地上に建設された通信アンテナは、地球から遠く離れて活動する探査機を支える重要な設備です。NASAが運用する通信アンテナのひとつが今月から重要な改修作業に入る予定なのですが、この作業が無人探査機「ボイジャー2号」との通信に影響することが案内されています。

■作業中もボイジャー2号からの電波は受信できるが、地球からの送信はできなくなる

オーストラリアのキャンベラで運用されている「DSS 43」は、ボイジャー2号にコマンドを送信できる唯一の通信アンテナだ(Credit: NASA/Canberra Deep Space Communication Complex)

改修作業に入るのは、NASAのジェット推進研究所(JPL)が運用する通信網「ディープスペースネットワーク(DSN)」を構成する通信アンテナのひとつで、「DSS 43(Deep Space Station 43)」と呼ばれています。

DSS 43はオーストラリアのキャンベラに建設されたアンテナのひとつで、1972年12月に打ち上げられた「アポロ17号」の頃から使用されています。建設当初の大きさは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の臼田宇宙空間観測所にあるアンテナと同じ直径64mでしたが、ボイジャー2号が海王星をフライバイ探査(1989年に実施)するのに合わせて、1987年に直径70mへと拡張されました。

今月から来年2021年1月までのスケジュールで行われるDSS 43の改修作業では、古くなった機器のメンテナンスだけでなく、今後実施される月や火星でのミッションに向けたアップグレードが施されます。改修作業中のDSS 43は探査機からの電波を受信することは可能ですが、DSS 43から探査機に向けて送信することができなくなります

電波を送れなくなることの影響を大きく受けるのが、冒頭で触れたボイジャー2号です。ディープスペースネットワークのアンテナはキャンベラだけでなくゴールドストーン(アメリカ)とマドリード(スペイン)にもありますが、地球から見たボイジャー2号の位置関係により、通信できるのは南半球のキャンベラにあるアンテナに限られます。キャンベラでは現在4基の通信アンテナが稼働していますが、そのなかでも地球から180億km以上も離れたボイジャー2号にコマンドを届けられるのは、強力な送信機と直径70mのサイズを誇るDSS 43のみ。つまり、今回の改修作業が終わるまで、ボイジャー2号にコマンドを送ることができなくなるのです。

なお、今年1月にお伝えしたように、ボイジャー2号では予期せぬ電力消費の増大にともない、探査機を保護するために科学観測が一時的に自動停止。その後、地上からのコマンド送信によって通常の観測体制への復旧に成功したため、DSS 43の改修も開始されることとなりました。ボイジャーのプロジェクトマネージャーを務めるJPLのSuzanne Dodd氏は、DSS 43の改修作業中に何らかのトラブルが発生しても、「ボイジャー2号自身が対応できる」と語っています。

星間空間に到達したボイジャー2号(想像図)

 

関連:ボイジャー2号で一時的に電力が不足、科学観測の再開に向け復旧作業中

Image Credit: NASA/Canberra Deep Space Communication Complex/JPL-Caltech
Source: NASA
文/松村武宏

 オススメ関連記事