2020年12月8日、小惑星探査機「はやぶさ2」の再突入カプセルが日本に帰りました。
12月6日に地球帰還を果たしたカプセルは同日(日本時間、以下同じ)に回収され、現地でガス分析を行った後梱包され、チャーター機で7日22時30分にウーメラ空港を出発、8日7時9分に羽田空港に着陸しました。
運んだ機体はダッソー社のファルコン7X。「はやぶさ2」が「はやぶさ」という名前の航空機で戻ってきたのですが、津田プロジェクトマネージャによればこの一致は「たまたま」とのことでした。朝焼けの中の着陸でした。
■直ちに「里帰り」
サンプルを収めたコンテナは空港内でただちにトラックに積み替えられ、「故郷」である神奈川県相模原市のJAXA宇宙科学研究所(ISAS)に向かいました。
午前10時30分過ぎの到着時刻には、2014年9月20日の「はやぶさ2」出荷以来、およそ6年3ヶ月ぶりの里帰りを出迎えるため、ISAS正門前には関係者や地元市民、これまで応援してきたファンなど多数の人が集まりました。到着したコンテナは11時27分にキャンパス内の「地球外試料キュレーションセンター」に搬入されました。
到着後記者会見の概要
國中ISAS所長は、到着後記者会見冒頭の所見の中で、
「カプセル帰還・回収は、コロナのために回収ができるか困った状態に追い込まれました。軌道を調整して帰還・回収延期も考えましたが、ここは『自律的なカプセル回収』という点に立ち返りました。人員輸送はチャーター機を確保する、これをもって宇宙科学研究所は万難を排してでもオーストラリアに乗り込むという姿勢を世界に示すべきであると考えました」
と、新型コロナウイルス感染症の影響が大きかったことに触れました。
カプセル回収については、
「前回の経験を活かして、より緻密で確実な回収を心がけて技術開発を実施してきました。三重四重の体制でカプセルを迎えることを技術的にも体制的にも大きな目標として10年間の開発をしてきました。幸いにも天候に恵まれ、従来の構えだけでもカプセル回収はきましたが、今後のMMXのカプセル回収に向けて、今回取ったデータを分析し、将来に備えたいと思っています。」
と将来に続く者であると述べました。
次いでコメントした津田プロジェクトマネージャは、
「ついに、相模原にカプセルが戻ってきました。見たときには52億kmの往復をして戻ってきた実感がふつふつと涌いてきて、心に迫るものがありました。たくさんの皆様に出迎えて頂き、どうもありがとうございました」
と笑顔交じりの口調でした。
質疑応答ではサンプルコンテナ以外の部分の分析や展示の予定について尋ねられましたが、「サンプルコンテナ以外の部分、ヒートシールドやインスツルメントモジュールは別の管理された場所で保管することになります。カプセル回収隊が帰ってきてからなので年明け以降、分析とお見せするスケジュールを出したいと思っています」とのことです。
持ち帰ったリュウグウのかけらは、キュレーション施設に置かれたクリーンチャンバ内で、なるべく宇宙にいたままの状態でサンプルコンテナを開けてを観察し採取した後、大気圧の高純度の窒素雰囲気に移行します。これは、真空下ではグローブも使えず作業に支障があるためで、一部の資料は将来のために真空下に留め置かれることになっています。カタログ化して研究者に配布できるまでには半年を見込んでいます。
このことについてJAXA宇宙科学研究所地球外物質研究グループグループ長の臼井氏は「地球の環境になるべく汚染させず、リュウグウにあったままの状態で提供するのが我々の仕事。研究者の方に使って頂きやすいカタログを作れれば」と述べていました。
更に、「『はや2ロス』の方に向けてメッセージを」というコメントもありました。
これには津田プロジェクトマネージャから「ロスが起こるほど愛していただいてありがとうございます。応援は運用チームの力になりました。引き続き拡張ミッションを応援いただければと思います、11年かかりますし、今後の宇宙機でも、「ここは、はやぶさ2に似ている」「ここは、はやぶさ2の影響があった」ということを見つけて楽しんで欲しいです。はやぶさ2は生きているので」とのメッセージが語られました。
Image Credit: JAXA
撮影協力:東京とびもの学会、kirishima_ns、しないつぐみ、おかざー
文/金木利憲