
こちらは、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(Very Large Telescope=超大型望遠鏡)で観測した輝線星雲「RCW 36」。
ほ座の方向にあり、最新の研究では地球からの距離が約3100光年と算出されています。

画像の中央に見える暗い塵(ダスト)とガスの雲を「頭と体」に、そこから左右に伸びるフィラメント状の構造を「翼」に見立てることで、まるで一羽の鷹が大きく翼を広げているかのような姿に見えるとESOは表現しています。
その下側に広がる青色に輝く星雲では、新しく生まれたばかりの巨大な星々(赤ちゃん星)が放つ強烈な放射によって、周囲のガスが明るく照らし出されています。
鷹のような姿のRCW 36を捉えたのは、VLTに搭載されている「HAWK-I(ホークアイ)」と呼ばれる赤外線観測装置です。ESOがこの星雲を“宇宙の鷹”と表現するのは、鷹の目を意味する“ホークアイ”という名の観測装置が使われたことも理由のひとつでしょう。
HAWK-Iは、可視光線を遮ってしまう厚い塵の向こう側を見通せる赤外線を利用することに加えて、地球の大気の揺らぎを補正する補償光学(AO)システムを備えており、このような非常にシャープで鮮明なデータを取得することができます。
褐色矮星の謎に迫る
画像では巨大な星々の明るい輝きがひときわ目を引きますが、この観測で天文学者が注目したのは非常に暗くて見えにくい「褐色矮星」です。
褐色矮星は恒星よりも軽くて惑星よりも重い、双方の中間的な性質を持つ天体です。中心部で水素の核融合反応を起こすことができず、恒星のように可視光線で自ら明るく輝くことはありません。今回のVLTによるRCW 36の観測結果をまとめたAfonso do Brito do Valeさんたち研究チームによれば、赤外線波長で高解像度の観測を行うHAWK-Iは、このような冷たくて暗い天体を見つけ出すのに非常に適しているといいます。
RCW 36では、大質量の星々が強力な恒星風によって周囲のガスや塵を押しのけることで、星雲の複雑な姿を形作っています。do Brito do Valeさんは、その様子を「まるで動物が卵の殻を破って生まれ出てくるかのようだ」と表現しています。
VLTの観測は、褐色矮星がどのように形成されるのかを理解するための貴重なデータを提供するだけでなく、星々の誕生の瞬間をドラマチックに描き出しています。そう考えながら見ると、大きく翼を広げた“宇宙の鷹”は、今まさに孵化しつつある“赤ちゃん星”たちをそっと見守る親鳥に思えてきませんか?
冒頭の画像はESOから2026年3月2日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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