こちらは、かじき座の方向・約16万光年先の輝線星雲「かじき座30(30 Doradus)」、別名「タランチュラ星雲(Tarantula Nebula)」。
天の川銀河の衛星銀河(伴銀河)のひとつである大マゼラン雲(Large Magellanic Cloud: LMC、大マゼラン銀河とも)に位置しています。

タランチュラ星雲は、近傍の宇宙において最も明るく活発な星形成領域のひとつであり、重力によってガス雲が収縮し、新たな星が誕生するプロセスを研究するための理想的な環境となっています。その中心部には、既知の星の中でも質量が最大級の大質量星が存在しています。
これらの大質量星は、かつて太陽の250倍から300倍近い質量を持つと考えられていましたが、近年の詳細な観測の結果、太陽の150倍から200倍程度へと下方修正されました。とはいえ、太陽よりもずっと重い星々であることに変わりはありません。
赤外線と電波が描き出す星雲の姿
この画像は、チリのパラナル天文台にある「VLT(超大型望遠鏡)」と「VISTA望遠鏡」が赤外線で捉えた輝く星々と高温のガス雲(ピンク色)のデータと、チリの電波望遠鏡群「ALMA(アルマ望遠鏡)」が電波で観測した低温で高密度なガス(赤色や黄色)のデータを重ね合わせて作成されました。
赤外線で捉えられたガス雲はクモの巣のような網目状の構造をしており、タランチュラという名前の由来となっています。また、ALMAが捉えた高密度なガスは、将来的に崩壊して新たな星を形成する可能性を秘めています。


これまで天文学者たちは、大質量星の周辺では星々が放出する莫大なエネルギー(フィードバックと呼ばれる)の影響が強すぎるため、重力で引き寄せられたガスから新たな星が形成されるのは難しいことだと考えていました。
しかし、イリノイ大学のTony Wongさんを筆頭とする研究チームによれば、ALMAの観測データは、ガスの密度が十分高い部分においては依然として重力が重要な役割を果たしており、強力なフィードバックが存在する環境下でも星形成が継続する可能性を示しているといいます。
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のGuido De Marchiさんによれば、タランチュラ星雲の性質は初期宇宙に存在する遠方の銀河と似ており、この領域を観測することで約100億年前の宇宙で星がどのように誕生していたかを研究できるといいます。また、NRAO(アメリカ国立電波天文台)のRemy Indebetouwさんは、このような星団が銀河内でガスを吹き飛ばすことで、銀河環境の長期的な進化を変える「爆弾」のような役割を果たすとも指摘しています。
冒頭の画像はESO(ヨーロッパ南天天文台)から2022年6月15日付で公開されました。
本記事は2022年6月17日公開の記事を再構成したものです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- ESO - The Tarantula's cosmic web: astronomers map violent star formation in nebula outside our galaxy
- NRAO - ALMA Gets Front-Row Seat to an Ongoing Star-Formation Standoff in the Large Magellanic Cloud























