ボイジャー2号で一時的に電力が不足、科学観測の再開に向け復旧作業中

NASAは1月28日、無人探査機「ボイジャー2号」において、電力の不足にともない探査機を障害から保護するためのソフトウェアが作動していたことを発表しました。28日の時点でボイジャー2号の電源に問題はなく、科学観測も間もなく再開される見込みです。

■予定されていた磁力計の較正が実施されず判明

太陽圏を離脱したボイジャー2号の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

2018年11月に太陽圏(ヘリオスフィア、太陽風の影響が及ぶ領域)を離脱したボイジャー2号は、現在も太陽系の外に向かって飛行を続けています。1月25日、ボイジャー2号に搭載されている観測機器の一つである磁力計を較正するため機体を360度回転させる姿勢制御が実行される予定でしたが、実際には行われませんでした。

取得したデータを分析したところ、電力消費の大きなシステム2つが意図せず動作し続けていたことが判明。電力不足を補うために、ボイジャー2号に組み込まれているソフトウェアによって観測機器の電源が自動的にオフになっていたことが明らかになりました。発表の時点では問題となったシステムの1つがオフにされ、観測機器の電源がオンに切り替えられています。今後は観測データの取得再開を目指し、ボイジャー2号の状態確認と復旧作業に引き続き取り組むとしています。

今年の夏で打ち上げから43年となるボイジャー2号は、現在地球からおよそ185億km、光の速さでも約17時間もかかるほど遠くを飛行しています。通信を送ってから返事が戻ってくるのに約1日半かかることから、状態の確認や対策の実行にはどうしても時間がかかります。

また、2機のボイジャーは放射性元素が崩壊するときの熱から電気を得る「放射性同位体熱電気転換器(RTG)」を搭載していますが、その発電量は年々低下し続けています。現在はすでに打ち上げ当初の6割程度にまで落ち込んでおり、電力に余裕がありません。ボイジャー2号の運用期間は、昨年10月の時点で長くても「あと5年」と見込まれています。

ボイジャー1号と2号(Voyager1, Voyager 2)のおおよその位置を示した図。中央から左に向かって伸びる水色の領域が太陽圏(Heliosphere)(Credit: NASA/JPL-Caltech)

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA
文/松村武宏

Last Updated on 2020/01/30