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「みちびき」5号機は打ち上げ当日に再突入か JAXAがH3ロケット8号機の原因究明状況を報告

JAXA=宇宙航空研究開発機構は2025年12月25日に開催された第58回宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会にて、「H3」ロケット8号機打ち上げ失敗の原因究明について、最新の状況を報告しました。

準天頂衛星システム(QZSS)「みちびき」5号機を搭載したH3ロケット8号機は、種子島宇宙センターから日本時間2025年12月22日10時51分30秒に打ち上げられました。

1段目と2段目の分離後に2回予定されていた2段目エンジン燃焼のうち、第2回燃焼が早期に停止してしまったことで、打ち上げは失敗しました。打ち上げまでの経緯や打ち上げ当日の模様については、以下の記事をご参照下さい。

準天頂衛星システム「みちびき」5号機を搭載して打ち上げられた「H3」ロケット8号機。JAXAの公式ライブ中継から(Credit: JAXA)
【▲ 準天頂衛星システム「みちびき」5号機を搭載して打ち上げられた「H3」ロケット8号機。JAXAの公式ライブ中継から(Credit: JAXA)】

みちびき5号機は打ち上げ当日の時点で大気圏再突入と判断

打ち上げ実施から3日後の12月25日に開催された会合では、JAXAでH3プロジェクトチームのプロジェクトマネージャー(PM)を務める有田誠さんから、原因究明についての状況が報告されました。

まず、「みちびき」5号機の状況について。22日の打ち上げ当日に2段目から衛星分離信号は送出されたものの、分離スイッチによる分離の検知がされていないということで、25日の時点でも2段目から分離されたかどうかはわかっていません。

ただし、早期終了した第2回燃焼の後、衛星が分離された場合・分離されなかった場合のどちらにしても、地球を周回できたのは多くても2回に留まると評価されています。

このことから、H3ロケット8号機の2段目と「みちびき」5号機は、打ち上げから約4時間以内(日本時間2025年12月22日15時頃まで)に大気圏へ再突入したと考えられています。

準天頂衛星システム「みちびき」の測位衛星「みちびき」5号機(QZS-5)(画像提供: 三菱電機)
【▲ 準天頂衛星システム「みちびき」の測位衛星「みちびき」5号機(QZS-5)(画像提供: 三菱電機)】

水素タンク圧力低下も2段目エンジンは第1回燃焼を無事完了

次に、予定されていた第2回燃焼が早期終了してしまった2段目のエンジン「LE-5B-3」について。

22日の時点では打ち上げ後の記者説明会に登壇したJAXAの岡田匡史理事から、1段目で飛行中に2段目液体水素タンクの圧力低下を示すデータが得られていることが報告されていましたが、25日の会合では有田PMから、より具体的な状況が述べられました。

有田PMによると、H3ロケット8号機の2段目では後述するフェアリング分離のタイミングから液体水素タンクの圧力が低下し始め、発射5分23秒後に推力立ち上がりを迎えた第1回燃焼の開始時点では、圧力が通常の約80%まで低下していました。

その後も圧力が低下し続けたことで、2段目エンジンの液体水素ターボポンプは回転数が定格の140%以上に達し、エンジンシステムとしての認定範囲を超えた条件で作動する状況に。それでも計画から24秒ほど長く燃焼を継続することで第1回燃焼は無事終了しましたが、その時点での液体水素タンクの圧力は通常の約65%まで低下していました。

発射から25分01秒後には第2回燃焼の推力立ち上がりを迎えたものの、この時点ではもう正常な燃焼状態に到達できないほど圧力が低下していたため、燃焼が早期に停止したということです。

鍵を握るのはフェアリング分離?

続いて、打ち上げ時に衛星を保護するフェアリング分離時の状況について。

H3ロケット8号機では発射3分45秒後にフェアリングが分離されましたが、この時、2段目の衛星分離部(衛星と2段目の衛星搭載アダプタをつなぐ部分)に設置された加速度計がこれまでの打ち上げ時とは異なる大きな加速度を記録するとともに、このタイミングから前述の2段目液体水素タンクの圧力低下が始まったことがわかっています。

フェアリングの分離機構は1990年代の「H-II」ロケットの頃から基本的に同一設計で、H3ロケットではフェアリングの直径や形態(ショート形態・ロング形態)にあわせて長さが変更されているということです。

また、25日の会合では検出された加速度の波形をはじめ、8号機の2段目に搭載されていたカメラで取得した画像4点もデータの一部として示されました。参考として、2025年2月に打ち上げられた5号機(「みちびき」6号機を搭載)の同じ状況での画像も添えられています。

