【▲ 木星のトロヤ群小惑星をフライバイ探査する小惑星探査機「ルーシー」の想像図(Credit: Southwest Research Institute)】
【▲ 木星のトロヤ群小惑星をフライバイ探査する小惑星探査機「ルーシー」の想像図(Credit: Southwest Research Institute)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は10月16日、小惑星探査機「Lucy(ルーシー)」の第1回地球スイングバイを実施しました。ルーシーの軌道を変更するための地球スイングバイは12年に渡るミッション中に合計3回計画されており、次回は2年後の2024年12月に実施される予定です。

■当初の計画よりも少し高い高度350kmを通過 次の地球スイングバイは2024年12月

日本時間2021年10月16日に打ち上げられたルーシーは、木星のトロヤ群小惑星8つ(2つの衛星を含む)と小惑星帯の小惑星1つ、合計9つの小惑星の探査を目的としています。複数の小惑星を訪問することから、ミッションの期間は2021年から2033年までの12年間が予定されています。

【▲ ルーシーを搭載して打ち上げられたアトラスVロケット(Credit: NASA/Bill Ingalls)】
【▲ ルーシーを搭載して打ち上げられたアトラスVロケット(Credit: NASA/Bill Ingalls)】

木星のトロヤ群とは太陽を周回する小惑星のグループのひとつで、太陽と木星の重力や天体にかかる遠心力が均衡するラグランジュ点のうち、木星の公転軌道上にある「L4点」(公転する木星の前方)付近と「L5点」(同・後方)付近に分かれて小惑星が分布しています。

木星のトロヤ群小惑星は初期の太陽系における惑星の形成と進化に関する情報が残された「化石」のような天体とみなされています。これらの天体を間近で探査することから、ミッションと探査機の名前は有名な化石人骨の「ルーシー」(約320万年前に生息していたアウストラロピテクス・アファレンシスの一体)にちなんで名付けられました(探査対象の小惑星については以下の関連記事もご覧下さい)。

関連:NASA探査機「ルーシー」10月16日打ち上げ予定、木星トロヤ群小惑星に初接近

【▲ 第1回地球スイングバイにおけるルーシーの飛行経路(水色)を示した動画。白は地球を周回する人工衛星など】
(Credit: NASA’s Scientific Visualization Studio)

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2つのグループに分かれている木星のトロヤ群小惑星へ向かう軌道に探査機を乗せるため、ルーシーのミッションでは太陽を公転する地球の重力を利用したスイングバイを合計3回行って軌道を変更します。今回実施されたのはその1回目で、日本時間2022年10月16日20時4分、打ち上げからちょうど1年が経ったルーシーは地球の高度350kmを通過していきました。

これは高度約3万6000kmの静止軌道はもとより、高度約400kmを周回する国際宇宙ステーション(ISS)よりも低い高度です。ルーシーが最接近した時刻はアメリカの西部がまだ夜明け前だったこともあり、ミッションを主導するサウスウエスト研究所(SwRI)のチームメンバーは、米国ネブラスカ州西部のスコッツブラフでルーシーの光跡を撮影することに成功しています。

【▲ ネブラスカ州で撮影されたルーシーの光跡。ルーシーミッションのTwitter公式アカウントより】

ルーシーのプロジェクトマネージャーを務めるNASAゴダード宇宙飛行センターのRich Burnsさんによると、もともとルーシーの第1回地球スイングバイではさらに20km近く低い高度を通過する予定でしたが、問題を抱えた太陽電池アレイを考慮して、少し高い高度を通過することになったようです。

地球よりも太陽から遠く離れた木星の公転軌道付近まで飛行することから、ルーシーには直径7.3mという巨大な円形(正確には十角形)の太陽電池アレイが2基搭載されています。この太陽電池アレイは巻き取り式のストラップを使って扇のように広げて展開する仕組みになっているのですが、片方の太陽電池アレイが完全に展開されず、360度のうち約345度までしか開かなかったことが打ち上げ直後に判明していました。

関連:NASA小惑星探査機「ルーシー」片方の太陽電池アレイを完全展開させる試みが続く

その後の数か月間に渡る運用チームの努力によって、問題の太陽電池アレイは完全展開まであと少しという353~357度まで開いており、固定機構でロックすることはできていないものの、ストラップに張力がかかることで安定した状態にあると推定されています。

しかし、スイングバイ時に通過する地球低軌道には希薄ながらも大気が存在しています。大型の太陽電池アレイが大気から受ける抵抗を少しでも減らすために、事前にルーシーのエンジンを使って軌道を修正し、最接近時の高度が少し高くなるように調整されていたとのことです。

【▲ ミッション中のルーシーの軌道を示したシミュレーション動画。色は水色が探査機、白が探査対象の小惑星、緑が地球、オレンジが木星を表す】
(Credit: NASA's Scientific Visualization Studio)

今回の第1回地球スイングバイで楕円形の軌道に乗ったルーシーは、約2年後の2024年12月12日に再び地球へ接近し、第2回地球スイングバイを実施する予定です。このスイングバイでルーシーは小惑星帯を横切って木星の前方トロヤ群へ向かう軌道に乗り、2025年4月には最初の探査対象である小惑星帯の小惑星「ドナルドヨハンソン」に接近します。

その後のルーシーは木星に先行するL4点のトロヤ群に向かい、2027年8月に「エウリュバテス」とその衛星「ケータ」、同9月に「ポリメレ」とその衛星、2028年4月に「レウコス」、同11月に「オラス」のフライバイ探査を行います。L4点の木星トロヤ群で探査を終えたルーシーは再び地球へと戻り、2030年12月に第3回地球スイングバイを実施して軌道を変更。今度は木星に後続するL5点のトロヤ群に向かって2033年3月に二重小惑星「パトロクルス」「メノエティウス」のフライバイ探査を行い、ミッションを終える予定です。

【▲ ルーシーがフライバイ探査を行う小惑星の一覧(想像図)。上段左から:二重小惑星のパトロクルスとメノエティウス、エウリュバテス。下段左から:オラス、レウコス、ポリメレ、ドナルドヨハンソン。このうちエウリュバテスは衛星ケータを、ポリメレは1つの衛星をともなう(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab)】
【▲ ルーシーがフライバイ探査を行う小惑星の一覧(想像図)。上段左から:二重小惑星のパトロクルスとメノエティウス、エウリュバテス。下段左から:オラス、レウコス、ポリメレ、ドナルドヨハンソン。このうちエウリュバテスは衛星ケータを、ポリメレは1つの衛星をともなう(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab)】

 

関連:小惑星ポリメレに「月」を発見。探査機ルーシーの新たな探査対象に

Source

  • Image Credit: Southwest Research Institute, NASA/Bill Ingalls, NASA’s Scientific Visualization Studio, NASA's Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab
  • NASA - NASA’s Lucy Spacecraft Prepares to Swing by Earth
  • NASA - Lucy Mission (NASA Blogs)
  • Lucy Mission (Twitter)
  • NASA Solar System (Twitter)

文/松村武宏

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