広告
広告
国際宇宙ステーションで宇宙飛行士の長期滞在が開始されてから25周年

今から25年前の日本時間2000年11月2日、3名の宇宙飛行士を乗せたロシアのSoyuz(ソユーズ)宇宙船が、建設開始からまだ2年のISS=国際宇宙ステーションに到着しました。20世紀が間もなく終わろうとしている頃に始まったISSでの宇宙飛行士の滞在は、2025年11月で25周年を迎えています。

四半世紀にわたり絶え間なく人が滞在するISS

ISS第1次長期滞在クルー。左から:Yuri P. Gidzenko宇宙飛行士、William M. Shepherd宇宙飛行士、Sergei K. Krikalev宇宙飛行士(Credit: NASA)
【▲ ISS第1次長期滞在クルー。左から:Yuri P. Gidzenko宇宙飛行士、William M. Shepherd宇宙飛行士、Sergei K. Krikalev宇宙飛行士(Credit: NASA)】

こちらは記念すべきISSの第1次長期滞在クルーです。

ロシアのSergei K. Krikalev(セルゲイ・クリカレフ)宇宙飛行士とYuri P. Gidzenko(ユーリー・ギドゼンコ)宇宙飛行士、NASA=アメリカ航空宇宙局のWilliam M. Shepherd(ウィリアム・シェパード)宇宙飛行士は、日本時間2000年10月31日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた「Soyuz TM-31」でISSに到着しました。

ISSの建設は1998年11月、足掛かりとなる基本機能モジュール「Zarya(ザーリャ)」の打ち上げからスタート。翌月の1998年12月には、アメリカ区画最初のモジュール「Unity(ユニティ)」が追加されました。そして2000年7月にロシア区画のサービスモジュール「Zvezda(ズベズダ)」が追加された時点で、ISSは宇宙飛行士の長期滞在が可能な状態になりました。

スペースシャトル「Atlantis(アトランティス)」から見た建設初期のISS。第1次長期滞在クルー到着前の2000年9月18日に撮影(Credit: NASA)
【▲ スペースシャトル「Atlantis(アトランティス)」から見た建設初期のISS。第1次長期滞在クルー到着前の2000年9月18日に撮影(Credit: NASA)】

第1次長期滞在クルーは、2001年3月のスペースシャトル「Discovery(ディスカバリー)」によるSTS-102ミッションで到着した第2次長期滞在クルーと交替するまで、約4か月間ISSに滞在しました。その間もISSの建設は進み、巨大な太陽電池パドルを備えた最初のトラス「P6」や、米国実験棟「Destiny(デスティニー)がスペースシャトルで輸送されています。

2008年から2009年にかけては「きぼう」日本実験棟の組み立てが行われました。船内実験室・船内保管室・船外実験プラットフォームが3回に分けてスペースシャトルで輸送され、JAXA=宇宙航空研究開発機構に宇宙飛行士として所属していた若田光一さんが完成に立ち会いました。

組み立て完了当時の「きぼう」日本実験棟(Credit: NASA)
【▲ 組み立て完了当時の「きぼう」日本実験棟(Credit: NASA)】

その後、スペースシャトルは2011年7月の「Atlantis(アトランティス)」によるSTS-135ミッションを最後に退役し、アメリカ区画の主な組み立ては終了。ロシア区画では2021年7月に多目的実験モジュール「Nauka(ナウカ)」が度重なる延期を乗り越えてISSに到着し、ISS全体の大掛かりな建設・拡張は区切りがついた形となりました。

宇宙開発の分野ではISSの建設開始以降、7名が命を落とした2003年2月のスペースシャトル「Columbia(コロンビア)」空中分解事故や、緊急脱出に成功した2018年10月の宇宙船「Soyuz MS-10」打ち上げ失敗といった出来事もありましたが、2000年11月に始まったISSでの宇宙飛行士滞在は25年間絶えることなく続いています。

サッカー場サイズの“宇宙実験室”

質量400トン以上、サッカー場とほぼ同じ大きさのISSでは、微小重力環境を活用したさまざまな分野の科学実験や、地上・宇宙の観測などが実施されています。

たとえば野菜の栽培・試食、微小重力環境が人体に及ぼす影響の調査などは火星有人探査のような長期間にわたる将来の有人ミッションを見据えたものですが、地上における老化や生活習慣の影響などを理解する上でも助けに。船外に設置された中性子星観測装置「NICER」や全天X線観測装置「MAXI」は、パルサーやブラックホールの研究に貢献しています。

また、「きぼう」日本実験棟からは超小型衛星の放出も継続的に行われています。補給船でISSに輸送された衛星を実験棟のロボットアームを使って放出するため、研究・教育機関にとって比較的安価な手段として活用されています。

【▲ ISSで栽培されたレタスを試食する宇宙飛行士の動画、左はJAXAの油井亀美也宇宙飛行士。NASAが2015年8月に公開(Credit: NASA)】

ISSの「きぼう」日本実験棟から放出された超小型衛星(Credit: JAXA/NASA)
【▲ ISSの「きぼう」日本実験棟から放出された超小型衛星(Credit: JAXA/NASA)】

