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NASA探査機「ルーシー」が2027年開始のトロヤ群探査を前にカメラで試験観測を実施

NASA(アメリカ航空宇宙局)の小惑星探査ミッション「ルーシー(Lucy)」は、いよいよ2027年から木星トロヤ群小惑星のフライバイ(接近通過)探査を開始します。NASAは2026年8月6日付で、ルーシー探査機のカメラを使った試験観測が、本格的な探査に先立って開始されたことを報告しました。今回取得された画像は、フライバイ本番に向けて最適な撮影条件を見極めるための重要な一歩となります。

2027年にフライバイが始まる4つの小惑星を観測

NASAによれば、ルーシー探査機は2026年の春に、望遠カメラ「L'LORRI」を使って「エウリュバテス(Eurybates)」「ポリメレ(Polymele)」「レウコス(Leucus)」「オラス(Orus)」の4天体を撮影し、画像の伝送と処理が2026年7月に完了しました。

これら4つの天体は、いずれも木星の前方トロヤ群に属する小惑星です。ルーシー探査機は2027年8月から2028年11月にかけてこれら小惑星のフライバイ探査を相次いで行う予定です。各天体から300~600マイル(約480~970km)まで最接近し、最大で秒速7kmという相対速度ですれ違いながら可視光線と赤外線で観測を行います。

探査対象となる小惑星の性質はさまざまです。エウリュバテスは直径約64kmの炭素質のC型小惑星で、木星トロヤ群で衝突起源であることが唯一確認されているグループ「エウリュバテス族」における最大の天体。ポリメレは直径約21kmで、有機物に富むと考えられている赤みを帯びたP型小惑星です。エウリュバテスとポリメレにはそれぞれ小さな衛星の存在が確認されていて、このうちエウリュバテスの衛星は「ケータ(Queta)」と命名されました。

レウコスとオラスは、いずれも有機物や炭素に富むとされる暗く赤みを帯びたD型小惑星です。直径はレウコスが約34km、オラスが約51km。自転周期には大きな差があり、レウコスは約445時間(約18.5日)と非常にゆっくり回転する一方、オラスは約14時間で1回転します。

NASAの小惑星探査ミッション「ルーシー(Lucy)」の探査機に搭載されている望遠カメラ「L'LORRI」で観測した探査対象の木星トロヤ群小惑星。左上がエウリュバテス、右上がポリメレ、左下がレウコス、右下がオラス(Credit: NASA/Goddard/Southwest Research Institute/JHU-APL)
【▲ NASAの小惑星探査ミッション「ルーシー(Lucy)」の探査機に搭載されている望遠カメラ「L'LORRI」で観測した探査対象の木星トロヤ群小惑星。左上がエウリュバテス、右上がポリメレ、左下がレウコス、右下がオラス(Credit: NASA/Goddard/Southwest Research Institute/JHU-APL)】

こちらの連続画像は、左上がエウリュバテス、右上がポリメレ、左下がレウコス、右下がオラスを撮影した画像を使って作成されています。各小惑星はそれぞれ円で囲まれた光点です。

NASAによればレウコスの画像右下から伸びる明るい筋は画角外の恒星からの散乱光、オラスに見られる淡い弧状の模様は太陽光の散乱が原因です。なお、オラスは他の3天体よりも撮影期間が短く、動きがややわかりにくいため、フライバイ前に追加観測が計画されています。

地球とは異なる角度で迫るからこそ必要な準備

NASAが公開した画像からもわかるように、数億kmも離れた小惑星は光の点として捉えることしかできず、連続画像の中で動いていなければ背景の星々と見分けがつきません。

それでも今回の観測は、フライバイ探査の本番に向けた重要な準備の一環となります。なぜかといえば、打ち上げから6年ほど後に木星トロヤ群へ到達するルーシー探査機は、地球の望遠鏡とはまったく異なる角度からこれらの小惑星を観測することになるからです。

地球から観測する場合、太陽とほぼ同じ方向から見ることになるため、小惑星はまるで満月のようにほぼ全体が照らされた状態になります。一方、小惑星のすぐ近くまで到達するルーシー探査機は、小惑星表面の一部が影になった姿を捉えることになります。

フライバイ探査の本番に近い照明条件のもとであらかじめカメラを試験し、本番で画像が暗くなりすぎたり露出過多になったりしない最適な設定を探ることができるという点で、今回の観測は重要な意味を持つのです。

ルーシーとは

木星のトロヤ群小惑星をフライバイ探査するNASAの小惑星探査ミッション「ルーシー(Lucy)」の探査機の想像図(Credit: Southwest Research Institute)
【▲ 木星のトロヤ群小惑星をフライバイ探査するNASAの小惑星探査ミッション「ルーシー(Lucy)」の探査機の想像図(Credit: Southwest Research Institute)】

ルーシーは木星のトロヤ群に属する小惑星の探査を主な目的としたミッションで、2021年10月に探査機が打ち上げられました。ミッションの期間は2033年までの12年間という長期間で、探査対象の小惑星は合計11個に上ります。

木星のトロヤ群とは太陽を周回する小惑星のグループのひとつで、太陽と木星の重力や天体にかかる遠心力が均衡するラグランジュ点のうち、木星の公転軌道上にあるL4点付近(公転する木星の前方)とL5点付近(同・後方)に分かれて小惑星が分布しています。

幾つもの小惑星を一度のミッションで観測するために、ルーシー探査機は小惑星を周回する軌道には入らず、小惑星の近くを通過しながら観測するフライバイ探査を繰り返し行います。

ルーシーのミッション期間における水星~木星までの惑星(白)と木星のトロヤ群小惑星(緑)の位置を示したアニメーション。トロヤ群小惑星は木星(Jupiter)に先行するグループと後続するグループに分かれている(Credit: Astronomical Institute of CAS/Petr Scheirich (used with permission))
【▲ ルーシーのミッション期間における水星~木星までの惑星(白)と木星のトロヤ群小惑星(緑)の位置を示したアニメーション。トロヤ群小惑星は木星(Jupiter)に先行するグループと後続するグループに分かれている(Credit: Astronomical Institute of CAS/Petr Scheirich (used with permission))】

木星のトロヤ群小惑星は初期の太陽系における惑星の形成・進化に関する情報が残された「化石」のような天体とみなされています。

これらの天体を間近で探査することから、ミッションと探査機の名前はエチオピアで見つかった有名な化石人骨の「ルーシー」(約320万年前に生息していたアウストラロピテクス・アファレンシス)にちなんで名付けられました。なお、2025年にフライバイ探査が行われた小惑星ドナルドジョハンソンの名前の由来は、化石人骨のルーシーを発見した古人類学者ドナルド・ジョハンソン氏です。

2022年10月に第1回地球スイングバイ、2024年12月に第2回地球スイングバイを行ったルーシー探査機は、小惑星帯を通過して木星の前方トロヤ群へと向かう公転周期6年の軌道に乗っています。2027年8月のエウリュバテスを皮切りに、ミッションの主目標である木星トロヤ群小惑星のフライバイ探査が始まる予定です。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典