スペースXが「スターシップ」第8回飛行試験を実施 ブースター帰還も宇宙船で再びトラブル発生

アメリカの民間企業SpaceX(スペースX)は日本時間2025年3月7日、同社が開発中の新型ロケット「Starship(スターシップ)」による第8回飛行試験を実施しました。

1段目の大型ロケット「Super Heavy(スーパーヘビー)」は発射台へ帰還することに成功したものの、2段目のStarship宇宙船はエンジン燃焼終了予定時刻の前に6基中4基のエンジンが相次いで停止し、姿勢が大きく乱れた後に通信が途絶えました。SpaceXによると機体は分解して失われた模様です。

Starship宇宙船は2025年1月に実施された前回の第7回飛行試験でも軌道到達前にエンジンが相次ぎ停止して推力を失い、最終的に飛行中断システムが自律的に作動して機体は失われました。前回の飛行試験では機体後方で推進剤が漏洩して火災が発生したことが推力喪失の原因とされており、SpaceXは今回の飛行試験を前に対策を施したと述べていました。今回発生したトラブルの原因は記事公開時点では不明です。

Starship第8回飛行試験の詳細についてはSpaceXから新しい情報が発表され次第お伝えします。【最終更新:2025年3月7日9時20分】

アメリカ・テキサス州の「Starbase(スターベース)」から第8回飛行試験のために打ち上げられたSpaceXの新型ロケット「Starship(スターシップ)」。SpaceXのライブ配信から(Credit: SpaceX)
【▲ アメリカ・テキサス州の「Starbase(スターベース)」から第8回飛行試験のために打ち上げられたSpaceXの新型ロケット「Starship(スターシップ)」。SpaceXのライブ配信から(Credit: SpaceX)】
上昇するSpaceXの新型ロケット「Starship(スターシップ)」。SpaceXのライブ配信から(Credit: SpaceX)
【▲ 上昇するSpaceXの新型ロケット「Starship(スターシップ)」。SpaceXのライブ配信から(Credit: SpaceX)】
Starship(スターシップ)宇宙船とSuper Heavy(スーパーヘビー)ブースターの分離の様子。SpaceXのライブ配信から(Credit: SpaceX)
【▲ Starship(スターシップ)宇宙船とSuper Heavy(スーパーヘビー)ブースターの分離の様子。SpaceXのライブ配信から(Credit: SpaceX)】
発射台に帰還したSuper Heavy(スーパーヘビー)ブースター。SpaceXのライブ配信から(Credit: SpaceX)
【▲ 発射台に帰還したSuper Heavy(スーパーヘビー)ブースター。SpaceXのライブ配信から(Credit: SpaceX)】
異常が発生したStarship(スターシップ)宇宙船のエンジン燃焼終了予定時刻頃の様子。4基のエンジンが停止したStarship宇宙船は姿勢が乱れて回転状態に陥った。SpaceXのライブ配信から(Credit: SpaceX)
【▲ 異常が発生したStarship(スターシップ)宇宙船のエンジン燃焼終了予定時刻頃の様子。4基のエンジンが停止したStarship宇宙船は姿勢が乱れて回転状態に陥った。SpaceXのライブ配信から(Credit: SpaceX)】

Starshipとは?

Starshipは1段目の大型ロケット「Super Heavy(スーパーヘビー)」と2段目の大型宇宙船「Starship」からなる全長123mの再使用型ロケットで、打ち上げシステムとしてもStarshipの名称で呼ばれています。液体メタンと液体酸素を使用する「Raptor(ラプター)」エンジンをStarship宇宙船は6基(大気圏内用3基・真空用3基)、Super Heavyは33基搭載しています。

SpaceXによると、両段を再使用する構成では100~150トンのペイロード(搭載物)を打ち上げ可能。2段目のStarship宇宙船は単体でも準軌道飛行(サブオービタル飛行)が可能で、地球上の2地点間を1時間以内に結べるとされています。

また、Starship宇宙船はアメリカが主導する月探査計画「Artemis(アルテミス)」の月着陸船「HLS(Human Landing System、有人着陸システム)」のひとつとしても採用されており、NASA=アメリカ航空宇宙局によれば同計画初の有人月面着陸を行う「Artemis III(アルテミス3)」ミッションでHLS仕様のStarship宇宙船が使用される予定です。

SpaceXはアメリカ・テキサス州ボカチカの同社施設「Starbase(スターベース)」を拠点にStarshipの開発を進めていて、これまでにSuper Heavyブースターも含めたStarship打ち上げシステム全体の飛行試験を2023年4月から合計7回実施しています。今回は8回目の無人飛行試験で、計画ではSuper Heavyブースターは発射約7分後に発射台へ帰還し、Starship宇宙船は発射約1時間6分後にインド洋の目標地点へ着水することになっていました。

 

文・編集/sorae編集部

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参考文献・出典