
旧ソ連が53年前に打ち上げ、地球を周回し続けていた「Cosmos(コスモス※)482」の一部が、間もなく大気圏に再突入する見込みです。【記事初出:日本時間2025年5月8日13時00分。最終更新:日本時間2025年5月10日7時25分】
NASA=アメリカ航空宇宙局が宇宙飛行ミッションに関するオンラインカタログ「NSSDCA Master Catalog」に掲載している情報などによると、Cosmos 482は金星探査機「Venera 8(ベネラ8号)」と同一設計の探査機として、1972年3月に打ち上げられました。
一時的に地球を周回する軌道に投入された後、ロケット上段のエンジンで金星に向かう軌道へ投入することが試みられたとみられるものの、機体は4つに分裂。そのうち2つは軌道が減衰して48時間以内に再突入しましたが、探査機の一部(着陸機と推定)およびロケット上段とみられる2つの物体は地球周回軌道に留まることになりました。
今回大気圏に再突入するのは、Cosmos 482の着陸機とみられる物体です。打ち上げ時のCosmos 482の重量は1184kgで、着陸機はそのうち495kgとされています。金星の濃い大気に突入して地表に到達することを目指して作られ、同一設計のVenera 8では実際に到達したことを踏まえて、NASAのオンラインカタログではCosmos 482の着陸機とみられる物体は大気圏再突入に耐えて地上・海上に達する可能性があると指摘されています。
※…Kosmosとも。ロシア語ではКосмос。

日本時間5月10日昼~夕のどこかの時点で大気圏に再突入か
宇宙物体(人間が宇宙に打ち上げた物体)の再突入予測を行っているアメリカ企業Aerospace Corporationによると、Cosmos 482の大気圏再突入予想時間帯は、日本時間2025年5月10日12時07分~同日18時07分です(※日本時間2025年5月10日0時43分時点での情報にもとづく予測)。
以下に掲載するのは、Aerospace Corporationが公開しているCosmos 482の再突入地点予測です。予測時間帯の中間点(日本時間2025年5月10日15時07分)で再突入する場合は東ヨーロッパの上空ですが、時間帯全体では赤道をはさんで北緯52度~南緯52度の間にある南太平洋・北大西洋・インド洋といった海上や、ヨーロッパ・アジア・オーストラリア・中央アメリカなど陸上の上空で再突入する可能性があります。

ただし、制御されていない宇宙物体がいつ大気圏に再突入するのかを正確に予測することは、非常に困難です。参考として古い時点での情報にもとづいた再突入地点予測を次に2つ再掲しますが、先に掲載した現時点での予測と見比べればわかるように、再突入が近付くにつれて予測時間帯と予測地点は狭まるように変化します。


多くは大気圏で消滅・海上に落下 まれに地上へ到達する事例も
衛星コンステレーションの構築など地球低軌道の利用が従来以上に活発な昨今では、宇宙物体は日常的に大気圏に再突入しています。打ち上げに使用されたロケット上段や役割を終えた無人補給船など、制御可能な宇宙機は人口密集地から離れた海上に制御落下させられることもあります。
その一方で、制御できない状態で大気圏に再突入する宇宙物体もあります。その多くは大気圏で燃え尽きたり、海上に落下したりしているものの、地上に落下したことが確認される事例も起きています。
2024年3月にはアメリカ・フロリダ州の住宅に人工物が落下しましたが、これは2021年にISS=国際宇宙ステーションから投棄された物体の一部だったことが判明しています。NASAは物体が大気圏再突入時に燃え尽きると予想していましたが、実際には一部が燃え残りました。
また、中国が宇宙ステーションのモジュール打ち上げに使用した大型ロケット「長征5号B」のコアステージが大気圏に再突入し、燃え残った部分が地上に落下して建物に被害が生じる事例も起きています。
宇宙ごみ(スペースデブリ)となった宇宙物体を軌道から取り除くための取り組みも国内外で進められており、最近では日本企業の株式会社アストロスケールが「H-IIA」ロケット15号機の上段(2段目)に約15mまで接近することに成功。今後計画されている別のミッションでは同上段の捕獲を試みる予定です。
文・編集/sorae編集部
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