
こちらは、いて座の方向、地球から約2万6000光年先にある天の川銀河中心部の様子。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測装置「NIRCam(近赤外線カメラ)」と「MIRI(中間赤外線観測装置)」で取得したデータを使って作成されました。

ウェッブ宇宙望遠鏡は赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています。
星々がひしめく天の川銀河の中心部には、太陽の約430万倍の質量がある超大質量(超巨大)ブラックホール「いて座A*」があります。そのすぐ近く、いて座A*からわずか0.55光年しか離れていない星「IRS 3」に関する研究成果を、ケルン大学のFlorian Peißker氏を筆頭とする研究チームが発表しました。
ウェッブ宇宙望遠鏡の観測でIRS 3の詳しい性質が明らかに
IRS 3は、年老いた星が晩年に大きく膨張し、外層から物質を吹き出しつつ一生を終えようとしている段階にある「AGB星(漸近巨星分枝星)」です。天の川銀河の中心部でも際立って明るい赤外線源のひとつとして知られています。
研究チームは2025年にウェッブ宇宙望遠鏡のMIRIでIRS 3を観測し、波長4.9~27.9μmにかけての連続的な中間赤外線スペクトルを初めて取得することに成功。分析の結果、ケイ素と酸素からなるケイ酸塩鉱物に特徴的な2本の吸収帯(9.7μm付近と18.5μm付近)が現れました。
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によると、いて座A*の周辺は強い放射線にさらされる過酷な環境であり、恒星から放出された物質が塵(ダスト)として残存するかどうかは長年はっきりしていませんでした。IRS 3はこれまで炭素を主成分とする炭素過剰星である可能性が指摘されていましたが、Peißker氏らによる観測と分析の結果、酸素過剰星であることが明らかになりました。

さらに注目すべきは、IRS 3を包むガスと塵の殻状構造(エンベロープ)の中に、水分子が存在する痕跡が見つかったことです。モデルを用いた解析の結果、この殻は中心付近の温度が約1200ケルビン(約930℃)、外縁部が約100ケルビン(約マイナス170℃)の多重構造で、半径およそ1万天文単位(太陽から地球までの距離の約1万倍)にわたって広がっている可能性が示されています。
また、モデルからはIRS 3の質量が太陽の約6倍、年齢は約7200万年で、1年間に太陽の10万分の6に相当する質量の物質を放出していることも示されました。今回の成果は、晩年を迎えて周囲の空間へと物質を放出するようになった星が、超大質量ブラックホールのすぐ近くという特殊な環境でもその役割を果たしている可能性を示すものとなりました。
冒頭の画像はESA/Webbから2026年8月11日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- ESA/Webb - Webb reveals dust and water surviving in the extreme environment around the Milky Way’s central black hole
- Peißker et al. - Dust production in the harsh environment of Sgr A* - MIRI/JWST observation of the O-rich asymptotic giant branch star IRS 3 (Astronomy & Astrophysics)
























