マサチューセッツ工科大学(MIT)の大学院生Prajwal Niraulaさんを筆頭とした研究グループは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙望遠鏡「Kepler(ケプラー)」の観測によって見つかった太陽系外惑星のうち3つについて、実際には惑星ではなく小さな恒星である可能性を示した研究成果を発表しました。

NASAの系外惑星アーカイブによると、2022年3月17日時点で確認済みの系外惑星は4940個、NASAの系外惑星探査衛星「TESS」が検出して確認待ちの系外惑星候補は5459個に上ります。今回系外惑星ではない可能性が指摘されたのは、確認済み系外惑星のうち約0.06パーセントに相当します。実際には系外惑星ではない天体がリストに含まれるのを防ぐことは、系外惑星の統計的な調査をより正確なものとする上で重要視されています。

■5000個近い既知の系外惑星のうち3つのサイズが小さく見積もられていた可能性

研究グループによって系外惑星ではない可能性が指摘されたのは、「ケプラー854b」「ケプラー840b」「ケプラー699b」の3つです。発見が報告された2016年当時、3つの天体の直径は木星の約1.2~1.5倍と推定されていました。

しかし、その後に利用できるようになった新たなデータを用いてNiraulaさんたちが再分析したところ、3つの天体の直径は木星の2~4倍の範囲内にあることが明らかになったといいます。Niraulaさんは「ほとんどの系外惑星のサイズは木星と同程度かそれよりも小さく、2倍はすでに疑わしいのです」と語ります。

研究グループは3つの天体うちケプラー854bの質量を推定することにも成功しています。その値は木星の約102倍(太陽の質量の約1パーセント)と算出されており、研究グループはケプラー854bが低質量の恒星(晩期型の矮星)である可能性を指摘しています。また、今回の研究では「系外惑星ではない」とは判断されなかったものの、その可能性があるものとして「ケプラー747b」の名もあげられています。

恒星の近くを公転する木星サイズの系外惑星を描いた想像図。今回、5000個近い既知の系外惑星のうち3つのサイズが実際よりも小さく見積もられていた可能性が指摘された(Credit: ESO/L. Calçada)

【▲ 恒星の近くを公転する木星サイズの系外惑星を描いた想像図。今回、5000個近い既知の系外惑星のうち3つのサイズが実際よりも小さく見積もられていた可能性が指摘された(Credit: ESO/L. Calçada)】

3つの天体の推定直径が上方修正された今回の研究では、改善された恒星の測定値が大きな役割を果たしました。

2009年3月に打ち上げられて2018年10月まで運用されたケプラー宇宙望遠鏡は、「トランジット法」と呼ばれる手法を用いて大量の系外惑星を検出しました。トランジット法とは系外惑星が恒星(主星)の手前を横切る「トランジット(transit)」を起こした時に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、系外惑星を間接的に検出する手法です。

繰り返し起きるトランジットを何度も観測することで、研究者はトランジットの周期から系外惑星の公転周期を知ることができます。また、トランジット時の主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、系外惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能です。

【▲ 系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)


トランジット法では正確な光度曲線を取得することも重要ですが、主星である恒星そのものの測定値も重要です。トランジット法で検出された系外惑星の直径は、恒星の直径に対する比率(光度曲線から算出)をもとに推定されます。つまり、恒星の直径が不正確な値だった場合、推定される系外惑星の直径もまた不正確な値になってしまうのです。

今回、研究グループはケプラーの観測データを再分析するために、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「Gaia(ガイア)」による恒星の測定値を利用しました。2013年12月に打ち上げられたガイアは天体の位置や運動について調べるアストロメトリ(位置天文学)に特化した宇宙望遠鏡で、太陽と地球の重力が釣り合うラグランジュ点のひとつ「L2」の周辺で観測を続けています。

【▲ ESAの宇宙望遠鏡「ガイア」の想像図(Credit: ESA–D. Ducros, 2013)】

ガイアの観測データが最初に公開されたのは2016年9月です。前述の3つの天体はそれよりも前に発見が報告されており、当時得られた恒星の測定値をもとに算出されたサイズは妥当な値でした。今回Niraulaさんたちはガイアによって改善された恒星の直径の値を用いて分析を行っており、その結果、前述のように惑星としてはサイズが大きすぎることが明らかになったというわけです。

なお、2つの恒星からなる連星でも、地球から見て伴星が主星の手前を横切ったり主星の裏側に回り込んだりする軌道を公転している場合には、連星の明るさが周期的に変化します。このような連星は「食連星」と呼ばれており、変光星としては「食変光星」に分類されます。

【▲ 食連星(食変光星)の明るさが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)

Niraulaさんたちは最初から「系外惑星だと思われていた恒星」を探していたわけではなく、もともとは潮汐力によって歪んでいる星を探していました。今回の研究は、ケプラーが検出した天体のカタログを調べた際に、ケプラー854bが惑星ではないのではないかと気が付いたことがきっかけだったといいます。

「互いに接近した2つの天体があるとしましょう。重力の作用で一方の天体が卵型あるいは楕円体の形に歪む様子から、もう一方の天体がどれくらい重いのかを知ることができます。2つの天体がどちらも恒星なのか、それとも惑星を持つ単一の恒星なのかを、潮汐力に基づいて判断することができるわけです」(Niraulaさん)

【▲ 潮汐力で変形した脈動変光星のイメージ図(Credit: Gabriel Pérez (SMM-IAC))】

今回の研究では5000個近い系外惑星のリストから3つを除外する結論が導き出されましたが、恒星の測定値は常に改善され続けており、直径の値が大幅に不正確になる可能性は低いことから、既知の系外惑星カタログに対する今回のような修正はこれ以上行われないだろうと研究グループは予想しています。

 

関連:発表から今年で5年、地球サイズの系外惑星が7つもある恒星「トラピスト1」

Source

  • Image Credit: ESO/L. Calçada
  • MIT - Look! Up in the sky! Is it a planet? Nope, just a star

文/松村武宏

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