
株式会社ispaceは2025年10月22日、将来の月ミッション用に開発中の次世代小型探査車(ローバー)を巡り、トヨタ自動車株式会社との間で契約を締結したと発表しました。
次世代小型探査車の概念設計でトヨタがispaceを技術支援
宇宙規模の生活圏構築を見据えるispaceは、民間企業として月面への軟着陸に挑んでいます。
同社はこれまでに「HAKUTO-Rミッション1」で2023年4月に、「HAKUTO-Rミッション2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”」で2025年6月に着陸が試みられましたが、いずれも軟着陸には至らず、着陸船は月面にハードランディング(硬着陸)したものとみられています。
このうちミッション2の着陸船には、同社のヨーロッパの子会社ispace EUROPEが開発した小型探査車が搭載されていました。

一方、日本を代表する自動車メーカーのひとつであるトヨタ自動車は、月面探査用の有人与圧ローバー、愛称「LUNAR CRUISER(ルナクルーザー)」の開発を、JAXA=宇宙航空研究開発機構とともに進めています。
トヨタ自動車が有する長年の知見にもとづいて開発が進められている有人与圧ローバーは、アメリカ主導の有人月面探査計画「Artemis」に提供することで日米間の取り決めが交わされています。2024年4月に署名されたこの取り決めにより、日本側は日本人宇宙飛行士の月面着陸機会を2回得ることになっています。

月着陸船や月面探査車で取得した様々なデータを月着陸ミッションを通じて提供するispaceは、データ収集力の強化を見据えて、探査性能を向上させた次世代の小型探査車の開発に着手。その概念設計の過程で、同社はトヨタから技術評価や品質向上の支援を受けることになります。
ispaceの次世代小型探査車は今後のミッションで月面に輸送され、取得した月面走行データなどはトヨタ自動車による宇宙空間・月などでのモビリティ開発にも活用されることが期待されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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