この画像からも様々なことが読み取れそうですが、会合の時点では何が写っているのか詳しいことはまだ調査中ということで、有田PMからどのような状況だったとみられるかなどの説明はありませんでした(※)

※…以下はあくまでもsorae編集部の推測であり公式な見解ではありませんが、8号機に搭載されていた「みちびき」5号機はフェアリング分離後の時点で側面のパネルが大きく損傷もしくは脱落し、衛星バスの内部構造が露出してしまっているようにも見えます。

H3ロケット8号機2段目の加速度データ・液体水素タンク圧力・液体水素タンク加圧弁・エンジン推力を時系列に沿って示した図。フェアリング分離時の加速度データが従来よりも大きく、この時点から液体水素タンク圧力の低下が始まったことがわかる。JAXAの配布資料から引用(Credit: JAXA)
【▲ H3ロケット8号機2段目の加速度データ・液体水素タンク圧力・液体水素タンク加圧弁・エンジン推力を時系列に沿って示した図。フェアリング分離時の加速度データが従来よりも大きく、この時点から液体水素タンク圧力の低下が始まったことがわかる。JAXAの配布資料から引用(Credit: JAXA)】
H3ロケット8号機2段目の衛星分離部に設けられた加速度計が記録した、フェアリング分離時の機軸方向の加速度のグラフ(F8)。2025年2月打ち上げの5号機(F5)や、2024年2月の試験機2号機(TF2)と比較すると、分離直後の衝撃に続いて従来と異なる加速度が記録されていることがわかる。JAXAの配布資料から引用(Credit: JAXA)
【▲ H3ロケット8号機2段目の衛星分離部に設けられた加速度計が記録した、フェアリング分離時の機軸方向の加速度のグラフ(F8)。2025年2月打ち上げの5号機(F5)や、2024年2月の試験機2号機(TF2)と比較すると、分離直後の衝撃に続いて従来と異なる加速度が記録されていることがわかる。JAXAの配布資料から引用(Credit: JAXA)】
H3ロケット8号機2段目に搭載されていたカメラでフェアリングの分離前(上段左)と分離後(上段右)に取得された「みちびき」5号機の様子。下段は2025年2月に「みちびき」6号機を打ち上げたH3ロケット5号機のフェアリング分離前後の様子。JAXAの配布資料から引用(Credit: JAXA)
【▲ H3ロケット8号機2段目に搭載されていたカメラでフェアリングの分離前(上段左)と分離後(上段右)に取得された「みちびき」5号機の様子。下段は2025年2月に「みちびき」6号機を打ち上げたH3ロケット5号機のフェアリング分離前後の様子。JAXAの配布資料から引用(Credit: JAXA)】
H3ロケット8号機2段目に搭載されていたカメラで1段目・2段目の分離後に取得された2段目後方の様子(上段左)と、衛星分離信号送出時に取得された2段目前方の様子(上段右)。下段は2025年2月に「みちびき」6号機を打ち上げたH3ロケット5号機における同様のタイミングでの様子。JAXAの配布資料から引用(Credit: JAXA)
【▲ H3ロケット8号機2段目に搭載されていたカメラで1段目・2段目の分離後に取得された2段目後方の様子(上段左)と、衛星分離信号送出時に取得された2段目前方の様子(上段右)。下段は2025年2月に「みちびき」6号機を打ち上げたH3ロケット5号機における同様のタイミングでの様子。JAXAの配布資料から引用(Credit: JAXA)】

フェアリング分離後の挙動に着目して原因究明目指す

25日の会合で有田PMから報告された内容をもとに、「みちびき」5号機、2段目エンジン、フェアリングについて改めて簡潔にまとめると、以下のようになります。

・「みちびき」5号機とH3ロケット8号機の2段目は、12月22日10時51分の打ち上げから約4時間以内(同日15時頃まで)に大気圏へ再突入したとみられる。
・2段目エンジン「LE-5B-3」は、液体水素タンクの圧力低下という特異な状況での作動となったものの、第1回燃焼までは環境に応じて良好に作動したと考えられる。
・フェアリング分離時に従来とは異なる挙動が認められ、ここを起点に2段目液体水素タンクの圧力低下が始まっている。

JAXAは今後、フェアリング分離後の挙動に着目して画像を含むデータの詳細評価を行い、FTA(故障の木解析)の作成や製造記録の調査、再現試験・解析を通じて原因の特定につなげていきたいということです。

 

文・編集/sorae編集部

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参考文献・出典