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予期せぬ場所で起きた中性子星どうしの衝突 NASA望遠鏡群が捉えたガンマ線バーストの起源

ペンシルベニア州立大学のSimone Dichiaraさんを筆頭とする研究チームは、ガンマ線バースト(GRB)「GRB 230906A」に関する研究成果を発表しました。複数の宇宙望遠鏡による連携観測が行われたこのガンマ線バーストは、潮汐尾(tidal tail)と呼ばれるガスなどでできた巨大な構造に埋もれた非常に小さな銀河で起きた、中性子星どうしの衝突・合体にともなって発生した可能性が高いといいます。

今回の成果は、天文学における2つの大きな謎を解き明かす鍵になる可能性があるとして、NASA(アメリカ航空宇宙局)なども紹介しています。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌The Astrophysical Journal Lettersに掲載されています。

宇宙望遠鏡の連携プレーで発生源の位置を特定

中性子星とは、太陽よりも重い恒星が寿命を迎えて爆発(超新星爆発)した後に残る、極めて密度が高い天体です。中性子星どうしが衝突・合体すると、強力なガンマ線バーストが放たれるとともに、金やプラチナなどの重元素が生成されると考えられています。

NASAによると、2023年9月に発生した「GRB 230906A」は最初にガンマ線観測衛星「Fermi(フェルミ)」によって検出された後、別のガンマ線観測衛星「Neil Gehrels Swift(ニール・ゲーレルス・スウィフト)」や、「Chandra(チャンドラ)」X線宇宙望遠鏡、「Hubble(ハッブル)」宇宙望遠鏡による追跡観測が行われました。

研究に参加したカーネギーメロン大学のBrendan O'Connorさんは、Chandraによる正確なX線源の位置特定と、Hubbleの極めて高い感度による観測が組み合わさったことで、後述する暗く小さな銀河の発見に至ったと述べています。

発生した場所はガスの流れに潜む極小の銀河か

背景:衝突した銀河群で最も明るい銀河と、その周囲に広がる潮汐尾の想像図。左上:Hubble宇宙望遠鏡(赤)とChandra X線宇宙望遠鏡(青)が観測したガンマ線バースト「GRB 230906A」の発生位置。左下:中性子星どうしの衝突後の様子を描いた想像図(Credit: X-ray: NASA/CXC/Penn State Univ./S. Dichiara; IR: NASA/ESA/STScI; Illustration: ERC BHianca 2026 / Fortuna and Dichiara, CC BY-NC-SA 4.0; Image Processing: NASA/CXC/SAO/P. Edmonds)
【▲ 背景:衝突した銀河群で最も明るい銀河と、その周囲に広がる潮汐尾の想像図。左上:Hubble宇宙望遠鏡(赤)とChandra X線宇宙望遠鏡(青)が観測したガンマ線バースト「GRB 230906A」の発生位置。左下:中性子星どうしの衝突後の様子を描いた想像図(Credit: X-ray: NASA/CXC/Penn State Univ./S. Dichiara; IR: NASA/ESA/STScI; Illustration: ERC BHianca 2026 / Fortuna and Dichiara, CC BY-NC-SA 4.0; Image Processing: NASA/CXC/SAO/P. Edmonds)】

研究チームによると、GRB 230906Aを発生させた中性子星どうしの衝突が起きたのは、地球から約47億光年離れた場所にある極めて小さな銀河です。

この銀河の大きな特徴は、長さ約60万光年にも及ぶ巨大な潮汐尾の中に位置している点です。潮汐尾は何億年も前に銀河群が衝突した際に剥ぎ取られたもので、この銀河は潮汐尾の中でガスと塵(ダスト)から誕生したとみられています。

研究に参加したローマ・トル・ヴェルガータ大学のEleonora Trojaさんによれば、この潮汐尾では過去の銀河どうしの衝突が引き金となって活発な星形成活動が起こり、数億年の後に中性子星の誕生と衝突・合体に繋がったことが考えられるといいます。

研究チームは、GRB 230906Aが銀河群の背後にある遠方の銀河で発生した可能性も検討しましたが、今回提唱された極小の銀河で発生したとする説の方がより有力だと結論付けました。これまでに観測された中性子星の衝突は中規模から大規模な銀河の内部で起きており、今回のような特異な環境での発見は初めてのこととされています。

天文学における“2つの謎”を解く鍵に?

NASAによれば、今回の発見は天文学における2つの謎を説明できる可能性があるといいます。

1つ目は、一部のガンマ線バーストが、目立った銀河が存在しない場所で発生しているように見える理由です。今回のように、発生源の銀河が非常に小さく暗かったとすれば、地上の望遠鏡では銀河が見えていなかった可能性があります。

2つ目は、銀河の中心から遠く離れた星にも、金やプラチナなどの重元素が含まれているのはなぜかという問題です。今回観測された現象のように、銀河の“郊外”で中性子星が衝突した時に放出された重元素が、後に形成される新しい星々に取り込まれたと考えれば説明がつきます。

「私たちが発見した場所での中性子星の衝突は、これまでの常識を覆すものです」と語るDichiaraさんの言葉通り、今回の観測結果は宇宙の元素の起源や銀河の進化の歴史に新たな視点をもたらす重要な成果となりそうです。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典