恒星「TRAPPIST-1」を公転する7つの系外惑星を描いたイラスト(Credit: NASA/JPL-Caltech)

【▲ 恒星「TRAPPIST-1」を公転する7つの系外惑星を描いたイラスト(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

12星座でおなじみ「みずがめ座」の方向、約41光年先に「TRAPPIST-1(トラピスト1)」と呼ばれる恒星があります。TRAPPIST-1は表面温度が摂氏約2300度、質量と直径が太陽の1割ほどという小さな赤色矮星です。

赤色矮星は太陽系の近傍ではありふれた恒星ですが、TRAPPIST-1は地球サイズの太陽系外惑星が7つも見つかったことで注目を集めています。TRAPPIST-1を合計7つの系外惑星が公転しているとした研究成果(※)が発表されたのは、2017年2月のこと。今年2022年で発表から5周年を迎えました。

※…Gillon et al. “Seven temperate terrestrial planets around the nearby ultracool dwarf star TRAPPIST-1”

恒星「TRAPPIST-1」(左端)を公転する7つの系外惑星(b~h)を示した図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

【▲ 恒星「TRAPPIST-1」(左端)を公転する7つの系外惑星(b~h)を示した図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

TRAPPIST-1を公転する7つの系外惑星は、内側から順に「TRAPPIST-1 b」「TRAPPIST-1 c」「TRAPPIST-1 d」「TRAPPIST-1 e」「TRAPPIST-1 f」「TRAPPIST-1 g」「TRAPPIST-1 h」と名付けられています。7惑星はヨーロッパ南天天文台(ESO)が運用する地上の望遠鏡や、アメリカ航空宇宙局(NASA)が2020年1月まで運用していた宇宙望遠鏡「スピッツァー」の観測によって、段階的に発見されました。

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TRAPPIST-1は太陽よりも軽くて小さな恒星であるため、惑星系のスケールも太陽系と比べれば小さなものです。太陽系で7番目の惑星といえば天王星ですが、TRAPPIST-1で見つかっている7つの惑星は、水星の公転軌道よりもはるかに小さな軌道を描いています。一番外側にあるTRAPPIST-1 hの公転周期(その天体にとっての「1年」)は18.77日、一番内側のTRAPPIST-1 b1.51日しかありません。

これら7惑星は、いずれも地球のような岩石惑星とみられています。このうちe・f・gの3つはTRAPPIST-1のハビタブルゾーン(惑星の表面に液体の水が存在し得る範囲)を公転しており、生命を支えられる環境を持つ可能性もあるのです。

TRAPPIST-1星系(上)と太陽系(下、火星まで)の比較図。TRAPPIST-1の7惑星の公転軌道は水星の公転軌道よりもずっと小さく、図の上段のスケールは下段の25倍に拡大されている(Credit: NASA/JPL-Caltech)

【▲ TRAPPIST-1星系(上)と太陽系(下、火星まで)の比較図。TRAPPIST-1の7惑星の公転軌道は水星の公転軌道よりもずっと小さく、図の上段のスケールは下段の25倍に拡大されている(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

TRAPPIST-1を公転する系外惑星の生命居住可能性に迫るための新たな観測は、そう遠くないうちに始まります。TRAPPIST-1は2021年12月に打ち上げられた次世代宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」の観測対象になっており、ウェッブ宇宙望遠鏡はTRAPPIST-1の系外惑星が持つ大気の兆候を探る予定です。NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、ウェッブ宇宙望遠鏡の主なターゲットは内側から4番目のTRAPPIST-1 eとされています。

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「ハッブル」宇宙望遠鏡によるこれまでの観測では、7惑星のうち少なくともd・e・fの3つに関しては、海王星のような水素が主成分の大気は持っていない可能性が浮上しています。コーネル大学の惑星科学者Nikole Lewisさん(ウェッブ宇宙望遠鏡を使ってTRAPPIST-1 eの観測を予定している研究グループの一員)は、「表面に液体の水を保持し得る大気」が存在するか否かは未解決のままだと語ります。

リエージュ大学の天文学者Michaël Gillonさん(2017年に成果を発表した研究グループを率いた)は「ハビタブルゾーンを公転する地球型の系外惑星に関する初の大気特性評価が懸かっています」と語ります。ただし、ウェッブ宇宙望遠鏡による初期の観測では、大気の有無に関する部分的な情報しか得られない可能性もあるようです。

TRAPPIST-1の7惑星(上段)と太陽系の4つの岩石惑星(下段)の比較表。数値は上から公転周期、主星からの距離、半径、質量、平均密度、表面重力の順。単位は公転周期が「日」、主星からの距離が「天文単位」、半径/質量/平均密度/表面重力は「地球を1とした場合の比率」(Credit: NASA/JPL-Caltech)

【▲ TRAPPIST-1の7惑星(上段)と太陽系の4つの岩石惑星(下段)の比較表。数値は上から公転周期、主星からの距離、半径、質量、平均密度、表面重力の順。単位は公転周期が「日」、主星からの距離が「天文単位」、半径/質量/平均密度/表面重力は「地球を1とした場合の比率」(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

TRAPPIST-1の系外惑星がどのような環境を持つにしても、その観測結果は人類の知識を押し広げることになります。これまでの観測によって7惑星は直径と質量の値が得られており、惑星の組成を探る上で重要となる平均密度が算出されています。

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研究者は可能性がある組成を絞り込むために惑星の形成と進化に関するコンピューターモデルを使用しますが、TRAPPIST-1の系外惑星はこのモデルを洗練する上で役立つといいます。Lewisさんは「不毛であっても居住可能であってもモデルの改良に繋がるのが、TRAPPIST-1星系の素晴らしいところです」と語っています。

ウェッブ宇宙望遠鏡は2022年夏からの科学観測開始に向けて、現在準備が進められています。研究者だけでなく宇宙ファンからも注目されるTRAPPIST-1の観測結果が楽しみです。

 

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Source

  • Image Credit: NASA/JPL-Caltech
  • NASA/JPL - Day of Discovery: 7 Earth-Size Planets
  • NASA - Largest Batch of Earth-size Habitable Zone Planets Found Orbiting TRAPPIST-1

文/松村武宏