
アメリカ企業SpaceX(スペースX)は日本時間2025年8月27日、同社が開発中の新型ロケット「Starship(スターシップ)」による第10回飛行試験を実施しました。
ペイロード放出試験等の後にインド洋へ着水成功
1段目の大型ロケット「Super Heavy(スーパーヘビー)」と、2段目のStarship宇宙船はどちらも予定されていた上昇燃焼を終了。Starship宇宙船は発射から約9分後(※発射からの時刻等の情報はSpaceXのライブ配信を参照して確認、以下同様)にエンジンを停止し、2025年5月の第9回飛行試験以来となる軌道到達に成功しました。
Super Heavyブースターは帰還時に試験を行うため、今回は発射台には帰還せず、発射から約6分後に海上へ着水しました。通常、帰還の最終段階では全33基のエンジンのうち中央の3基だけが使用されますが、今回は3基のうち1基を意図的に停止し、その外側にあるエンジンの1基をバックアップとして使用する試験が行われました。
一方、Starship宇宙船は発射から約18分~25分後にかけて、SpaceXの衛星インターネットサービス「Starlink(スターリンク)」用の次世代通信衛星と同じサイズ・同じ重量を模倣した「Starlink simulator」8基の放出試験を実施。発射から約38分後には、2024年11月の第6回飛行試験以来となる、全6基のエンジンのうち1基を宇宙空間で再点火する試験も実施されました。
その後、Starship宇宙船は大気圏再突入を開始。発射から約45分後には、高度100kmまで降下しました。再突入時の姿勢を制御するため機体の前後に合計4枚備わっているフラップのうち、過去の飛行試験の結果からサイズ縮小と位置変更が行われた前方の2枚の状態は良好に見えたものの、今回は後方の2枚のフラップが損傷。発射から約47分後にはエンジン周辺で機体の損傷が発生した様子も捉えられました。
機体の一部やフラップが損傷しつつも、Starship宇宙船は降下を継続。発射から約1時間6分後にはエンジンを点火して姿勢の変更と減速を行い、インド洋へ着水して飛行を終えました。Starship宇宙船の着水成功は第6回飛行試験以来で、2025年1月の第7回飛行試験から導入された新世代の改良版による着水成功は今回が初めてです。
Starship第10回飛行試験については、SpaceXから新しい情報が発表され次第お伝えします。【最終更新:2025年8月27日10時25分】
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Starshipとは
Starshipは1段目の大型ロケット「Super Heavy(スーパーヘビー)」と2段目の大型宇宙船「Starship」からなる全長123mの再使用型ロケットで、打ち上げシステムとしてもStarshipの名称で呼ばれています。
推進剤に液体メタンと液体酸素を使用する「Raptor(ラプター)」エンジンをStarship宇宙船は6基(大気圏内用3基・真空用3基)、Super Heavyブースターは33基搭載しています。
SpaceXによると、両段を再使用する構成では100~150トンのペイロード(搭載物)を打ち上げ可能。2段目のStarship宇宙船は単体でも準軌道飛行(サブオービタル飛行)が可能で、地球上の2地点間を1時間以内に結べるとされています。
SpaceXはアメリカ・テキサス州の同社施設「Starbase(スターベース)」を拠点にStarshipを開発していて、Super Heavyブースターも含めたStarship打ち上げシステム全体の飛行試験は2023年4月から実施されています。
文・編集/sorae編集部