
NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年8月11日付で、ガンマ線観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト(Neil Gehrels Swift)」の軌道上昇ミッションを担う無人宇宙機「LINK」について、同年7月下旬に発生した姿勢制御のトラブルに対応するためのソフトウェアアップデートに成功し、スウィフトへの接近を再開する段階に入ったと発表しました。
LINKの開発・運用を担うアメリカのKatalyst Space Technologies(カタリスト・スペース・テクノロジーズ)社によると、LINKは新たな飛行ソフトウェアの適用によって安定した姿勢維持が可能になるとみられ、今後はNASAの発表時点から数日かけてスウィフトへの接近に向けた軌道変更が実施される見通しです。
段階的に回転を抑制しつつソフトウェア更新で安定を確保
Katalystによると、LINKは2026年7月下旬に姿勢制御のトラブルが発生した時点で毎秒約9度の多軸回転(複数の軸を中心とした回転)に陥っており、通信も途切れがちな状態でした。
そこで、同社のチームは機体に搭載された電気推進システムのホールスラスター(二軸ジンバルに搭載)の噴射を繰り返すことで回転を段階的に抑制し、2026年7月31日の時点では毎秒4度未満、同年8月6日の時点では毎秒約1.47度まで低下させることに成功しています。その後は新たな姿勢制御アルゴリズムをLINKへアップロードすることに成功したことが、同年8月11日付で同社から発表されました。
なお、ホールスラスターはLINKの軌道変更やスウィフトの軌道上昇に使用されるものですが、一連の回転抑制で消費した推進剤は100g未満に留まり、ミッションの継続に向けて推進剤は温存されているといいます。KatalystはNASAと緊密に連携しつつ、各段階でLINKの状態を評価していくとしています。
Katalystによれば、この後のLINKは軌道変更マヌーバ(軌道を調整するための機動)を重ねてスウィフトの軌道と自身の軌道をほぼ揃えた上で、スウィフトの点検結果とLINKの状態が良好であれば、接近してロボットアームを使ったスウィフトの把持(キャプチャー)に挑む予定です。

大気抵抗による軌道低下との競争
2004年に打ち上げられたスウィフトは強力な爆発現象であるガンマ線バーストなどを観測してきましたが、軌道を変更できるエンジンが搭載されていないことから、希薄な大気による抵抗を受けて高度が徐々に低下し続けています。
近年はこの高度低下に太陽活動が拍車をかけました。2024年に太陽活動周期が極大期に達したことで、予想以上に激しい宇宙天気現象が発生。わずかに膨張する地球の大気からスウィフトが受ける空気抵抗も増加して、当初の想定よりも早く高度が低下しはじめたのです。
そこでNASAは2025年9月、Katalyst社と契約を締結し、同社の無人宇宙機「LINK」を用いたスウィフトの軌道上昇ミッションを決定。それから1年と経たない2026年7月、LINKは無事打ち上げに成功しました。
スウィフトには他の宇宙機がドッキングや把持を行うための機構が何も備わっていないため、LINKはロボットアームを使ってスウィフトの主要構造を把持し、ホールスラスターを使って高度を上昇させる予定です。
NASAによると、2026年8月11日の時点でスウィフトは高度約347kmを飛行しており、LINKによる軌道上昇を実施できるリミットとなる高度300kmまではまだ余裕があります。スウィフトのミッション継続に向けて軌道上昇に成功するかどうか、引き続き注目です。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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