予想外だった“風”の構造 JAXA天文衛星「XRISM」の観測で明らかに

JAXA=宇宙航空研究開発機構のX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」を用いた、新たな研究成果が発表されました。

国際研究チームが「へび座」のクエーサー(※1)「PDS 456」をXRISMで観測したところ、超大質量ブラックホール(※2)が光速の20~30%で放出させる風(アウトフロー)の構造は単純ではなく、最低5種類の速度を持つ沢山の塊状のガスで構成されていることが初めて明らかになりました。

風のエネルギーは予想よりも高く、連続的ではなく間欠的に放出されているか、銀河内のガスの隙間から飛び出ているとみられています。

研究チームは、風を介して共に進化するとみられる超大質量ブラックホールと銀河の関係について、こうした状況を説明できる新たな理論モデルの構築が必要だと考えています。

※1…クエーサー:銀河中心部の狭い領域から強い電磁波を放射する活動銀河核(AGN)のなかでも特に明るいタイプ。活動銀河核の原動力は超大質量ブラックホールだと考えられています。

※2…超大質量ブラックホール:太陽の100万倍以上の質量があるブラックホール、超巨大ブラックホールとも。

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クエーサー「PDS 456」の超大質量ブラックホール周辺の想像図。ブラックホールが放出させる風(アウトフロー)は白色で描かれている
【▲ クエーサー「PDS 456」の超大質量ブラックホール周辺の想像図。ブラックホールが放出させる風(アウトフロー)は白色で描かれている(Credit: JAXA)】
観測を行うX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」の想像図
【▲ 観測を行うX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」の想像図(Credit: JAXA)】

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典