半から徐々に冷え続けていることが過去の観測で示唆されていました。今回の観測で得られた上層大気の平均温度は約426ケルビン(約150℃)であり、これは過去に地上の望遠鏡や探査機が記録した値よりも低く、上層大気の冷却傾向が現在も続いていることを裏付けています。
さらに、天王星の特異な磁場がもたらす影響も詳細に捉えられました。研究チームによれば、磁極付近で2つの明るいオーロラ帯が確認されたことに加えて、オーロラ帯に挟まれた領域の一部では発光やイオン密度が著しく低下する領域が存在することもわかりました。これは、複雑な形状をした天王星の磁場が、大気中の荷電粒子の動きを左右している可能性を示しているといいます。
今回の研究によって、天王星のオーロラがどのように形成され、上層大気へとエネルギーが波及していくのかが立体的かつ詳細に描き出されました。この成果は、太陽系の巨大氷惑星にとどまらず、太陽系外に存在する巨大惑星のエネルギー収支のメカニズムを解明していく上でも、重要な手がかりになることが期待されます。
冒頭の画像はESA(ヨーロッパ宇宙機関)から2026年2月19日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- ESA - Webb maps Uranus's mysterious upper atmosphere
- Tiranti et al. - JWST Discovers the Vertical Structure of Uranus' Ionosphere (Geophysical Research Letters)
























