
こちらは、チリの電波望遠鏡群ALMA(アルマ望遠鏡)が観測した「おうし座HL星(HL Tauri)」。おうし座の方向、地球から約450光年先にあります。

惑星誕生の舞台「原始惑星系円盤」
おうし座HL星は、誕生してからまだ数十万年程度と考えられている非常に若い星です。その周囲には、星を形成した後に残ったガスや塵(ダスト)が円盤状に集まった「原始惑星系円盤」が存在しています。
おうし座HL星の円盤は、2014年にALMAによる高解像度観測が行われたことでも知られています。当時の観測では、円盤の中に複数のリング状のギャップ(隙間)がくっきりと写し出され、世界中の天文学者を驚かせました。
この隙間は、塵やガスが集まって惑星へと成長していく過程で作られたと考えられています。惑星誕生の生きた現場として、おうし座HL星は現在も活発な研究が続けられている天体です。
地球の海の3倍におよぶ水蒸気を直接観測
2024年にはミラノ大学のStefano Facchini氏を中心とする研究チームが、おうし座HL星を取り囲む円盤の内側領域で、地球の海水の3倍以上に相当する大量の水蒸気が存在していることを発見したとする研究成果を発表しました。
冒頭の画像は、この時の観測結果を示したものです。青色で示されているのが水蒸気の分布で、中心で輝く若い星の周囲を取り囲むように広がっています。水蒸気は星に近い領域ほど明るく輝いていることがわかります。一方、赤みを帯びたリング状の構造は、以前のアルマ望遠鏡の観測で明らかになった塵の分布を示しています。
生命の源「水」と惑星形成の繋がり
この大量の水蒸気は、円盤内に存在する惑星形成の候補地であるギャップを含む領域で確認されました。
惑星形成の理論では、水が凍って塵の粒子に付着するほど温度が低い場所では、物質同士がより効率的にくっつき合い、惑星への成長が促進されると考えられています。Facchini氏は、まさに惑星が形成されつつある領域で水蒸気が見つかったことで、水が将来の惑星の化学組成に直接的な影響を与える可能性を指摘しています。
約450光年という遠方にある冷たい円盤内の水蒸気を詳細に捉えたこの研究は、約46億年前に私たちの太陽系が形成された時と同じように、水が惑星系の発達にどのような役割を果たしているのかを解き明かす重要な鍵になると注目されました。
冒頭の画像はESO(ヨーロッパ南天天文台)から2024年2月29日付で公開されたもので、ESOのSNSアカウントが2026年6月2日に改めて紹介しています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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