国際協力を象徴も2030年に運用終了予定

人間が常時滞在する地球低軌道の実験室として運用されてきたISSも、老朽化に逆らうことはできません。

太陽電池は最も早くに設置されたものではすでに25年間使用されていて、経年劣化にともなって発電量が低下しています。そのため、発電量を補うための新型太陽電池がこれまでに6基増設されました。

ISSの船外活動で増設された新型太陽電池「iROSA」のひとつ、展開前の状態(Credit: NASA)
【▲ ISSの船外活動で増設された新型太陽電池「iROSA」のひとつ、展開前の状態(Credit: NASA)】

ロシア区画のZvezdaサービスモジュールでは、補給船「Progress(プログレス)」がドッキングするモジュール後方でわずかな空気漏れが起きていて、修理が繰り返されています。最近ではこの問題の対策に関連して、2025年6月の民間ミッション「Ax-4」の宇宙船打ち上げが延期される出来事もありました。

ISSは長期滞在開始から30年となる2030年に運用を終了し、翌2031年には軌道を離脱させることがすでに決まっています。その後の地球低軌道では、複数の民間企業が建設計画を表明している商業宇宙ステーションが主役を担うことになります。

アメリカの「Crew Dragon(クルードラゴン)」宇宙船から見たISSの外観、2021年11月撮影。向かって右端のトラスに新型太陽電池「iROSA」が2機増設されている(Credit: NASA)
【▲ アメリカの「Crew Dragon(クルードラゴン)」宇宙船から見たISSの外観、2021年11月撮影。向かって右端のトラスに新型太陽電池「iROSA」が2機増設されている(Credit: NASA)】

アメリカ区画の運用においてもひとつのネックとなっているロシア区画の空気漏れですが、双方が一体となったISSは、宇宙における国際協力の象徴ともいえる存在です。

アメリカはかつて「Freedom(フリーダム)」と呼ばれていた宇宙ステーションの建設を計画していた頃、スペースシャトルの不在時にクルーが緊急脱出するための有人宇宙船を必要としていました。専用の宇宙船の新規開発が検討されていたものの、計画の変遷や旧ソ連の崩壊を受けて、2機のSoyuz宇宙船を無人のまま常時係留する方法もひとつの選択肢として検討されるようになります。

NASAが1993年6月にまとめた宇宙ステーション再検討案のひとつ(Option A-1)。クルーの緊急脱出用に2機のSoyuz宇宙船が描かれている。「Space Station Redesign Team Final Report to the Advisory Committee on the Redesign of the Space Station」から引用(Credit: NASA)
【▲ NASAが1993年6月にまとめた宇宙ステーション再検討案のひとつ(Option A-1)。クルーの緊急脱出用に2機のSoyuz宇宙船が描かれている。「Space Station Redesign Team Final Report to the Advisory Committee on the Redesign of the Space Station」から引用(Credit: NASA)】

一方、旧ソ連崩壊後のロシアは資金難に直面し、独自の宇宙ステーション建設は困難な状況になりました。そこへロシアが持つ宇宙ステーション運用の豊富な経験を取り込みたいアメリカ側の思惑が重なり、1993年12月にはアメリカ・ヨーロッパ・日本・カナダの枠組みにロシアが参加する方針が固まって、後のISSへとつながる協力体制がスタートすることになったのです。

ちなみに、Zvezdaは旧ソ連/ロシアが運用していた宇宙ステーション「Mir(ミール)」のコアモジュールのバックアップとして1980年代に製造されたモジュールがベースになっています。このモジュールは、旧ソ連が次に建設を計画していた宇宙ステーションのサービスモジュールとして使用することも想定されていたものでした。

ただ、それから30年以上が経った今、各国の関係には宇宙開発・宇宙探査の分野でも変化が生じています。

ESA=ヨーロッパ宇宙機関とロシアが共同で取り組んできた火星探査ミッション「ExoMars(エクソマーズ)」では、ESAの探査車「Rosalind Franklin(ロザリンド・フランクリン)」をロシアの着陸機に載せて火星に送り込む予定でしたが、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻の影響を受けて打ち上げは中止に。ESAはNASAと協力体制を結び直し、Rosalind Franklinを火星に送り込む準備を進めています。

火星表面で探査を行うESAの火星探査車「Rosalind Franklin(ロザリンド・フランクリン)」のCGイメージ(Credit: ESA/Mlabspace)
【▲ 火星表面で探査を行うESAの火星探査車「Rosalind Franklin(ロザリンド・フランクリン)」のCGイメージ(Credit: ESA/Mlabspace)】

アメリカが月を周回する拠点として計画している宇宙ステーション「Gateway(ゲートウェイ)」の参加国にロシアの名前はなく、UAE=アラブ首長国連邦がエアロックモジュールの提供で参加することが発表されています。また、中国はすでに独自の宇宙ステーションを建設・運用しており、インドも自国の有人宇宙船や宇宙ステーションの開発・建設を進めていると述べています。

数年後に大気圏へ再突入する運命のISS。各国や企業の宇宙技術向上にともなって、“世界の国々が結集して作り上げる巨大な宇宙ステーション”の時代は終わりを告げるのかもしれませんが、その形は変わっても、国際協力の明かりが灯され続けることを願います。

 

文・編集/sorae編集部

関連記事

参考文献・出典