

5月、木々の緑がまぶしく光り、風が熱を帯びて早くも夏の訪れが感じられる時季となりました。しかし、夜になるとまだ春の星座がのびやかに広がる様子が見られます。
南の空の高いところに、春の星座の王者「しし座」があります。心臓にあたる星レグルスは、1等星の中で最も暗い星です。名前の意味は「小さな王」で、王の運勢を占うために用いられていたといわれています。
しし座には、ほかにも固有名称を持つ星がいくつかあります。その中でも特に見つけやすく、名前の意味も分かりやすいのが、額を意味する「アルギエバ」と、尾を意味する「デネボラ」です。いずれも2等星で、アルギエバはししの頭部、デネボラは尾に位置しています。
デネボラは「春の大三角」を構成する星です。デネボラから東側へ目を移すと、色の違いが美しい2つの1等星があります。空高い位置にあるオレンジ色のアークトゥルスと、低い位置にある青白いスピカです。この2つの星とデネボラを結ぶと、春の大三角が描けます。
アークトゥルスは「うしかい座」の星です。アークトゥルスを下端とした、縦に引き伸ばしたひし形のような星の並びが目印です。
アークトゥルスの名の意味は「熊の番人」です。恒星の日周運動により、北の星座「おおぐま座」を追うように見えることから名づけられたといわれています。
うしかい座は「熊を追う牛飼いの男性」であるとされていますが、ギリシャ神話では天をかつぐ巨人アトラスや、こぐま座のモデルにもなっている狩人アルカスであるとも語られており、ルーツははっきりしません。
スピカは「おとめ座」の星です。
スピカ以外の星はすべて3等星以下と探しづらいうえ、東西に流れるような星の並びは女性の姿にはとても見えません。そのため、星空で星をたどり、おとめ座を想像することは難しいでしょう。
ギリシャ神話においては、おとめ座は豊穣の女神デーメテールとも、正義の女神アストレアともいわれます。左手には豊穣の象徴ともいえる麦の穂を携えており、そこにスピカが輝いています。スピカは「(麦の)穂先」という意味です。

春の大三角は「春」と名付けられていますが、晩春から初夏に見ごろを迎えます。そして大三角が西へと傾くころには梅雨に入り、しばらく星空は見えづらくなります。
梅雨が終わると、雲の暗幕が取り払われて空は夏へと様変わりし、東の空からは「夏の大三角」が上ります。空の目印となる三角を追うと、季節の移り変わりを実感できるでしょう。
※…星座や天体の見える方角や位置関係は2025年5月15日21時頃のものです
2025年5月6日 みずがめ座η流星群
2025年5月6日はみずがめ座η(エータ)流星群の極大日です。極大日とは、流星群が最も活発になる日を指します。

流星群には三大流星群といわれる「ペルセウス座流星群」「ふたご座流星群」「しぶんぎ座流星群」をはじめ、さまざまなものがあります。みずがめ座η流星群は決して規模の大きな流星群ではなく、1時間当たりの観測数はピーク時で5~10個程度です。
しかし、みずがめ座η流星群には以下のような面白いポイントがあります。
- 速度が速い
みずがめ座η流星群は速度の速い流星群としても知られています。国立天文台の佐藤幹哉氏がまとめたリストによると、みずがめ座η流星群の速度は秒速66㎞です。ふたご座流星群(秒速35㎞)、しぶんぎ座流星群(秒速41㎞)と比較するとかなり速いことが分かります。速度の速い流星群は、後に短痕(※)を残すことが多いと言われており、写真で撮影するとオレンジや緑などの煙のような淡い光が映ることがあります。 - 母天体がハレー彗星
母天体とは、その流星群のもととなるチリを放出する天体です。みずがめ座η流星群の母天体は有名なハレー彗星です。ハレー彗星は約76年周期で地球に接近し、前回の接近は1986年2月でした。当時は彗星ブームとなり、望遠鏡が大いに売れたようです。
次回の接近は2061年7月頃と、かなり先のことです。
みずがめ座η流星群はハレー彗星の残したチリから生まれる、いわば「置き土産」です。一瞬のきらめきを追いながら、はるか彼方を旅するハレー彗星に思いを馳せるのも、みずがめ座η流星群の楽しみ方の一つです。
みずがめ座η流星群の見ごろは、5月6日の1時~明け方頃です。ゴールデンウイーク最終日の思い出に、流れ星を眺めてみてはいかがでしょうか。
※…短痕:流星痕(流星が通った跡にしばらく残る光の筋)のうち、数秒以下で消えるものを指す。
文・編集/sorae編集部
参考文献・出典
- 国立天文台 - ほしぞら情報 東京の星空・カレンダー・惑星(2025年5月)
- 流星電波観測国際プロジェクト - みずがめ座η流星群の基本情報・観測条件
- 佐藤幹哉の流星研究ページ - 流星群一覧(2025年版)
- 葛飾区郷土と天文の森博物館 - プラネタリウム 星の講演会の記録 第107回 流星群の予報研究とは? 身近な天文現象もわからない事だらけだった























