
(引用元:NASA APOD)
今回紹介するのは、わし座の方向約1万8000光年先にある連星系「SS 433」の観測データにもとづいて作成された再現動画です。SS 433は超新星残骸「W50」、通称「マナティ星雲」の中心付近に位置しており、発見から40年以上が経った現在もなお多くの謎を抱えた天体です。
ブラックホールか中性子星か?
SS 433は、ブラックホールあるいは中性子星と考えられている主星のコンパクト天体と、高温で巨大な恒星である伴星からなる連星系と考えられています。伴星の物質は主星の強い重力で引き剥がされて降着円盤を形成し、そこからイオン化したガスのジェットが互いに反対方向へ噴き出しています。その速度は光速の約4分の1(秒速約7万5000km)にも達します。この構造が遠方の銀河中心にある超巨大ブラックホールの周囲とよく似ていることから、SS 433は「マイクロクエーサー(microquasar)」と呼ばれています。
162日周期の歳差運動と深まる謎
SS 433のジェットは噴出方向が一定ではなく、約162日の周期でコマの首振りのような歳差運動をしています。この運動によってジェットは螺旋状に広がり、やがて周囲の超新星残骸W50の内部で消散していきます。W50は約2万年前の超新星爆発で形成されたと考えられており、ジェットが残骸の殻を東西に押し広げたことで、マナティのような独特の姿になったと推測されています。
2018年にはメキシコのHAWC(高高度水チェレンコフガンマ線観測所)によって、SS 433が予想外に高エネルギーのガンマ線を放出していることが発見されました。さらにNASAのフェルミガンマ線宇宙望遠鏡(フェルミ望遠鏡)のデータからは、主星から離れた場所にジェットの歳差運動と同じ162日周期で脈動するガンマ線源が見つかりました。
その後も研究は加速しています。2024年にはナミビアのH.E.S.S.ガンマ線望遠鏡が、ジェットのガンマ線放射位置がエネルギーによって異なることを初めて突き止め、ジェット内部の粒子加速と冷却の過程を直接追跡することに成功。同年にはJAXAのX線天文衛星XRISMが、ジェットの詳細な構造に迫る成果を上げています。さらに2026年1月には、eROSITA望遠鏡がW50星雲全域にわたるX線パノラマ画像を公開し、100パーセクを超える星雲内部の複雑な構造が初めて一望できるようになりました。
発見から40年以上を経た今なお、SS 433は新たな観測手段によって次々と素顔を見せ始めています。
編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- APOD: SS 433: Binary Star Micro-Quasar(2020 August 31)
- DESY - Scientists discover energy dependence in the jets of a galactic microquasar
- H.E.S.S. Collaboration - Acceleration and transport of relativistic electrons in the jets of the microquasar SS 433(Science, 2024)
- XRISM high-resolution spectroscopy of SS 433(PASJ, 2025)
- X-ray panorama of the SS 433/W50 complex by SRG/eROSITA(arXiv, 2026)
























