
こちらは、ESO(ヨーロッパ南天天文台)の「VST(VLTサーベイ望遠鏡)」が観測した「ほ座超新星残骸」です。

無数のフィラメント(ひも状)構造が織りなすその姿を、ESOは蜘蛛の巣や幻想的な龍、あるいは漂う幽霊の軌跡のようだと表現しています。
超新星残骸という言葉からもわかるように、この複雑なフィラメント構造は、太陽と比べて8倍以上重い大質量星が寿命の最後に起こす超新星爆発によって生じました。爆発の衝撃波が周囲のガスを圧縮しながら伝わり、細いフィラメント構造を形作るとともに、加熱されたガスが可視光線、電波、X線といった電磁波を放射しています。
ESOによると、現在私たちが観測しているほ座超新星残骸は、爆発から約1万1000年が経った状態とみられています。超新星爆発が起きたのは地球から約800光年先とみられており、特に地球に近い超新星残骸のひとつとされています。
5億5400万ピクセルで描かれた繊細な模様
この画像は、VSTの広視野カメラ「OmegaCAM」で取得したデータを使って作成されました。画像の範囲は満月9個分に相当する広さですが、ほ座超新星残骸そのものはさらに大きく広がっているといいます。
記事に掲載した画像は縮小していますが、元々の画像ファイルは5億5400万ピクセルもあります。観測では4種類のフィルターが使用されており、波長に応じてマゼンタ・青・緑・赤を割り当てることで、ガスの微細な濃淡まで鮮やかに描き出されました。

残骸とともに残された高速回転する中性子星
爆発してほ座超新星残骸を残した星の外層はガス雲として周囲に広がりましたが、その一方で星の中心部は潰れて中性子星に姿を変えました。画像の左上方向の視野外に存在する「ほ座パルサー」がその中性子星で、1秒間に10回転以上という高速で自転しています。ほ座パルサーは超新星残骸「かに星雲」の「かにパルサー」とともに、超新星爆発が中性子星を生み出すという考えを裏付ける観測的な証拠のひとつになりました。
近年ではX線偏光観測衛星「IXPE」観測によって、ほ座パルサーの周囲に広がるパルサー風星雲(※)では、パルサーから吹き出した粒子がほとんど乱れのない秩序だった磁場によって加速されていることを示す結果が得られました。これは、周囲に広がるほ座超新星残骸本体の乱れたガスの流れとは対照的な環境です。
※…パルサーから吹き出すパルサー風(電子と陽電子の流れ)によって形成される天体。
このように、ほ座超新星残骸は研究者の関心を集め続けている天体のひとつとなっています。
冒頭の画像はESOから2022年10月31日付で公開されたもので、ESOの公式SNSアカウントが2026年8月6日にあらためて紹介しています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部






















