広告
広告
145光年先・30億歳の白色矮星から岩石質の天体が破壊された痕跡を検出

こちらは、崩壊した惑星の破片に囲まれる白色矮星の想像図。

数十億年後には太陽にも訪れる、恒星としての寿命の終わり。その激動を生き延びた惑星が内側に引き寄せられ、潮汐力で破壊されてデブリ円盤(※1)を形成している様子が描かれています。

※1…岩石と氷の破片や塵(ダスト)でできた星の周囲の円盤。

デブリ円盤に囲まれる白色矮星の想像図(Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI))
【▲ デブリ円盤に囲まれる白色矮星の想像図(Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI))】

約30億歳の白色矮星の大気から13種類の重元素を検出

モントリオール大学のÉrika Le Bourdaisさんを筆頭とする国際研究チームは、さんかく座の方向・約145光年先の白色矮星「LSPM J0207+3331」を観測した結果、破壊されて落下した岩石質の天体に由来するとみられる様々な元素が、白色矮星の大気から検出されたとする研究成果を発表しました。

白色矮星は、太陽のように超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星が進化した天体です。典型的な白色矮星は地球と同じくらいの直径ですが、質量は太陽の6割程度もあり、とても密度が高いという特徴があります。

晩年を迎えた比較的軽い恒星は、外層が大きく膨張した赤色巨星に進化して、周囲の空間へとガスや塵を放出するようになります。外層を失った恒星は中心核だけが残り、やがて白色矮星へと進化します。

白色矮星「シリウスB」(左)と地球(右)の大きさを比べたイメージ図(Credit: ESA and NASA)
【▲ 白色矮星「シリウスB」(左)と地球(右)の大きさを比べたイメージ図(Credit: ESA and NASA)】

白色矮星は恒星の残骸であり、予熱で輝く天体です。誕生したばかりの白色矮星は表面温度が10万ケルビン(約10万℃)を超えることもありますが、長い時間をかけて徐々に温度が下がっていきます。

研究チームによると、LSPM J0207+3331の表面温度は太陽に近い約5910ケルビン(約5640℃)と低く、白色矮星に進化して冷却が始まってから、すでに30億年ほどが経っていると考えられています。

W. M. ケック天文台(ハワイ)のケックI望遠鏡に搭載されている高解像度エシェル分光器「HIRES」を用いた研究チームが観測を行ったところ、水素を主成分とするLSPM J0207+3331の大気から13種類の重元素(※2)が検出されました。ちなみに天文学では、水素やヘリウムよりも重い元素を「重元素」や「金属」と総称することがあります。

※2…ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ストロンチウム(Sr)。

W. M. ケック天文台の主任科学者を務めるJohn O’Mearaさん(今回の研究には不参加)は、「惑星が引き裂かれ、死んだ星に落下したことを示す直接的な証拠です」とコメントを寄せています。破壊されたのは少なくとも直径200kmの岩石質の天体とみられています。

恒星の死から数十億年が経っても惑星系の混乱は続く?

白色矮星に落下した天体の破片に由来する元素が検出されるのは初めてではありませんが、今回の研究では冷却開始から約30億年というLSPM J0207+3331の年齢がひとつのポイントとなります。白色矮星の大気は水素やヘリウムでできていて、そこに含まれる重元素は数日から数百万年という比較的短い期間で沈み込み、検出できなくなるはずなのです。

これまでに大気から重元素が見つかった白色矮星の半数近くは周囲から重元素を取り込み続けている兆候を示しているといい、惑星系が力学的に乱されていることが示唆されます。今回13種類の重元素が検出されたLSPM J0207+3331の場合、岩石質の天体の軌道が数百万年以内という“最近”になって乱され、破壊へ至るコースに乗ったとみられています。

今回の研究成果は、恒星の死から数十億年が経っても白色矮星の大気に痕跡を残すほどの物質がまだ惑星系に残されていることや、LSPM J0207+3331の惑星系が複数の惑星の相互作用によって数十億年という長い時間をかけて軌道が不安定化していくプロセスの典型例となる可能性を示すものとして受け止められています。

なお、LSPM J0207+3331では生き延びた木星サイズの惑星が軌道の不安定化に関わっている可能性があるものの、主星から離れていて、なおかつ表面温度が低いと推定されることから、仮に存在するとしても検出は困難だと予想されています。

ESA=ヨーロッパ宇宙機関が運用していたガイア宇宙望遠鏡(Gaia)の位置測定データをもとに、白色矮星の動きから間接的に惑星を検出する方法や、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による赤外線観測を通じて、惑星による相互作用なのか、それとも接近した恒星による影響なのかを区別できるかもしれないと期待されています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

関連記事

参考文献・出典