ウェッブ宇宙望遠鏡の「NIRCam」が撮影した恒星「HD 84406」。主鏡を構成する18枚のセグメントは位置合わせが済んでいないため、1つの星の像が18個に分かれている(Credit: NASA)

【▲ ウェッブ宇宙望遠鏡の「NIRCam」が撮影した恒星「HD 84406」。主鏡を構成する18枚のセグメントは位置合わせが済んでいないため、1つの星の像が18個に分かれている(Credit: NASA)】

こちらは、2021年12月25日に打ち上げられた新型宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」の近赤外線カメラ「NIRCam(Near Infrared Camera)」を使って取得された画像です。

2022年1月下旬に太陽と地球のラグランジュ点のひとつ「L2」を周回するような軌道(ハロー軌道)へ到着したウェッブ宇宙望遠鏡は、現在科学観測に向けた機器の調整を行っています。画像はその一環として試験的に撮影されたもので、アメリカ航空宇宙局(NASA)から現地時間2月11日に公開されました。

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画像には20個近い星が写っているように見えますが、明るい光点はすべて同じ星を示しています。試験撮影の対象となったのは「おおぐま座」の方向およそ260光年先にある恒星「HD 84406」です。NASAによると、地球から見たこの星は他の星々に紛れることなく孤立していて、明るく簡単に識別できることから選ばれたといいます。

【▲ 冒頭の画像に注釈を加えたもの。どの像がどのセグメントに反射されたものなのかが示されている(Credit: NASA)】

1つの星から届いた光(近赤外線)が複数見えているのは、ウェッブ宇宙望遠鏡の構造と関係があります。

ウェッブ宇宙望遠鏡の主鏡副鏡サンシールド(太陽光を遮り機器を冷やすための日除け)といった各部分は折りたたんだ状態で打ち上げられ、宇宙空間で展開する構造が採用されています。展開作業は2021年12月下旬から2022年1月上旬にかけて実施され、無事完了しましたが、科学観測前の作業が全て終わったわけではありません。


【▲ ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げから主鏡の展開完了までを示した動画】
(Credit: ESA/ATG medialab)

ウェッブ宇宙望遠鏡の直径6.5mの主鏡は、18枚の六角形セグメントで構成されています。個々のセグメントで反射された光は長い支柱の先にある1枚の副鏡に集められて、そこからNIRCamなどの観測機器へと送られます。

そのため、主鏡を「1枚の鏡」として機能させるには、各セグメントの位置を精密に合わせる必要があります。現在はまだ主鏡セグメントの位置合わせが済んでいないので、冒頭の画像のように、1つの星の像が18個に分かれてしまっているというわけです。

【▲ ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した「セルフィー」。主鏡を構成する18枚のセグメントが写っている(Credit: NASA)】

また、NASAは冒頭の画像とともに、NIRCamに組み込まれている特殊なレンズを使って撮影されたウェッブ宇宙望遠鏡の「セルフィー(自撮り)」も公開しています。この特殊レンズはウェッブ宇宙望遠鏡の主鏡セグメントを撮影するために設計されたもので、科学観測用ではありません。画像には18枚のセグメントが整然と配置された主鏡が写っています。

NASAによると、今回の試験撮影は主鏡を調整するための基礎となりました。運用チームはこれから1か月ほどかけてセグメントの位置を調整しますが、その後も本格的な観測を始める前に数多くの作業が残されているといいます。ウェッブ宇宙望遠鏡が科学観測で取得した最初の画像は、2022年夏に公開される予定です。

 

Source

  • Image Credit: NASA
  • NASA Blogs - Photons Received: Webb Sees Its First Star – 18 Times

文/松村武宏

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