
三菱電機は2025年12月1日、測位衛星「みちびき」7号機(QZS-7)を報道関係者に公開しました。
「みちびき」7号機は内閣府の準天頂衛星システム(QZSS)「みちびき」を構成する衛星のひとつで、2026年2月1日に「H3」ロケット9号機で打ち上げられる予定です。
みちびきとは
「みちびき」はアメリカの「GPS」との互換性を確保した日本の衛星測位システムで、日本版GPSとも呼ばれます。
最大の特徴は、測位衛星の一部を準天頂軌道(Quasi-Zenith Orbit: QZO)に投入していること。「みちびき」の準天頂軌道は、赤道上空を飛行する静止軌道を南北に傾けた上で、北半球上空では地表から遠ざかり、南半球上空では地表に近付くように高度が調整されています。
そのため、この軌道に投入された測位衛星は日本付近の上空に長く留まることができます。

地上で位置情報を取得するには、最低でも4機の測位衛星からの信号をキャッチする必要があります。測位精度を高めるためには、視界内の衛星の配置がなるべく偏らず、散らばっていることが理想です。
GPSの場合、地球全体をカバーするような複数の軌道に多数の衛星を投入しているので、測位には理想的に思えます。ところが、建物や地形に視界を遮られがちな都市部や山間部では、信号をキャッチできる衛星の数や方向が限られてしまいます。

一方「みちびき」の場合、準天頂軌道の衛星が視界を遮られにくい天頂(仰角90度)の付近に長時間留まることができます。日本の立地に適した特徴を持つ「みちびき」の信号が加わることで、測位精度が向上するというわけです。
みちびき7機体制の完成に向けた最後の打ち上げとなる7号機
2024年末の時点で「みちびき」は準天頂軌道に3機・静止軌道に1機の合計4機体制で運用されていましたが、内閣府は7機体制の構築を進めてきました。
4機体制の場合、東京付近では静止軌道の1機に加えて、仰角70度以上に8時間留まる準天頂軌道の衛星が8時間ごとに代わる代わる飛来します。しかし、測位に必要な4機以上を満たすには、GPS衛星も2機以上見えていなければなりません。
一方、7機体制が完成すれば、日本付近では「みちびき」の測位衛星4機以上から常に信号を受信できるようになります。測位精度がさらに向上するだけでなく、他国の衛星測位システムに依存せずに「みちびき」だけで持続的な測位を実現できるようになるのです。

7機体制構築を目指して打ち上げられる「みちびき」5号機・6号機・7号機の3機は、それぞれ異なる軌道で運用されます。
最初に打ち上げられたのは、静止軌道に投入される「みちびき」6号機(QZS-6)でした。「H3」ロケット5号機で2025年2月に打ち上げられた「みちびき」6号機は2025年7月からサービスを開始しており、2025年12月1日現在の「みちびき」は5機体制で運用されています。
次に打ち上げられるのは準天頂軌道に投入される「みちびき」5号機(QZS-5)で、H3ロケット8号機で2025年12月7日に打ち上げられる予定です。そして今回機体が公開された「みちびき」7号機は、準静止軌道(※1)に投入されます。
※1…静止軌道ではゼロになっている軌道傾斜角と軌道離心率が、少しだけ与えられた軌道。地上からはわずかに動くように見える。

なお、7機体制が整えば「みちびき」だけでも測位は可能になるものの、衛星に問題が生じた時のバックアップが存在しないことから、内閣府は準天頂軌道へさらに4機を追加した11機体制の整備を目指しています。
高精度測位システムの普及に期待大
7機体制構築に向けて最後に打ち上げられる予定の「みちびき」7号機は、打ち上げ時の重量が約4.9トン、太陽電池パドル展開後のサイズが約19mです。
2025年2月から1年かけて打ち上げが進められてきた「みちびき」5号機から7号機には、2024年以前に打ち上げられた5機(※2)との大きな違いとして、JAXA=宇宙航空研究開発機構が開発を進めている高精度測位システム(Advanced Satellite Navigation System: ASNAV)の実証を行うためのアンテナが搭載されています。
※2…2023年9月に運用を終了した「みちびき」初号機(QZS-1)を含む。

高精度測位システムは、測位衛星どうしの距離を測る衛星間測距機能と、地上局から衛星までの距離を測る衛星/地上間測距機能から成り立つシステムです。各機には衛星/地上間測距信号用のアンテナに加えて、5号機には衛星間測距信号の送信機が、6号機と7号機には衛星間測距信号の受信機が搭載されています。
測位衛星の位置と時刻の推定・予測精度が向上することは、結果的に地上での測位精度を高めることにつながります。JAXAによると、将来「みちびき」の衛星すべてに高精度測位システムが搭載されれば、スマートフォンのような一般的な受信機の測位精度が現在の5~10mから、1m程度にまで向上すると期待されています。
なお、三菱電機では「みちびき」の測位衛星にも用いられている衛星バス(※3)「DS2000」の発展型の研究開発を進めています。推進システムを化学推進から電気推進に変更して推進剤を減らし、衛星バスを薄型化することで2機同時打ち上げ(デュアルローンチ)が可能になる予定で、打ち上げの回数が減るぶん総費用を抑えることができるということです。
※3…衛星の本体とも言える基本的な機能や構造を備えた部分。
文・編集/sorae編集部
関連記事
- JAXA、「みちびき」7号機を搭載する「H3」ロケット9号機の打ち上げ予定日を発表
- JAXA、「みちびき」5号機を搭載する「H3」ロケット8号機は12月7日に打ち上げへ
- 内閣府、準天頂衛星システム「みちびき」6号機が静止軌道に入ったことを発表
























