中国が火星サンプルリターンを目指す「天問3号」の国際協力機会を発表

CNSA=中国国家航天局は2025年3月11日、同国の火星探査ミッション「天問3号(Tianwen-3)」における国際協力の機会に関する発表を行いました。

それによると、天問3号は火星で採取したサンプルを地球に持ち帰るサンプルリターンミッションであり、打ち上げは2028年頃、サンプルの地球到着は2030年頃を予定。探査機は着陸機・上昇機・火星周回機モジュールと地球帰還周回機・再突入モジュールの2つで構成されていて、2機のロケットで打ち上げられて火星に向かいます。

今回の発表では国際協力のために地球帰還周回機で最大15kg、火星周回機で最大5kgを相乗りペイロード用に確保したと述べられており、関心のある機関は2025年6月30日までにCNSAへ意向表明書(LOI)を提出するよう求めています。LOIの選考を通過したチームは2025年9月30日までに詳細な提案書を提出する必要があり、最終選考は2025年10月に行われる予定とされています。

月・惑星探査に注力する中国

中国の火星探査機「天問1号」の火星探査車「祝融」のセルフィー。地表に設置されたワイヤレスカメラを使って撮影されたもので、右側には祝融を載せていた着陸機も写っている(Credit: CNSA)
【▲ 中国の火星探査機「天問1号」の火星探査車「祝融」のセルフィー。地表に設置されたワイヤレスカメラを使って撮影されたもので、右側には祝融を載せていた着陸機も写っている(Credit: CNSA)】

近年、中国は月や深宇宙での探査に積極的に取り組んでおり、月探査機「嫦娥5号」(2020年打ち上げ)と「嫦娥6号」(2024年打ち上げ)で月からのサンプルリターンに成功した他に、火星探査機「天問1号」(2020年打ち上げ)は同国初の火星着陸に成功し、搭載していた火星探査車(ローバー)「祝融」での探査活動も行われました。

また、2025年5月に打ち上げ予定の「天問2号」では、天体衝突時に弾き出された月の破片ではないかと考えられている地球近傍小惑星「Kamoʻoalewa(カモオアレワ、カモッオアレヴァ)」からのサンプルリターンと、メインベルト彗星「P311/PanSTARRS」のフライバイ探査が行われる予定です。

火星サンプルリターン計画はNASA=アメリカ航空宇宙局とESA=ヨーロッパ宇宙機関(欧州宇宙機関)も取り組んでいて、2020年に打ち上げられたNASAの火星探査車「Perseverance(パーシビアランス)」が最初のミッションとしてサンプルの採取を進めています。ただ、費用やサンプル到着までの時間がかかりすぎるとしてNASAは計画の一部見直しを進めており、Perseveranceが集めたサンプルを回収し火星の周回軌道まで打ち上げる段階のミッションについて、民間からの提案も含めた新たな手法の検討を進めている段階です。

海外メディアのSpaceNewsは天問3号のミッションについて、持ち帰られたサンプルが「火星に生命は存在したのか?」という深遠な疑問に答える鍵となるかもしれないと期待を寄せるとともに、ミッションの成功は中国の惑星探査が大きく進展することを意味するだけでなく、同国を火星探査の最前線に押し上げる可能性があると言及しています。

 

文・編集/sorae編集部

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参考文献・出典

  • CNSA - Announcement of Opportunities for International Collaboration of Mars Sample Return Mission (Tianwen-3)
  • SpaceNews - China opens 2028 Mars sample return mission to international cooperation