アメリカ航空宇宙局(NASA)は日本時間2024年12月13日、小惑星探査ミッション「Lucy(ルーシー)」の探査機による第2回地球スイングバイ(※太陽を公転する惑星などの重力を利用して軌道を変更する方法)を実施しました。
NASAによると、公転周期2年の軌道を周回していたLucy探査機は日本時間2024年12月13日13時15分(アメリカ東部標準時同年12月12日23時15分)頃に地球へ最接近し、高度350km(計画値)を通過していきました。これは国際宇宙ステーション(ISS)が周回している約400kmよりも低い高度でしたが、地球低軌道の人工衛星やスペースデブリ(宇宙ごみ)との衝突を回避するための操作は不要と判断されています。
スイングバイを終えた現在、Lucy探査機は火星と木星の間に広がる小惑星帯を通過して木星の前方トロヤ群へと向かう公転周期6年の軌道に乗っています。今後は2025年4月に小惑星帯の小惑星「Donaldjohanson(ドナルドジョハンソン)」のフライバイ探査を実施。2027年8月には小惑星「Eurybates(エウリュバテス)」とその衛星「Queta(ケータ)」をはじめとしたミッションの主目標である木星トロヤ群の小惑星のフライバイ探査を開始する予定です。
Lucyとは
Lucyは「木星のトロヤ群」に属する小惑星の探査を主な目的としたミッションで、2021年10月に探査機が打ち上げられました。ミッションの期間は2033年までの12年間という長期間で、探査対象の小惑星は合計11個に上ります。
木星のトロヤ群とは太陽を周回する小惑星のグループのひとつで、太陽と木星の重力や天体にかかる遠心力が均衡するラグランジュ点のうち、木星の公転軌道上にあるL4点付近(公転する木星の前方)とL5点付近(同・後方)に分かれて小惑星が分布しています。幾つもの小惑星を一度のミッションで観測するために、Lucy探査機は小惑星を周回する軌道には入らず、小惑星の近くを通過しながら観測するフライバイ探査を繰り返し行います。
木星のトロヤ群小惑星は初期の太陽系における惑星の形成・進化に関する情報が残された「化石」のような天体とみなされています。これらの天体を間近で探査することから、ミッションと探査機の名前はエチオピアで見つかった有名な化石人骨の「ルーシー」(約320万年前に生息していたアウストラロピテクス・アファレンシスの一体)にちなんで名付けられました。
2022年10月に第1回地球スイングバイを行って軌道を変更したLucy探査機は、2023年11月に最初の探査対象である小惑星帯の小惑星「Dinkinesh(ディンキネシュ)」のフライバイ探査を実施。このフライバイは観測装置などのテストを兼ねたものでしたが、Dinkineshが接触二重小惑星を衛星に持つ二重小惑星であることが判明しています。
- 小惑星ディンキネシュの衛星は接触二重小惑星 NASA探査機ルーシーの観測で判明(2023年11月11日)
- NASA小惑星探査機「ルーシー」第1回地球スイングバイを実施(2022年10月20日)
Source
- NASA - NASA’s Lucy Spacecraft Prepares for Second Earth Gravity Assist
文・編集/sorae編集部
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