インド宇宙研究機関(ISRO)は8月20日、2023年7月に打ち上げられた月探査ミッション「チャンドラヤーン3号(Chandrayaan-3)」の探査機について、ランダー(着陸船)の月面着陸前に予定されていた最後の軌道修正噴射が完了したことを発表しました。成功すればインド初となる月面着陸は、2023年8月23日に予定されています。【2023年8月21日11時】

【▲ 打ち上げ準備中に撮影されたチャンドラヤーン3号のランダー(着陸機)。内部にローバー(探査車)が収納されている(Credit: ISRO)】
【▲ 打ち上げ準備中に撮影されたチャンドラヤーン3号のランダー(着陸機)。内部にローバー(探査車)が収納されている(Credit: ISRO)】

チャンドラヤーン3号はISROによる3回目の月探査ミッションです。探査機は月面に着陸するランダー、ランダーに搭載されているローバー(探査車)、着陸前までの飛行を担う推進モジュールで構成されていて、ランダーには地震計(月震計)など3基、ローバーにはX線分光器など2基の観測装置が搭載されています。着陸目標地点はマンジヌス・クレーター(Manzinus、直径約96km)の南東、月の表側の南緯約69度・東経32度付近です。

【▲ チャンドラヤーン3号のランダー(着陸機)とローバー(探査車)(Credit: ISRO)】
【▲ チャンドラヤーン3号のランダー(着陸機)とローバー(探査車)(Credit: ISRO)】

ISROは2019年にオービター(月周回衛星)、ランダー、ローバーで構成された月探査ミッション「チャンドラヤーン2号」の探査機を打ち上げましたが、月周回軌道への投入には成功したものの、ランダーの着陸には失敗しており、今回はインドにとって2回目の月面着陸挑戦となります。なお、チャンドラヤーン2号のオービターは現在も運用が続いていて、チャンドラヤーン3号の着陸機との通信の中継に用いられます。

【▲ 2023年8月17日にチャンドラヤーン3号のランダーに搭載されているカメラで撮影された月面など(動画)】
(Credit: ISRO)

2023年7月14日に打ち上げられて地球を周回する軌道に投入されたチャンドラヤーン3号は、日本時間2023年8月1日未明に月へ向かう軌道(月遷移軌道)へ投入するための噴射(Trans Lunar Injection:TLI)に成功。日本時間2023年8月5日夜には月周回軌道へ投入するためのエンジン噴射(Lunar Orbit Insertion:LOI)が実施され、高度164km×1万8074kmの楕円軌道へ投入されました。その後は8月16日までに4回の軌道修正噴射が行われて高度153×163kmの軌道に到達し、8月17日には月周回軌道までの飛行を担ってきた推進モジュールがランダーの下部から切り離されていました。

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関連:インド月探査機が推進モジュールの分離に成功 着陸は8月23日の予定 チャンドラヤーン3号続報(2023年8月18日)

【▲ 最後の軌道修正噴射の成功を伝えたISROのX(旧Twitter)公式アカウントの投稿】

ISROによると、推進モジュール分離後の2023年8月18日と8月20日に軌道修正噴射を実施した結果、ランダーを高度25km×134kmの軌道へ遷移させることに成功しました。新月から間もない月の表側は夜が明け始めた段階なので、ランダーはこの軌道を飛行しながら着陸目標地点の日の出を待つことになります。

チャンドラヤーン3号の月面着陸予定時刻は日本時間2023年8月23日21時34分頃です。ISROは同日21時前からYouTubeなどでライブ配信を予定しているということです。

【▲ ISROによるチャンドラヤーン3号月面着陸のライブ配信。日本時間2023年8月23日20時50分開始予定(YouTube)】

なお、チャンドラヤーン3号の月面着陸予定日の2日前となる2023年8月21日にはロシアの月探査機「ルナ25号(Luna 25)」による月面着陸が予定されていましたが、軌道修正時に問題が発生して予定外の軌道に遷移してしまった結果、ルナ25号は月面に衝突して失われたとロスコスモスは発表しました。2023年4月には株式会社ispaceの月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1のランダーが民間初の月面着陸に挑んだものの失敗しており、ルナ25号も含めれば2023年に入って2つの月探査ミッションで着陸成功に至らなかったことになります。

月の南極域はクレーター内の永久影(太陽光が届かない範囲)に水の氷が埋蔵されているとみられることから近年注目されており、アメリカ航空宇宙局(NASA)の有人月面探査計画「アルテミス」をはじめとした宇宙探査の対象となっています。

2023年8月26日には日本の小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」とX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」を搭載した「H-IIA」ロケット47号機が打ち上げられる予定で、2023年11月以降には米国の民間宇宙企業インテュイティブ・マシーンズも同社のランダー「NOVA-C」による「IM-2」ミッションで南極域への着陸を目指しています。アポロ計画終了から半世紀が経った現在、月は再び活発な探査が行われる舞台となりつつあり、チャンドラヤーン3号の着陸成否が注目されます。

 

Source

  • Image Credit: ISRO
  • ISRO – Chandrayaan-3
  • ISRO (X, fka Twitter)

文/sorae編集部

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