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超新星爆発が駆動する銀河風 JAXA天文衛星「XRISM」によるスターバースト銀河M82の観測成果

JAXA(宇宙航空研究開発機構)のX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」を使用して、爆発的に星が形成されているスターバースト銀河のひとつ「M82(Messier 82)」を観測した新たな研究成果を、国際研究チーム「XRISM Collaboration」が発表しました。

ISAS(JAXA宇宙科学研究所)によると、XRISMはスターバースト銀河の中心に存在する高温ガスの速度の広がりを世界で初めて直接測定することに成功しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「Nature」に掲載されています。

スターバースト銀河と銀河風

こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡が観測した、おおぐま座の方向、地球から約1200万光年先の銀河M82の姿です。M82のようなスターバースト銀河では、比較的短い期間で大量に形成された大質量星が恒星としての寿命を迎えることで、多数の超新星爆発が引き起こされます。

Hubble(ハッブル)宇宙望遠鏡が観測した銀河「M82」(Credit: NASA, ESA and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA); Acknowledgment: J. Gallagher (University of Wisconsin), M. Mountain (STScI) and P. Puxley (National Science Foundation))
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が観測した銀河「M82」(Credit: NASA, ESA and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA); Acknowledgment: J. Gallagher (University of Wisconsin), M. Mountain (STScI) and P. Puxley (National Science Foundation))】

超新星爆発によって銀河中心部の星間ガスが強く加熱されると、高温・高圧のガスになります。このガスを駆動源として、周囲の物質を巻き込みながら銀河の内外へと広がる高速の流れは「銀河風」と呼ばれています。銀河風は星の内部で作られた重元素(水素やヘリウムよりも重い元素)を銀河の外へと運ぶため、銀河の進化や宇宙全体の物質循環において重要な役割を果たしていると考えられています。

XRISMによるM82中心領域の観測

銀河風の駆動源である高温ガスの運動を直接測定することは、これまで非常に困難でした。X線を放射する数千万℃もの高温ガスの運動状態を精密に測定するには、極めて高いエネルギー分解能を持つX線での分光観測(電磁波の波長ごとの強さの分布であるスペクトルを得る観測手法)が必要だったためです。

今回、研究チームはXRISMの軟X線分光装置「Resolve(リゾルブ)」を使用して、2024年5月にM82の中心領域を観測しました。約2000万℃の高温ガスが放射するX線輝線の広がりを分析した結果、このガスは視線方向(私たちに向かってくる方向と遠ざかっていく方向)の速度に秒速約600km程度のばらつきがあることが判明しました。

ISASによると、明らかになった速度のばらつきは事前の予測を大きく上回っており、M82の中心領域にある高温ガスが予想よりも大きな運動エネルギーを持っていることを意味するといいます。

XRISMの観測で取得されたM82のX線スペクトルの全体(下段)と、鉄の輝線付近を拡大したもの(上段)。点は実際の観測データで、実線は青がガスの速度のばらつきを考慮しない場合のモデル、赤がガスの速度のばらつきを考慮する場合のモデルを示す。速度のばらつきを考慮するモデルのほうが、実際のデータをよく再現できていることがわかる(Credit: ISAS)
【▲ XRISMの観測で取得されたM82のX線スペクトルの全体(下段)と、鉄の輝線付近を拡大したもの(上段)。点は実際の観測データで、実線は青がガスの速度のばらつきを考慮しない場合のモデル、赤がガスの速度のばらつきを考慮した場合のモデルを示す。速度のばらつきを考慮するモデルのほうが、実際のデータをよく再現できていることがわかる(Credit: ISAS)】

超新星爆発の膨大なエネルギーの行方

NASAによれば、M82の中心部からは1年あたり太陽7個分に相当する質量のガスが放出されていることがわかりました。研究チームは、スターバーストによって生じる多数の超新星爆発のエネルギーのうち大部分が、高温ガスの熱エネルギーとして蓄積されていると推測しています。この高温ガスがもたらす影響を調べた結果、その6割程度がより低温のガスを加速させていることもわかりました。

このことは、宇宙線などの追加のエネルギー源を必要とせず、高温ガスの熱圧力のみで大規模な銀河風を駆動できることを示唆しています。一方で、残りのガスがどのようにして銀河の外へ流れ出ているのか、その正確な行方はまだ謎に包まれています。

銀河M82の中心領域で生じた高温ガスが、周囲の物質を巻き込みながら銀河スケールで広がる様子のイメージ図。矢印はガスの流れ、点線は銀河円盤を示す(Credit: ISAS; X線: NASA/CXC/JHU/D.Strickland; 可視光線: NASA/ESA/STScI/AURA/The Hubble Heritage Team; 赤外線: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/C. Engelbracht)
【▲ 銀河M82の中心領域で生じた高温ガスが、周囲の物質を巻き込みながら銀河スケールで広がる様子のイメージ図。矢印はガスの流れ、点線は銀河円盤を示す(Credit: ISAS; X線: NASA/CXC/JHU/D.Strickland; 可視光線: NASA/ESA/STScI/AURA/The Hubble Heritage Team; 赤外線: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/C. Engelbracht)】

今回のXRISMによる観測は、スターバーストの結果として生じる超新星爆発によって駆動されるガスの運動が、銀河の内と外の物質循環にどのように寄与するのかを定量的に捉える上で手がかりとなるものです。今後は他のスターバースト銀河でも同様の観測を進めることで、宇宙全体の物質循環における銀河風の関与についての理解が進むと期待されています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典